発達障害にクスリを使う前に・・・

上図のように、発達障害は症状によって分類されていますが、発達障害の名称、分類にはあやふやなところがあり、症状が混在することも多いことから、近年では自閉症スペクトラムという呼び方がなされています。「スペクトラム」とは、虹のように境界がくっきりではないものを並べたもの、というような意味です。

一方で、発達障害では、精神症状つまり脳の機能の問題以外の「身体症状」として

•疲れやすい、同じ姿勢を保つことが難しい、ごろごろする •偏食が多い、音に敏感 •おもらし •チック(意志とは無関係に体の一部の動きや発声を繰り返す) •頭痛、筋肉痛、腹痛 •吐き気、便秘、下痢、少食、過食などの消化器症状 •蕁麻疹、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎などアレルギー症状 •中耳炎、扁桃炎などの慢性感染症(免疫力の低下) •筋力不足、体力不足

などの症状がよく見られる事がよく知られています。これは、脳の機能障害だけでは説明のつかない事実です。栄養療法の世界では、発達障害の本質は、代謝障害と考えられています。

「代謝」は「栄養」の影響を大きく受けます。

約2年前、発達障害と言われている当時9歳の女の子の診察をしました。ちょうど私が分子栄養学を学び始めて栄養素のチカラを知って興味を持ち始めたころで、足の爪がもろくて白く濁っているという主訴でした。なんだか元気のない爪。「お肉とお魚が嫌いで、全く食べなかったらしく、たんぱく、ミネラルの不足が推察されました。診察中女の子はずっと下を向いて黙っていましたが、「血液検査」という言葉に敏感に反応して急におびえて泣き出してしまいました。もちろん採血はしませんでしたが、これが女の子との初めての出会いでした。

その後数回私の皮膚科を訪れてくれました。実は女の子はあるショックな出来事があって学校に行けなくなっていたことがわかりました。そんな中、「先生に会うのは楽しみ!!」と言ってきてくれていたようでした。食事の大切さをお話しているうちに少しずつお肉やお魚が食べられるようになり、来るたびごとに少しずつ明るくなって、ニコニコ大きな声で話すようになってくれたのです。「学校に行くのも給食を食べるのも楽しい!!」って言ってくれるようにもなりました。

さらに出来るだけ頑張ってグルテン・カゼイン・シュガー・添加物フリーの食事を心がけて頂くよう指示したところ、便秘が改善して、「体が軽くなった」とのこと。

薬はまったく使用していませんが、こんなに改善することが珍しくはないのです。もちろん、そう一筋縄ではいかず、その後、学校で何かある度に症状が一進一退したことも事実ではありますが・・・

現在の医療では、発達障害は根本的には治らず、有効な治療はないと考えられています。カウンセリングや心理療法などが試みられていますが、治療は難しく改善することは多くはありません。症状が軽ければ「個性」として認めてあげるという方針です。それで、本人が幸せならばそれも良しでしょう。しかし、症状が重ければ、家族は大変、本人もつらく、普通に仕事をして家庭をもつことも、生きて行くことも困難になります。そして周囲の人に迷惑のかかる言動を軽減するため、小さな子供に向精神薬が投与される例も少なくないのです。

一方、発達障害と言われるほぼすべての子供は腸が悪いです。明らかに便秘や下痢の症状のある子も多いですが、自覚症状がなくても腸内環境が悪いのです。腸は、迷走神経という神経で直接脳と繋がっていると考えられていますが、ビタミンの産生、有害物質の吸収、セロトニンなどの幸せホルモンと呼ばれる物質をも産生し、間接的にも脳の機能、エネルギー代謝に大きな影響を与えています。

腸の環境は食事に大きな影響を受けます。私の患者さんの例のように、そう単純な話ではないですが、食事が発達障害の症状に大きな影響を与えるのです。裏を返せば、食事改善に取り組めば、治療が困難とされている発達障害が改善する可能性があるのです。副作用もなく、むしろ他の体の機能もよくする食事で、です。実行しない手はないと思いませんか?

