様々な不調の原因、上咽頭炎

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上咽頭ってご存知ですか?喉の奥と鼻の奥の境目、図の赤丸のあたりの部位の事です。口を大きく開けて見える喉ちんこから上の裏側が上咽頭というイメージ。

上咽頭は、ウイルスや有害物質を吸い込むと普通のうがいや咳などでは取れにくくたまりやすいため、リンパ組織たくさん集まっていて、炎症が起こりやすい場所です。

鼻の穴( がいこう といいます)は二つで、絶え間なく働いているようで実は左右交互に休んでいるのだそうですが、上咽頭部では一つに合流して気道の方に曲がっている、吹き溜まりのような形。私たちが一日に吸う空気の量は1万リットル、500ミリ・リットルのペットボトル2万本に相当するのだそうですが、そこにウイルや有害物質がたくさん含まれていたら?そのために喉の他の部位と違ってリンパ組織が発達して、外来異物と常に戦ってくれているというわけなんです。

上咽頭炎が急性期だと、鼻と喉の間が痛いとか痰がたくさん出る、微熱が出るなどの症状があります。症状だけでは普通の喉風邪と区別がつきませんね。免疫がしっかりしている方ならば風邪と同じように自然治癒します。でも、免疫が弱くて炎症を収束できない方、アレルギー性鼻炎などでしょっちゅう炎症を繰り返す方などは、上咽頭炎が慢性化してしまう場合も多く、中には10年以上、この症状で苦しんでいる人、逆にそうとは気づかないでいる人がいるのが問題なんです。

慢性上咽頭炎が引き起こす症状

病巣感染と言って、体のどこかに感染症や慢性炎症があると、その影響で体中の様々な不調を起こす原因になると言われています。慢性上咽頭炎も病巣感染の一つです。

上咽頭炎の予防

まず、口呼吸で口の中が乾燥すると、上咽頭にウイルスが付着しやすくなるので鼻呼吸をすることがとても重要です。お昼間は極力意識して用のないときは口を閉じるようにしましょう。マスクを着用するとついつい口呼吸になっている人が多いと言われていますので、要注意です。

意外と夜間に無意識のうちに口呼吸になっている人が多いんですよ。朝起きたとき、口が乾いていたり、のどが痛くなっている方、口にテープを貼る方法、なかなかいいですよ。実は私もやってます。市販のテープもありますが、かぶれさえしなければ、普通の絆創膏でいいです。ただし、かぶれやすい方はちょっとごわつきますが、粘着力は弱いですがビニールテープがかぶれにくいです。それでもだめなら・・・難しいかもしれません(すみません)。

そして、鼻うがい。生理食塩水で鼻の穴を洗浄するというもの。生理食塩水の濃度ならば痛くはありません。かなりの予防効果があるようですが、洗いすぎもかえって悪いという意見もありますし、あまりに鼻詰まりの強い方は難しく、人によっては水が耳の方に流れて中耳炎になってしまう事もあるようなので、無理は禁物です。鼻うがいはハードルの高い物だと感じている人も多いようですが、やってみれば意外と簡単で、気持ちいいですよ。花粉の時期には花粉を洗い流す効果もありまから、できる人は是非実践してみてください。

痛む場所と痛みの原因の場所が違う

 咽頭痛、いわゆるのどの痛みというと、首の真ん中の辺りに感じる人がほとんど。インフルエンザの時も、そこに痛みを感じた経験があると思いますが、実際に綿棒で検査されるのは鼻の奥の上咽頭です。上咽頭でウイスルが急激に増殖するからなのですが、そこに痛みがあることはあまりありません。ところが実は、咽頭痛の原因の90%は上咽頭の炎症という報告があります。痛む場所と原因の場所が違っているのとなると、痛む場所だけを調べても正体はわかりません。

慢性上咽頭炎とは? 10年以上悩んだ症状の原因はこれだった

 10年以上前から、のどのヒリヒリと焼けつく感じに悩いたけれど、通常の診察では特に異常がなく、これといった治療もありません。

上咽頭炎を見てもらえる(これが重要)耳鼻科で喉頭内視鏡で上咽頭の腫れを指摘されました。(粘膜表面を綿棒でこすってみると、じわじわと出血(写真上)。本来は、粘膜だからといって簡単に出血するようなことはありません。)こする治療を続けたところ、4か月もすると、強くこすっても出血することがなくなり(写真下)、同時にヒリヒリした痛みも消失。

こすって治す上咽頭擦過治療EAT療法

慢性上咽頭炎に対し、塩化亜鉛という強い刺激物質を塗布して綿棒でこするというこの治療は、上咽頭擦過治療(Epipharyngeal Abrasive Therapy:EATイート)といいます。まさに傷口に塩を塗りつけるかのような、とても原始的な治療で、治療の際の痛み(炎症が強いほど激痛)もあります。

