食事がつくる発達障害①の4 成長期と発達障害

子どもの成長曲線
小児のALP基準値

①図のように子供の成長には生後3歳くらいまでの第一次成長期、10歳から18歳くらいの第二次成長期がありますね。ちょうどその時期は、イヤイヤ期、思春期という、いわゆる反抗期と一致しています。これって偶然でしょうか?

②図では小児のALP(アルカリフォスファターゼ)という酵素の基準値のグラフを示しました。このALP、高い山、成長曲線の山とほぼ一致していますね。そして成人の基準値に比べ、子供の基準値が極端に高いことがわかります。

それもそのはず、ALPのお仕事は

エネルギーを作る、骨を作る、神経伝達物質を作るなどの、心身の成長にとって必要不可欠で重要な機能を担う酵素なんです。

ALPの構造

この酵素の主材料はもちろんタンパク質ですが、亜鉛とマグネシウムがないと作れない酵素。

ALPをたくさん作らなければならない成長期には、タンパク質に加え亜鉛、マグネシウムなどのミネラル類もたっくさん消費するってことですね。

そして、それらの栄養素の補充が十分でないと不足しがちになり、前々回のブログでご紹介した神経伝達物質の代謝にトラブルを生じやすい、つまり精神が不安定になりやすい、という事に繋がります。

成長期に必要な栄養素が脳の機能にも大きく影響するってことです。イヤイヤ期に発達障害が顕著になってきたり、思春期にうつ病が起こりやすくなるのもうなづけます。

ってことは、です。それらの栄養素を過不足なく補充することで、発達障害やうつ病の発症を減らすことができそうって、思いませんか?

食事がつくる発達障害①の2 神経伝達物質と脳機能

発達障害は一般的には脳の機能の障害ととらえられています。

現に、前回ご紹介した成田奈緒子先生の著書にも、脳機能の発達の順序が違うと、発達障害もどきの症状が起こると記されていました。

では、脳の機能が正常とは、いったいどんな状態でしょう?

正常な脳機能

脳は、細長い神経細胞がぎっしり詰まってネットワークを作り、情報を伝達している場所です。情報の伝達は、上流の神経と下流の神経のつなぎ目(シナプス)において、神経伝達物質を受け渡しする事で行われています。

必要な情報が、必要な時に適切に伝達される、つまり脳の機能が正常に作動するには、神経伝達物質がバランスよく作られることが重要で、

神経伝達物質を作るには、必要な栄養素が充足していなければならないのです。

逆に、脳の機能が低下しているとは?

脳機能の低下

神経伝達物質の・材料が不足している状態と・材料を作るために必要な酵素のDNAにトラブルがある状態、です。

さて、どちらの影響が大きいでしょう?

もちろん栄養不足にも程度があるし、遺伝子トラブルにも程度がありますから、どちらとも言えませんが、ただ、言えることは、変えることができない遺伝子トラブルがあっても、環境や食事で症状を変えることができる、という事です。

実は脳は、栄養の影響を最も大きく受ける臓器なんです!

脳内には、抑制系、調節系、興奮系の3つの系列の伝達物質があります。

それぞれの系列のスタートとなるのはアミノ酸(タンパク質が消化されたもの)で、酵素が働いて順々に代謝され、目的の物質を作っているわけです。酵素の主原料もタンパク質ですが、その化学構造の中身はミネラルを含むことが多く、また、酵素が働くためには補酵素であるビタミンも不可欠です。

例えば、調節系の神経伝達物質、別名幸せホルモンと言われている「セロトニン」の代謝を見てみましょう。

調節系伝達物質の代謝

セロトニンが不足すると、不安やこだわりが強い イライラしやすい、怖がり、パニック睡眠が上手く摂れない、などうつのような症状が現れます。実際、最もポピュラーな抗うつ薬の一つはセロトニンの量を増やすように設計されています。

右図のようにセロトニンを作るにはまずスタートとなるトリプトファンというアミノ酸に、鉄、リチウム、マグネシウムなどのミネラル、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6というビタミンB群などが不可欠です。何かが欠けると、この代謝の流れがスムーズにいかず、必要なセロトニンを作れず、セロトニンから代謝されてできるはずの、別名眠りのホルモン「メラトニン」も作られなくなるのです。

神経伝達物質のアンバランス

神経伝達物質のアンバランスは、右のような症状を起こしますが、これらの症状が発達障害で見られる精神症状と一致するところが大きいので、

というわけで、一般的には発達障害は脳の障害ととらえられています。

亜鉛④ 現代人はなぜ亜鉛が欠乏しやすいのか?