食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲むわ

とは、残念ながら日常診療でよく聞く言葉でした。今はそう思われる患者さんは私の栄養療法外来には来てくれないので、めっきり聞かなくなりましたが、決して世の中の患者さんの考えが大きく変わっているわけではないはずです。

ですが、薬は、その症状が何故おこっているのかとは無関係に、あくまでも困っている症状を消してくれるだけであって、決して根本的に治してくれるだけではないんですよ。それでも薬を選ぶ理由は・・・

①栄養がいかに大切かの知識がない

②薬で「おさえる」のと「根本的に治る」のは違うという事を十分に理解していない

③良い食材を購入するより薬の方が安価である

④料理には手間と時間がかかる

⑤安くて保存のきく加工食品が手に入りやすい

①②は医療の専門家が情報提供して、お導きする必要がありますが、残念ながら医療の世界でも、このような考えは浸透していません。

③は、そう、身体に良い食材は、たいてい通常の商品よりお高いのです。一方、日本は、国民皆保険制度が非常に充実しているため、投薬に対する患者さんのご負担が極端に少ない国です。これは皮肉なことに栄養療法をするにあたってネックになることなんですが、「食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲んだ方がまし」となるんですよね~でも、待ってください。その、よく効くお薬、ずーっと飲んでいて、ホントに害がないですか?それに関してはまた回を改めて詳しく述べたいと思います。

④毎日の食卓をあずかる主婦なら、一度は「人間毎日ご飯を食べなくて済んだらなあ」「料理をしてくれる奥さんが欲しい~」と思ったことがあると思います。(ないかな?私は何回もあります。)そこは栄養の専門家たちが、いかに栄養をバランスよく摂れる簡単な献立をたてるか、工夫を凝らしたレシピを公開していますね。

⑤現在の栄養の問題すなわち「新型栄養失調」を作り出している最大の原因は・・・手に取ったらほぼすぐに、あるいは超簡単な調理で食べることができる加工食品が、どこのスーパーでも所狭しと並んでいくらでも手に入りやすい環境にいることです。

数ある食品関係の大手企業は、いかにたくさん売って利益を上げるか、を最優先にしています(むしろそれしか考えてないと言いたい)し、日本では欧米やアジア各国がすでに規制・禁止している有害物質でも規制がゆるゆるで、国は国民の健康より企業の利益を優先する政策しか作ってくれないとしか思えません。

でも、です!企業は、みんなが買わなければ、作りませんし、みんなが選ぶものなら作ります。もう、これは、各自が自分で自分の身を守るべく知識を得て賢い消費者になるしかないんです。ホントに切実にそう思います。

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感想(28件)
「買い物は投票なんだ」という絵本、ぜひ読んでみてください!

私はあきらめたくないので、こうして、いったい何人の方が読んでくれるかわからないブログを書き、数名にも満たない参加者でも、何時間もかけてスライドを作成して毎月セミナーを開催しています。

パワースポットを訪ねて

松山市の隣東温市の知る人ぞ知る秘境、滑川渓谷。さんざん車でくねくねと山を登っていくと、軒下におそらくお風呂を沸かすためであろう薪が積まれた民家がまばらに・・・もっと狭い山道を恐る恐る上っていくと駐車場。そして、駐車場からさらに歩いて30分ほど山を登る。

このあたりではもうスマホの電波も弱くなり、むしろ周囲の木々のパワーを感じる。これぞ天然の電磁波フリースペース。ちょろちょろと岩肌を這う清流(滑川の源流らしい)が流れる斜面を登っていくと、肩にかけたリュックが(多分)電磁波が抜けて筋力がアップするせいで軽くなるの、ホントに。体から毒素が抜けるような、ちょっとビックリな体験。

気の遠くなるような年月の間の地殻変動と自然の植物の成長が作り上げたものである事を、断層や地面に露出したり、岩肌からぶら下がっている「木々の根っこ」が物語る。

最後の犬は娘の愛犬モコ 子どもは娘の長男 なぜかスマホを・・・

そして、行きつく先にはしぶきを上げて落ちる滝。滝口の周囲を取り囲む木々が私たちを見下ろすかのように茂る。頭上では風が作るゴーっという音が鳴る。まさに龍の声か。この場所は「龍の腹」と呼ばれている。「便利」から離れて大自然に抱かれたとき、生物の体は最大限に能力を発揮するのだろうと、本当に素直に納得できた。