栄養療法的に慢性炎症として多いのが、①腸の炎症、②脂肪肝 ③上咽頭炎

慢性炎症は直接的、間接的にいろいろな症状や病気を引き起こしていることが分かってきています。長年続くのどの痛み、鼻づまり、後鼻漏(咽に流れる痰や鼻汁)、首回りのいろいろな症状はもちろん、頭がボーっとする、疲れやすいなどの症状で悩んでいる人は一度、慢性上咽頭炎を疑ってみてはいかがでしょうか。

慢性上咽頭炎については、いまだ診断・治療が標準化されておらず、耳鼻科の先生でもそれを診断治療して下さるところは少ないのが現状ですが、2019年11月、日本耳鼻咽喉科学会の関連学会である日本口腔・咽頭科学会の中で、上咽頭擦過療法検討委員会が発足したそうです。同委員会の活動により、慢性上咽頭炎についてさらに多くの知見が集まって、広く知られるとともに診断治療が受けられる耳鼻科クリニックが増えてくれたらうれしいですね。

健康を作る油病気を作る油

このタイトルで、去る7/15にクリニックでセミナーを開催しました。

今年6月にクリニックをオープンして開始したばかりの月1回のセミナーの第2弾。セミナーで栄養療法の事を広く皆さんに知っていただくのが、クリニックオープン前からの一つの目標だったのです。宣伝も不十分、日程もクリニックの休診時間を利用しての木曜日午後なので、今回まで参加費がモニター価格の1000円と格安ながら、参加人数はたった5名ですが、一人でも参加して下さる方がいらっしゃったら頑張って続けるつもりです。

余談ですが、スライドつくりにかけた時間は10時間以上、ポスターやレジュメ作成、その他もろもろの経費などを考えると、果たして私の時給は300円もで出ただろうか?もちろん、セミナーで喋る内容を習得するのにかけた莫大な費用は抜いての話です。というわけで、次回からは2000円の参加費とさせていただきます。中身は5000円払っても損はないと言っていただけるくらいのものを目指します!

これは、私のクリニックの1時間の自費カウンセリングがうけられないとおっしゃる患者さんや、患者さん予備軍の方に、複数でお話を聞いていただくことによってお得に知識を得て頂くのが目的。

とまあ、つまらぬ前置きはさておき、先日のセミナーの内容。

油の良しあしを理解するために必要な最低限の化学的知識として脂質の構造、脂質の種類、その働き、脂肪の消化吸収、有害な脂質、市販の油の価格と製法の違い、厚生労働省の対応の諸外国との違い、腸内細菌との関係、などについて1時間お話しました。

ざっくりと結論を言えば、

①脂肪酸は炭素と水素と酸素でできていて、炭素の長さが様々で、短いものは短鎖脂肪酸(常温で液体、水に溶ける)、中くらいは中鎖脂肪酸(MCT:常温で液体)、長いものは長鎖脂肪酸(常温で固体)。エネルギー源となる他、細胞膜の成分として非常に重要な働きをしている。

②飽和脂肪酸(主に動物性の油とココナッツオイル)は巷で言われるほど悪くないエネルギー摂取源であり、そのひとつである前述したMCTオイルでのエネルギー摂取には様々なメリットがある(前述のとおり)。

②不飽和脂肪酸には炭素が水素と手をつないでいない二重結合があり、その位置と数によって性質が異なる。アミノ基(Ch3)の末端から数えて最初の二重結合が9番目、6番目、3番目の物をそれぞれオメガ9、オメガ6,オメガ3と称し、その順に二重結合が増え、二重結合が多いほど紫外線、熱などでより酸化しやすい。

③加熱に使用するならオメガ9の多いオリーブオイル、こめ油などがお勧め。

④脂質の吸収には脂質を包み込んで血液の溶けやすくする「胆汁酸」、エネルギー産生工場のミトコンドリアに運び込むシャトルバスの働きをする「カルニチン」が必要

⑤オメガ6は炎症や血液の凝固を促進し、オメガ3はその反対の働きをする。いずれも生体に必要不可欠な脂肪酸だが、現在の食事では圧倒的にオメガ6の摂りすぎであり、それが様々な病気の原因になっている。オメガ6を極力控え、オメガ3を積極的に「生で」摂ることが望ましい。

⑥油の生成には圧搾法(原材料をつぶして圧のみで絞り出す昔ながらの製法コールドプレス)、溶剤抽出法(ヘキサンという有害な溶剤で原材料から油を溶かし出し、加熱することによってヘキサンを除去する製法)が。溶剤抽出法は圧搾法の約50分の1の時間で生成することができ、安価で大量生産に向くが、加熱により抗酸化物質などの有用成分がなくなり、有害な物質ができてしまう可能性が高くなる。また油の原料や家畜の飼料ならば大豆やトウモロコシの産地や遺伝子組み換えなどの表記義務がないので、安価なオメガ6オイルのほとんどが遺伝子組み換えの輸入穀物が使用されている。

⑦オメガ6の安価な油をさらに加工して固まりやすくしたものがトランス脂肪酸。これも以前記載したように、諸外国では表示義務から禁止まで様々な対策がとられているが、日本には表示義務すらもなく野放し。