まず食材の栄養価の問題。現代は、農薬や化学肥料、環境汚染の影響で作物自体の栄養価が下がっています。「新型栄養失調」の回で述べましたが、加工食品やカット野菜などは加工の段階で栄養素が失われています。

次に、吸収の問題。日本人には胃酸欠乏の人が多いと言われています。ましてや、近年はちょっと胃の具合が悪いと、胃酸抑制薬が安易に処方され、延々と飲み続けている例がよく見られます。摂取したミネラルの吸収には、胃酸でイオン化されるという過程が不可欠ですから、胃酸が少ないと摂取したのに吸収されないという事態も起こり得るんです。また、食品添加物のリン酸塩は、それ自体に毒性はありませんが、ミネラルをくっつけて便に排泄してしまいます。もちろん腸内環境が悪いと吸収しにくくなります。

そして、亜鉛消費量の増大問題。せっかく吸収し取り込んだ亜鉛も、食品添加物、環境汚染物質や薬剤などの「解毒」に使われ、ストレス、炎症なども亜鉛を浪費する原因になります。

と、このように現代社会に生きる私たちはよほど気をつけて亜鉛を摂取していても、亜鉛欠乏症になりやすいようにできているのです。

では、どうしたら良いのでしょう?

上記の逆、つまり、

・できる限り無農薬の作物を摂取し、極力加工食品を使用せずに食事は手作りしましょう。

・無駄な胃酸抑制薬を漫然と内服するのは厳禁。食事の際、胃酸の代わりにpHを下げてくれるお酢やかんきつ類(レモン、ゆずなど)を一緒に摂りましょう。

・歯周炎や上咽頭炎、副鼻腔炎等、慢性炎症があれば治療しておきましう。

・腸内環境を整えましょう。

・心穏やかにストレスのない生活を送りましょう。

いかかですか?なかなか難しいですよね。でも、知っていると知らないでは、全く違うと思います。今日から、心がけてみませんか?

亜鉛③ 多く必要な時と部位は?

亜鉛は、数えきれないほど多くの働きがありますが、亜鉛が多く必要な身体の状態や部位を知る上で、まずは「細胞分裂」が一つの重要なキーワードになります。遺伝子DNAの合成、複製に不可欠な栄養素だからです。

□細胞分裂が盛んな時(成長期、妊娠、授乳、けがの治療時、病気の回復時、炎症時)

□細胞分裂が盛んな場所(毛髪、味蕾、皮膚、消化管、生殖器)

成長期、妊娠時、手術やケガや病気の時:新たな細胞を作り出すため、または組織の修復のため細胞分裂が盛ん ➡亜鉛の要求度が上がる つまり相対的に亜鉛が欠乏しやすいはずです。

一方、亜鉛は、神経伝達物質という、脳の働きを決める重要な物質を作る際に必要なため、脳にも多いのですが、欠乏すると攻撃性増加、認知症、うつ病の原因になることもあります。

つまりつまり、亜鉛が多く必要な時期、成長期に反抗的になったり、妊婦さんがうつになったりイライラしやすくなるのは、亜鉛欠乏の影響があるんですね。

その他、膵臓ではインスリンを安定化する重要な役割を担い、肝臓では解毒の仕事、さらには免疫細胞を活性化する役割もあります。亜鉛欠乏は、糖尿病、アレルギーなどのリスクも高めるという事です。

診断は一般的には血液検査です。しかし、体内の全亜鉛のたった2%しか血清中に存在しないうえ、日内変動があり、夕方の血清亜鉛値は朝の約8割。それを知った上で検査データを解釈する必要があります。通常血清亜鉛値が基準範囲内(80~120μg/dl)であっても、組織内亜鉛は欠乏していたり、酸化ストレスで起こる溶血(赤血球が壊れること)によって、亜鉛濃度の濃い赤血球から血清中に亜鉛が溶出していたりすることがあります。一方組織内亜鉛が多いのに血清亜鉛値が少なく出ることは比較的まれです。