昔からパワースポットと言われる場所の多くで得られる体感は、電磁波の少ないエリアで自身の体の機能が発揮しやすくなる時に感じる感覚なのかもしれない 。

そう言いながら、こうして「ブログ」などという、自然とかけ離れたものを書いているのが、矛盾なんだよね〜

いやホント。

栄養療法が誕生した数十年前は、栄養を整えるだけで多くの人が改善したと思われる。今は、栄養療法を駆使しても改善しない人が増えていると感じる。そしてその主な背景は「心理(ストレス)」と私は考えていた。 それも間違いではない。

しかし、数十年前と今の電磁波の量が桁違いなんで、栄養療法の限界を作っている主因の一つに電磁波があるのか、と腑に落ちた旅だった。

電磁波フリーハウス

電磁波フリー環境では、脳のシグナル伝達のロスがなくなるため
筋力が強くなる。(唸り声は室内犬)

5月24日、愛媛県松山市でファスティングと電磁波の講師としてご活躍の「みゆきさん」のお宅にお邪魔しました。みゆきさんのお宅は電磁波を極限まで減らすべく改装したり対策器具をそこここに設置したりしたおうち。ついでに、PM2.5などの有害物質も高性能に除去できる空気清浄機も設置されています。

分子栄養学を学ぶ友人と3人伊丹から飛行機で松山入りし、松山在住の長女と合流。電磁波フリーハウスの見学が主目的だったが、みゆきさん、ついでに電磁波の講義をして熱く語って下さり、予想以上にとても有意義な訪問でした。

右は筋力実験。みゆきさんが思いっきり腕を引っ張り、被検者が足を踏ん張ることができるか。電磁波のある環境ではすぐに体勢を崩してしまうのに、電磁波対策の器具を十分使用すると、脳の電気信号がズムースに筋肉にいきわたるため、同じ負荷をかけても踏ん張ることができるんです。いや実はみゆきさんの筋力もアップしているので、負荷はむしろ電磁波対策時の方が増強しているのに、です。

岩塩を舐めて味を感じる体験もした。電磁波対策なしではしょっぱい塩。対策下では感覚神経の機能が良くなり、微妙な旨味を感じることができるため、塩味にうま味が加わり、しょっぱさが軽減して明らかに美味しくなってびっくりです。

電磁波は特に、頭蓋骨が薄く発達の著しい子供の脳に大きく影響します。発達障害に対しては、栄養療法よりも効果が早いとのこと。しかも対策にお金はかかるが努力や我慢があまりいらない! 少なくとも、今後の治療方針の中にもっと組み込む必要性を強く感じました。(スマホを長時間または寝る前に見るのは避ける事、夜間のWi-Fiを極力OFFにする事、夜間スマホを機内モードにする事くらいの指導しかしていなかったなあ。反省。)

ところで、このおうちに滞在している間、私は、頭重感と肩こりから解放され、黄砂の時期にいつも咳が出る長女の咳がぴたりと止まっていました。このおうちを訪れた方は、肩こりや頭痛、喘息、チックなどの症状がウソのように消え、外に出たとたんに症状が出る、という事は、珍しくないのだそうです。

翌日は松山市のお隣、東温市のパワースポット、滑川渓谷へ。

亜鉛④ 現代人はなぜ亜鉛が欠乏しやすいのか?

まず食材の栄養価の問題。現代は、農薬や化学肥料、環境汚染の影響で作物自体の栄養価が下がっています。「新型栄養失調」の回で述べましたが、加工食品やカット野菜などは加工の段階で栄養素が失われています。

次に、吸収の問題。日本人には胃酸欠乏の人が多いと言われています。ましてや、近年はちょっと胃の具合が悪いと、胃酸抑制薬が安易に処方され、延々と飲み続けている例がよく見られます。摂取したミネラルの吸収には、胃酸でイオン化されるという過程が不可欠ですから、胃酸が少ないと摂取したのに吸収されないという事態も起こり得るんです。また、食品添加物のリン酸塩は、それ自体に毒性はありませんが、ミネラルをくっつけて便に排泄してしまいます。もちろん腸内環境が悪いと吸収しにくくなります。

そして、亜鉛消費量の増大問題。せっかく吸収し取り込んだ亜鉛も、食品添加物、環境汚染物質や薬剤などの「解毒」に使われ、ストレス、炎症なども亜鉛を浪費する原因になります。

と、このように現代社会に生きる私たちはよほど気をつけて亜鉛を摂取していても、亜鉛欠乏症になりやすいようにできているのです。

では、どうしたら良いのでしょう?