⑧オリーブオイルは体にいいと言われるが、普通のスーパーで売られているオリーブオイルの表示も日本では管理がずさんで、例えば1敵でもエクストラバージンオイル(圧搾法の一番搾り)が入っていれば「エクストラバージンオリーブオイル」と名乗れる。そもそもプラスチック容器や透明の瓶に入ったものは信用できない。

⑨腸内細菌がオメガ6のオイルを体に有用な脂質に変換しているという報告がある! 例えばこんな論文が⇒⇒⇒

大衆情報に惑わされず正しい知識を持って食材を選ぶことが必要で、他の事は少し節約しても、かけがえのない健康のために、本物の食材の為にお金を使う事を惜しまないって、大事です。

そして、それは、良心的に本物を作ってくれている生産者を応援する事にもなるんですから・・

骨粗しょう症の薬に要注意

女性ホルモンのエストロゲンが骨の代謝に深く関わっているため、特に女性は更年期以後急激に骨粗しょう症のリスクが上がります。今回は骨粗しょう症とその治療薬、そして栄養との関係のお話です。

骨組織は硬くて不変なように思われますが、実は一定のサイクルで日々古いものが壊され、新しいものに生まれ変わっています。これを骨代謝(リモデリング)と言います。

骨代謝に関わる細胞には、新しい細胞を作り出す(骨形成)「骨芽細胞」、骨の約9割を占める「骨細胞」と、古い骨を溶かして壊す(骨吸収)「破骨細胞」があります。1年で約30%の骨が新しく生まれ変わるとされています。

骨の強度を考える際に「骨量」「骨密度」「骨質」という言葉があります。「骨量」は骨全体のミネラルの量、「骨密度」は骨量を骨の体積で割ったミネラルの密度。「骨質」は骨のミネラル以外の要素を含めた骨の強度です。

骨粗しょう症の検査に「骨密度」とはよく聞かれますが、実は「骨質」が良くないと骨密度が高くても骨折しやすいという事になりかねません。どういうことでしょうか?

それは、カルシウム以外のミネラルとコラーゲンにヒントがあります。

骨を形作っている主な成分は、カルシウムとコラーゲン。確かにミネラルの中ではカルシウムとリンが最も多いのですが、カルシウムを上手く取り込んで骨にするためにはマグネシウムが不可欠ですし、その反応を助ける酵素は蛋白質でできていて、微量ミネラルの亜鉛やマグネシウムが補因子(酵素の一部)となっています。また、コラーゲンもタンパク質ですから、それらの栄養素が十分摂取され、機能して初めて骨が形成されるのです。ちなみに、リンは皮肉にも食品添加物から結構たくさん取られている方が多いため、現在欠乏することはあまりありません。

また、常時骨に一定の圧がかかることも良好な骨のリモデリングを促進するうえで非常に重要です。若い自転車競技の選手が自転車に乗る練習ばかりしていて足の骨にほとんど荷重がかからない状況が続いたら、毎日運動しているはずなのに骨粗しょう症になって骨折したというエピソードもあります。「地に足を着けて」運動することが重要という興味深いお話です。

つまり、骨量のミネラルが多くてもバランスが悪かったり、たんぱく質が不足したり、適切な運動を怠ると強い骨にはならないのです。

ところで骨量を増やす画期的な薬、ビスホスホネート製剤(BP製剤)を骨粗しょう症の治療の為に内服していらっしゃるお年寄りはとても多いのですが、その作用機序は、破骨細胞の働きを抑え骨量を増やすというものです。骨量を増やすという意味では画期的なお薬です。

しかし、前述した本来人体に備わっている骨代謝が抑制され、古い骨が排除されることなく残り、骨質としては悪化してしまう可能性があるという事をご存知でしょうか?いわば、ぼろ屋の廃材を残したまま新しい材料で修繕し、材料がたくさんあるから丈夫と言っているようなものと言えば、叱られるかもしれませんが、私はそう思っています。

現に非常にまれではありますが、BP製剤内服中に抜歯などの処置をして、顎骨壊死という悲惨な副作用が起こる例が報告されているのです。非常にまれだから骨折するよりましと思われるかもしれませんが、ひとたび顎骨壊死になると有効な治療法はなく、内服を中止しても進行する事すらあります。また、長期投与で骨折のリスクが増加するという報告もあるんですよ。

私の経験ですが、永年BP製剤を飲んでいて骨密度が横ばいだった元気な90歳の患者さんの血清亜鉛濃度が非常に低値だったため、タンパク質をしっかり摂る食事指導と共に亜鉛のサプリメントを投与したところ、劇的に骨密度が上昇したという例もあります。

もちろん、BP製剤を使用することが医療界のガイドラインでは推奨されていますから、100%否定するわけにいきませんが、せめて食事、運動で骨を強くする努力をしてから、服薬を検討してはいかがでしょうか?