こんなに大事な亜鉛がなぜ欠乏しやすいのか。次の課題です。

亜鉛② 金属としての亜鉛の位置

生体に有用な金属はミネラルといい、有害な金属は有害(重)金属といいます。下図は、みなさん化学で習ったことのある金属の周期表です。ここからは、科学が嫌いな方は太字だけ読んでくださいね。亜鉛=Zn(30)、カドミウム=Cd(48)、水銀=Hg(80)、銅=Cu(29)、鉄=Fe(26)はおさえてください。

全ての金属元素は、陽子を中心として周囲に電子が回っているのですが、電子は決まった軌道を回っていて金属ごとに電子の数、軌道の数が決まっています。記号の上の小さな数字が電子の数、最上段の元素は軌道が一つで、下の段に行くほど一つずつ軌道が増えます。化学的には最外殻(一番外側の軌道)の電子の数が他の元素とのくっつきやすさを決めます。

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亜鉛は周期表30番目の金属で、右図のごとく亜鉛の下段にはカドミウム(48)、水銀(80)があります。縦の列は同族元素といって、いちばん外側の軌道の電子の数が同じなので、化学的に同じ元素にくっつきやすい性質があります。つまり、亜鉛が組み込まれるべき酵素などの物質の亜鉛の席にカドミウムや水銀が座りやすいってこと。酵素は身体のすべての反応を決める重要なタンパク質です。カドミウムはイタイイタイ病、水銀は水俣病という有名な公害病の原因ですが、CdやHgが有害なのは、亜鉛が座るべき酵素のあちこちの場所に座って、出来損ないの酵素を作ってしまい、正しい働きができなくなることで、必要な体の機能を動かせなくなるからなんです。

さらに亜鉛は左隣の銅(29)と兄弟元素で、吸収経路を共有しているので、亜鉛欠乏だと銅過剰に、亜鉛過剰だと銅欠乏になりやすいという関係にあります。銅は赤血球を作ったり、脳内ホルモンをつくる際に必要ですが、亜鉛は高容量のサプリでも飲まない限り過剰にはなりにくく、銅はむしろ過剰になりやすい傾向があります。亜鉛欠乏かつ銅過剰になることにより炎症体質になったり興奮系の脳内ホルモンのバランスを崩してうつ病になりやすくなるんです。

そして4個左の鉄(26)とも腸における吸収経路を共有しているため、鉄と亜鉛が腸内で共存するとお互いの吸収を妨げる関係です。

亜鉛が多く必要な時や場所は?

□細胞分裂が盛んな時(成長期、妊娠、授乳)

□細胞分裂が盛んな場所(毛髪、味蕾、皮膚、消化管、

            けがの治療時、病気の回復時)

成長期=身長が伸びる=骨・筋肉が伸びる=細胞分裂が盛ん ➡栄養の要求度が上がる つまり亜鉛が欠乏しやすい

その他、亜鉛欠乏は・・・

不妊、薄毛、味覚障害、攻撃性増加、糖尿病、解毒能低下、認知症、うつ病、アレルギー、皮膚炎、床ずれなどのリスクも高めます。

つまりつまり、亜鉛が多く必要な時期、成長期に反抗的になったり、妊婦さんがうつになったりイライラしやすくなるのは、亜鉛欠乏、ひいては銅亜鉛バランスの影響もあるんですね。

診断は主に血液検査ですが、体内のたった2%が血清に存在する亜鉛。しかも日内変動があり、夕方の血清亜鉛値は朝の約8割。それを知った上で検査データを解釈する必要があります。通常血清亜鉛値が基準範囲内(80~120μg/dl)であっても、組織内亜鉛は欠乏していたり、酸化ストレスにより溶血(赤血球が壊れること)によって血清より亜鉛濃度の濃い赤血球から亜鉛が溶出していたりすることがありますが、組織内亜鉛が多いのに血清亜鉛値が少なく出ることはあまりないと考えられています。

化学の退屈な話で分かりにくかったかと思いますが、こんなに大事な亜鉛がなぜ欠乏しやすいのか、次回からは、そこを掘り起こします。

亜鉛① 亜鉛のはたらき

ブログの更新が滞っています・・・

去る8月18日、月1回恒例のクリニックセミナーを開催しました。テーマは「亜鉛」

セミナーが終わってすぐにこのブログを書き始めたはずだったのに、「亜鉛」が重要すぎてなかなかまとまらず、気が付いたらすでに10月!