上記の逆、つまり、

・できる限り無農薬の作物を摂取し、極力加工食品を使用せずに食事は手作りしましょう。

・無駄な胃酸抑制薬を漫然と内服するのは厳禁。食事の際、胃酸の代わりにpHを下げてくれるお酢やかんきつ類(レモン、ゆずなど)を一緒に摂りましょう。

・歯周炎や上咽頭炎、副鼻腔炎等、慢性炎症があれば治療しておきましう。

・腸内環境を整えましょう。

・心穏やかにストレスのない生活を送りましょう。

いかかですか?なかなか難しいですよね。でも、知っていると知らないでは、全く違うと思います。今日から、心がけてみませんか?

亜鉛③ 多く必要な時と部位は?

亜鉛は、数えきれないほど多くの働きがありますが、亜鉛が多く必要な身体の状態や部位を知る上で、まずは「細胞分裂」が一つの重要なキーワードになります。遺伝子DNAの合成、複製に不可欠な栄養素だからです。

□細胞分裂が盛んな時(成長期、妊娠、授乳、けがの治療時、病気の回復時、炎症時)

□細胞分裂が盛んな場所(毛髪、味蕾、皮膚、消化管、生殖器)

成長期、妊娠時、手術やケガや病気の時:新たな細胞を作り出すため、または組織の修復のため細胞分裂が盛ん ➡亜鉛の要求度が上がる つまり相対的に亜鉛が欠乏しやすいはずです。

一方、亜鉛は、神経伝達物質という、脳の働きを決める重要な物質を作る際に必要なため、脳にも多いのですが、欠乏すると攻撃性増加、認知症、うつ病の原因になることもあります。

つまりつまり、亜鉛が多く必要な時期、成長期に反抗的になったり、妊婦さんがうつになったりイライラしやすくなるのは、亜鉛欠乏の影響があるんですね。

その他、膵臓ではインスリンを安定化する重要な役割を担い、肝臓では解毒の仕事、さらには免疫細胞を活性化する役割もあります。亜鉛欠乏は、糖尿病、アレルギーなどのリスクも高めるという事です。

診断は一般的には血液検査です。しかし、体内の全亜鉛のたった2%しか血清中に存在しないうえ、日内変動があり、夕方の血清亜鉛値は朝の約8割。それを知った上で検査データを解釈する必要があります。通常血清亜鉛値が基準範囲内(80~120μg/dl)であっても、組織内亜鉛は欠乏していたり、酸化ストレスで起こる溶血(赤血球が壊れること)によって、亜鉛濃度の濃い赤血球から血清中に亜鉛が溶出していたりすることがあります。一方組織内亜鉛が多いのに血清亜鉛値が少なく出ることは比較的まれです。

こんなに大事な亜鉛がなぜ欠乏しやすいのか。次の課題です。

亜鉛② 金属としての亜鉛の位置

生体に有用な金属はミネラルといい、有害な金属は有害(重)金属といいます。下図は、みなさん化学で習ったことのある金属の周期表です。ここからは、科学が嫌いな方は太字だけ読んでくださいね。亜鉛=Zn(30)、カドミウム=Cd(48)、水銀=Hg(80)、銅=Cu(29)、鉄=Fe(26)はおさえてください。

全ての金属元素は、陽子を中心として周囲に電子が回っているのですが、電子は決まった軌道を回っていて金属ごとに電子の数、軌道の数が決まっています。記号の上の小さな数字が電子の数、最上段の元素は軌道が一つで、下の段に行くほど一つずつ軌道が増えます。化学的には最外殻(一番外側の軌道)の電子の数が他の元素とのくっつきやすさを決めます。

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亜鉛は周期表30番目の金属で、右図のごとく亜鉛の下段にはカドミウム(48)、水銀(80)があります。縦の列は同族元素といって、いちばん外側の軌道の電子の数が同じなので、化学的に同じ元素にくっつきやすい性質があります。つまり、亜鉛が組み込まれるべき酵素などの物質の亜鉛の席にカドミウムや水銀が座りやすいってこと。酵素は身体のすべての反応を決める重要なタンパク質です。カドミウムはイタイイタイ病、水銀は水俣病という有名な公害病の原因ですが、CdやHgが有害なのは、亜鉛が座るべき酵素のあちこちの場所に座って、出来損ないの酵素を作ってしまい、正しい働きができなくなることで、必要な体の機能を動かせなくなるからなんです。

さらに亜鉛は左隣の銅(29)と兄弟元素で、吸収経路を共有しているので、亜鉛欠乏だと銅過剰に、亜鉛過剰だと銅欠乏になりやすいという関係にあります。銅は赤血球を作ったり、脳内ホルモンをつくる際に必要ですが、亜鉛は高容量のサプリでも飲まない限り過剰にはなりにくく、銅はむしろ過剰になりやすい傾向があります。亜鉛欠乏かつ銅過剰になることにより炎症体質になったり興奮系の脳内ホルモンのバランスを崩してうつ病になりやすくなるんです。

そして4個左の鉄(26)とも腸における吸収経路を共有しているため、鉄と亜鉛が腸内で共存するとお互いの吸収を妨げる関係です。

亜鉛が多く必要な時や場所は?

□細胞分裂が盛んな時(成長期、妊娠、授乳)

□細胞分裂が盛んな場所(毛髪、味蕾、皮膚、消化管、

            けがの治療時、病気の回復時)

成長期=身長が伸びる=骨・筋肉が伸びる=細胞分裂が盛ん ➡栄養の要求度が上がる つまり亜鉛が欠乏しやすい

その他、亜鉛欠乏は・・・

不妊、薄毛、味覚障害、攻撃性増加、糖尿病、解毒能低下、認知症、うつ病、アレルギー、皮膚炎、床ずれなどのリスクも高めます。

つまりつまり、亜鉛が多く必要な時期、成長期に反抗的になったり、妊婦さんがうつになったりイライラしやすくなるのは、亜鉛欠乏、ひいては銅亜鉛バランスの影響もあるんですね。

診断は主に血液検査ですが、体内のたった2%が血清に存在する亜鉛。しかも日内変動があり、夕方の血清亜鉛値は朝の約8割。それを知った上で検査データを解釈する必要があります。通常血清亜鉛値が基準範囲内(80~120μg/dl)であっても、組織内亜鉛は欠乏していたり、酸化ストレスにより溶血(赤血球が壊れること)によって血清より亜鉛濃度の濃い赤血球から亜鉛が溶出していたりすることがありますが、組織内亜鉛が多いのに血清亜鉛値が少なく出ることはあまりないと考えられています。

化学の退屈な話で分かりにくかったかと思いますが、こんなに大事な亜鉛がなぜ欠乏しやすいのか、次回からは、そこを掘り起こします。

受け身の言葉を主体的・能動的な言葉に変えて使う習慣をつけることで、エネルギー値が上がります

私のクリニックの見つけにくいホームページを見つけてクリニックに来てくださる患者さんは、ほとんどの方が頑張り屋さんです。まじめで家族思いで仕事熱心で、勉強家で努力家で、栄養の知識も持ってらっしゃり、食事にも気を配って生活して、何とか元気になりたいと思って、でもなかなか元気が出ない方が多いんです。

そんな患者さんに「先生のブログを読んで、とても共感しました。」と言っていただくことが一度ならずあって、こんな更新の遅い、拙いブログを読んでくださる人が今もいるんだと、改めて思いました。

食事も栄養もとても大切ですが、栄養を体に取り入れるには、口から始まり、肛門に至る消化管という長~い管が正常に働いてくれることが大前提です。ストレスや緊張で消化管の機能が下がるので、栄養を正しく摂ることに頑張りすぎることも、皮肉なことに栄養の吸収を妨げてしまいます。