残念ながら、西洋医学ではあまり「栄養」が重視されませんが、こと「亜鉛」に限っては近年基礎研究が進み、様々な働きがあることが実臨床のレベルにまで知らされるようになり、亜鉛欠乏症という概念が浸透し、亜鉛補充薬を積極的に使用する動きが出てきています。

まずはその亜鉛の多彩なはたらき。

亜鉛の働きはわかっていることだけでも数えきれないほどたくさんありますが、主なはたらきとして知られているのは

①触媒機能:300種類以上の酵素の必須成分

触媒というのは、例えばAという物質をBに変える化学反応を促進する物質の事です。生体内では「酵素」と言います。酵素という名前の方がなじみがあるかもしれませんね。酵素は、放っておくとAからBに変化するのに何万年もかかる反応、あるいはむしろBがAになってしまうかもしれない反応を、体の機能に必要とあれば瞬時に起こしてくれるんです。つまり、月並みですが生きて行くために必須のアイテムなので、亜鉛が300種類の酵素にかかわっているというだけでも十分に重要な栄養素であることは間違いないですね。

でも、皮肉なことにあまりに多くの働きがあるために、欠乏していても症状が多彩すぎて特徴がつかみにくく、欠乏症状に気づきにくいのが特徴です。

②構造機能:タンパク質を形作り、機能させるための成分

①や④のような機能を果たしている物質の主成分はほぼすべてタンパク質なのですが、ここで亜鉛が必要なのは、そのタンパク質を形作る構造の構成要素としても亜鉛が必要不可欠、つまり、亜鉛がなければ酵素やそれ以外の機能を果たすタンパク質をつくることができないっていう事です。

③ATPからエネルギーを取り出す&炎症制御、調整

私たちの細胞や体を動かす電力のような物はATPですが、細胞内のATPからエネルギーを取り出すのに ALP(アルカリフォスファターゼ)という酵素が必要です。健康診断でよく測定される酵素ですが、 亜鉛が構成要素として必要ですので、亜鉛が極端に少ないとたちまち元気がなくなってしまいます。また、細胞の外にATPが多すぎると炎症を起こしやすくなってしまいますが、この暴走を抑えるのも亜鉛です。また、亜鉛イオンの濃度そのものが細胞の内外の情報を伝達して様々な機能を調節する信号のような役割を果たしています。

④抗酸化・解毒機能

活性酸素や毒素は炎症の原因になったり、体の機能を妨げたり、細胞を変性させて正常に働かなくさせますが、亜鉛を含有するメタロチオネインというタンパク質は水銀やカドミウムなどの有害重金属を解毒・排泄したり、強力な抗酸化物質として活性酸素を取り除いたりしてくれています。

⑤細胞分裂に不可欠

亜鉛は遺伝子DNAの複製の際に2重らせん構造(お父さん側とお母さん側の2本のDNAがらせん状に絡まった状態)を解列する際に働く酵素の補因子です。亜鉛が足りなければDNAの複製が上手く起こりません。これは日々細胞分裂を繰り返し入れ替わって元気な状態を保っている全身のすべての細胞にとって亜鉛が必要不可欠という事ですが、当然成長期には特に重要なミネラルとなります。

⑥骨の成長

成長期と言えば、細胞分裂も盛んですが、何といっても骨を増やすことが必要です。前述③で亜鉛は骨を作る際に必要なリンを渡すALPという酵素の補因子になっていると言いましたが、ALPは骨を成長させるのにも必要です。ですから、ALPは成長期には大人の何倍もの数値となっているのが普通で、当然亜鉛の需要が急激に増します。

⑦その他

赤血球の形成、インスリンの安定化、神経伝達物質の生成(脳の機能)、免疫細胞の活性化など多くのはたらきに関わっています。

たくさんありすぎて書ききれませんが、ここにあげただけでも亜鉛がいかに重要なミネラルであるか、という事をお分かりいただけたか、と思います。