さらに、栄養を摂る最大の目的はエネルギーを作ること。全身のたった2%の重量の脳が安静時でも約20%のエネルギーを消費してるってご存知でしたか?つまり、せっかく栄養を摂っても、頭であれこれ考えすぎて悩みすぎると、ただでさえエネルギー食いの脳に多くのエネルギーつまり栄養が奪われてしまいます。

エネルギーを作る事と消費する事の収支の結果=その方の元気度を「エネルギー値」と言いますが、このエネルギー値、心の持ちよう、思考パターンに大きく左右されます。

何を隠そうこの私、栄養療法家にあるまじき、自分の体調不良(明らかに寝不足・過労が原因)を白状せねばなりません。

明らかなオーバーワークとポリシーと違う仕事に追われた勤務医から一転、栄養療法クリニックを開設して、完全予約制で自分のポリシーを曲げずに診療するようになって、ずいぶんと時間にも心にも余裕ができたと思っていたのですが・・・

日々より良い診療のためにあれこれ資料を準備したり、業者さんと交渉したり、もちろん勉強もしたり、やりがいのある楽しい作業と思って、睡眠時間をけずり頑張っていました。

一方、慣れない事務作業、眼科スタッフに栄養療法の患者さんの会計処理をお願いして慣れない仕事の負担を増やすことへの罪悪感、保険診療の何倍もの労力をかけているとはいえ、保険診療の何倍もの自費料金をいただくことの罪悪感。

とどめは娘の里帰り出産で、「まごわやさしい」、ならぬ、「まごはかわいい」で頑張りすぎた・・・泣 などなどでとうとう年末にひどい風邪をひいてしまいました。

そして、そんなこんなで投稿が滞っている間に、ブログの優先順位を自ら下げてしまっていました。そして、おさぼり期間が長くなると、だんだんハードルが上がって、ますます書けなくなって・・・

ところが、先日、セミナーの準備のため、心理関係の本や動画を見直していて、受け身の言葉を主体的な言葉におきかえるワークのスライドを久々に見ました。「300万円貯まったらお店を開きます。」を「300万円貯めてお店を開きます」におきかえる、「時間がない」という言葉を「時間を作ってない」におきかえる、とか。しかも自分が作って、セミナーで聞いて下さっている方々に偉そうに講義したスライド(笑)

ブログを書く時間、「ない」んじゃなくて「作ってなかったんだ」「ハードルが上がった」んじゃなくて自分で「ハードルを上げていた」と今さら気づいて反省。まあ、私の人生、こんなことの繰り返しなんですが、前向きに考えて再度ブログを更新することに・・・読んでくださる奇特な方に、元気になっていただけるような情報発信をやっぱりやろうと思います。

こんな私が言っても説得力ゼロですが、再度言います。受け身の言葉を主体的、能動的な言葉に変えて使う習慣をつけることで、エネルギー値が上がるんですよ~

おさぼりする前の最後のブログは「亜鉛」の話、しかも①。続きは下書きがすでにほぼできていたので、明日から話を一旦「栄養」に戻して、「亜鉛」を完結したいと思います。

亜鉛① 亜鉛のはたらき

ブログの更新が滞っています・・・

去る8月18日、月1回恒例のクリニックセミナーを開催しました。テーマは「亜鉛」

セミナーが終わってすぐにこのブログを書き始めたはずだったのに、「亜鉛」が重要すぎてなかなかまとまらず、気が付いたらすでに10月!

残念ながら、西洋医学ではあまり「栄養」が重視されませんが、こと「亜鉛」に限っては近年基礎研究が進み、様々な働きがあることが実臨床のレベルにまで知らされるようになり、亜鉛欠乏症という概念が浸透し、亜鉛補充薬を積極的に使用する動きが出てきています。

まずはその亜鉛の多彩なはたらき。

亜鉛の働きはわかっていることだけでも数えきれないほどたくさんありますが、主なはたらきとして知られているのは

①触媒機能:300種類以上の酵素の必須成分

触媒というのは、例えばAという物質をBに変える化学反応を促進する物質の事です。生体内では「酵素」と言います。酵素という名前の方がなじみがあるかもしれませんね。酵素は、放っておくとAからBに変化するのに何万年もかかる反応、あるいはむしろBがAになってしまうかもしれない反応を、体の機能に必要とあれば瞬時に起こしてくれるんです。つまり、月並みですが生きて行くために必須のアイテムなので、亜鉛が300種類の酵素にかかわっているというだけでも十分に重要な栄養素であることは間違いないですね。

でも、皮肉なことにあまりに多くの働きがあるために、欠乏していても症状が多彩すぎて特徴がつかみにくく、欠乏症状に気づきにくいのが特徴です。

②構造機能:タンパク質を形作り、機能させるための成分

①や④のような機能を果たしている物質の主成分はほぼすべてタンパク質なのですが、ここで亜鉛が必要なのは、そのタンパク質を形作る構造の構成要素としても亜鉛が必要不可欠、つまり、亜鉛がなければ酵素やそれ以外の機能を果たすタンパク質をつくることができないっていう事です。

③ATPからエネルギーを取り出す&炎症制御、調整

私たちの細胞や体を動かす電力のような物はATPですが、細胞内のATPからエネルギーを取り出すのに ALP(アルカリフォスファターゼ)という酵素が必要です。健康診断でよく測定される酵素ですが、 亜鉛が構成要素として必要ですので、亜鉛が極端に少ないとたちまち元気がなくなってしまいます。また、細胞の外にATPが多すぎると炎症を起こしやすくなってしまいますが、この暴走を抑えるのも亜鉛です。また、亜鉛イオンの濃度そのものが細胞の内外の情報を伝達して様々な機能を調節する信号のような役割を果たしています。

④抗酸化・解毒機能

活性酸素や毒素は炎症の原因になったり、体の機能を妨げたり、細胞を変性させて正常に働かなくさせますが、亜鉛を含有するメタロチオネインというタンパク質は水銀やカドミウムなどの有害重金属を解毒・排泄したり、強力な抗酸化物質として活性酸素を取り除いたりしてくれています。

⑤細胞分裂に不可欠

亜鉛は遺伝子DNAの複製の際に2重らせん構造(お父さん側とお母さん側の2本のDNAがらせん状に絡まった状態)を解列する際に働く酵素の補因子です。亜鉛が足りなければDNAの複製が上手く起こりません。これは日々細胞分裂を繰り返し入れ替わって元気な状態を保っている全身のすべての細胞にとって亜鉛が必要不可欠という事ですが、当然成長期には特に重要なミネラルとなります。

⑥骨の成長

成長期と言えば、細胞分裂も盛んですが、何といっても骨を増やすことが必要です。前述③で亜鉛は骨を作る際に必要なリンを渡すALPという酵素の補因子になっていると言いましたが、ALPは骨を成長させるのにも必要です。ですから、ALPは成長期には大人の何倍もの数値となっているのが普通で、当然亜鉛の需要が急激に増します。

⑦その他

赤血球の形成、インスリンの安定化、神経伝達物質の生成(脳の機能)、免疫細胞の活性化など多くのはたらきに関わっています。

たくさんありすぎて書ききれませんが、ここにあげただけでも亜鉛がいかに重要なミネラルであるか、という事をお分かりいただけたか、と思います。

鉄欠乏の血液データ 深読み編

検診やドック、医療機関でのや血液検査の結果をご覧になったことがあると思います。

あなたの検査データの横には必ず「基準値」と言われる値が示されていて、その「基準値」を下回っていれば”L”(Low)または”↓”、上回っていれば ”H”(High)または”↑”  という印がついていますね。基準値の中に入っていれば「合格」です。

でも、この「基準値」は「正常値」ではないってご存知ですか?どうやって決められた数値かと言いますと、検査会社の自称健康(病院で病気だとは診断されていない)職員さん十数人~数十人の検査値の分布の上下5%を除いた値。つまり、職員さんの平均値のような値なんです。

これはつまり、鉄を例に挙げると、貧血とは言われてないけど隠れ鉄欠乏の若い女性職員さんの多い会社だと、鉄欠乏の症状がすでにある人も多く含まれている可能性大、という事。

え?じゃあ、自分が鉄欠乏ではないか、どうやったらわかるの?

ご安心ください。検診などの検査データを見れば結構わかります。

鉄欠乏の見分け方

もっと詳しく知りたい方は以下を熟読してください。

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