食事がつくる発達障害①の3  代謝障害と遺伝子トラブル

「代謝」という言葉はよく耳にすると思いますが、正しい意味は?と改めて聞かれると、ん?と思う方多いのではないでしょうか?

「代謝」には、酵素が必須 酵素にはビタミン・ミネラルが必須

生物学的には、自分自身が生きて行くことと、子孫を残すことが生物の最も大事な機能ですが、「代謝」とは、「生体が生命の維持と成長、生殖を可能にするために行っている生化学反応」です。つまりAという物質をB、C、Dと変化させる事。

それには必ず酵素が必要で、多くの酵素はタンパク質とミネラルでできています。酵素が活性化して働けるようになるため、補酵素のビタミンが必要です。

そして、栄養障害とは、必要な栄養素が欠乏することによる代謝のトラブルの事。

つまり、「栄養素」は、体が必要とする「代謝」を正しく行うための「材料」なんですね。

だから、栄養が不足すると必要な代謝のあちこちにトラブルを引き起こし、様々な病気が起こりやすくなるんです。

栄養不足以外に代謝の障害の原因になる要因は何でしょう?大きく分けて、

 ◎遺伝的要因:遺伝子トラブル と 

 ◎後天的要因:環境、毒物、精神ストレス、炎症など  があります。

そもそも遺伝子は、代謝を担う酵素の設計図、料理で言うと「レシピ」です。

遺比較的多くみられる遺伝子トラブルの事を遺伝子多型と言いますが、その中でも

   遺伝子配列の1カ所だけが正常と異なるものをSNPs(スニップス)といいます

   遺伝子多型があると、酵素の働きは正常の3~7割に落ちます。

そしてMTHFRという葉酸代謝酵素の遺伝子のSNPsが発達障害の一因となることがわかっています

メチレーション:重要な働きをする代謝の歯車

やっぱり、発達障害って、遺伝だからどうしようもないじゃないか、と思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。だって、MTHFR遺伝子のSNIPsの保有率は、日本人では70%もあるんですから。

それを説明するのが「エピジェネティクス」という概念です。

•遺伝子が発現するにはそれぞれにスイッチがあり、遺伝子そのものは変わらなくても、遺伝子が働くスイッチの ON、OFFの機能があり、それによって影響の現れ方が変わる、という考え方です。

遺伝子は料理で言うと「レシピ」ですから、レシピが少々違っても、調味料を少し工夫したり、他の材料で代用したり、食卓のインテリアを変えたりすると、それはそれで美味しい料理になる、って事。逆に、レシピは完璧でも材料が不足したり、劣悪な環境で食べると料理はおいしくありません。

これを発達障害に当てはめると、生まれつきの問題があっても、日常生活でできる適切な対策をしていれば、発達障害で見られる多くの症状の改善は可能、遺伝子に異常がなくても栄養や睡眠が不足していたり、生活環境が悪いといわゆる発達障害もどきになるよ、って事ですね。

代謝障害と遺伝子トラブルのお話でした。

食事がつくる発達障害①の2 神経伝達物質と脳機能

発達障害は一般的には脳の機能の障害ととらえられています。

現に、前回ご紹介した成田奈緒子先生の著書にも、脳機能の発達の順序が違うと、発達障害もどきの症状が起こると記されていました。

では、脳の機能が正常とは、いったいどんな状態でしょう?

正常な脳機能

脳は、細長い神経細胞がぎっしり詰まってネットワークを作り、情報を伝達している場所です。情報の伝達は、上流の神経と下流の神経のつなぎ目(シナプス)において、神経伝達物質を受け渡しする事で行われています。

必要な情報が、必要な時に適切に伝達される、つまり脳の機能が正常に作動するには、神経伝達物質がバランスよく作られることが重要で、

神経伝達物質を作るには、必要な栄養素が充足していなければならないのです。

逆に、脳の機能が低下しているとは?

脳機能の低下

神経伝達物質の・材料が不足している状態と・材料を作るために必要な酵素のDNAにトラブルがある状態、です。

さて、どちらの影響が大きいでしょう?

もちろん栄養不足にも程度があるし、遺伝子トラブルにも程度がありますから、どちらとも言えませんが、ただ、言えることは、変えることができない遺伝子トラブルがあっても、環境や食事で症状を変えることができる、という事です。

実は脳は、栄養の影響を最も大きく受ける臓器なんです!

脳内には、抑制系、調節系、興奮系の3つの系列の伝達物質があります。

それぞれの系列のスタートとなるのはアミノ酸(タンパク質が消化されたもの)で、酵素が働いて順々に代謝され、目的の物質を作っているわけです。酵素の主原料もタンパク質ですが、その化学構造の中身はミネラルを含むことが多く、また、酵素が働くためには補酵素であるビタミンも不可欠です。

例えば、調節系の神経伝達物質、別名幸せホルモンと言われている「セロトニン」の代謝を見てみましょう。

調節系伝達物質の代謝

セロトニンが不足すると、不安やこだわりが強い イライラしやすい、怖がり、パニック睡眠が上手く摂れない、などうつのような症状が現れます。実際、最もポピュラーな抗うつ薬の一つはセロトニンの量を増やすように設計されています。

右図のようにセロトニンを作るにはまずスタートとなるトリプトファンというアミノ酸に、鉄、リチウム、マグネシウムなどのミネラル、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6というビタミンB群などが不可欠です。何かが欠けると、この代謝の流れがスムーズにいかず、必要なセロトニンを作れず、セロトニンから代謝されてできるはずの、別名眠りのホルモン「メラトニン」も作られなくなるのです。

神経伝達物質のアンバランス

神経伝達物質のアンバランスは、右のような症状を起こしますが、これらの症状が発達障害で見られる精神症状と一致するところが大きいので、

というわけで、一般的には発達障害は脳の障害ととらえられています。

食事がつくる発達障害①の1 「生活リズム」 

去る9月21日、毎月恒例の「ココロとからだセミナー」を開催しました。

テーマは「食事がつくる発達障害」第1話 タンパクとビタミン・ミネラルのお話、だったのですが、栄養の前に知っておきたいことがありました。

それは、最近読んだ、文教大学教授 成田奈緒子先生の「『発達障害』と間違われる子供たち」成田先生は小児科医であり、ずい分以前より「早寝 早起き 朝ごはん」という非常に語呂の良いスローガンを掲げて子供の良好な精神発達を目指す、子供の脳科学の専門家です。

この本には、子供の脳の発達には順序があって、正しい順番に発達させなければならないと書かれています。

体の脳(土台)がしっかりしていると安定
体の脳が育っていないとバランスを崩しやすい

①からだの脳:呼吸・体温調節など、生きて行くために不可欠な脳

②おりこうさん脳:言語・計算・スポーツ等に必要な脳

③心の脳:想像力を働かせる、判断する、など人らしい脳力をつかさどる脳

これがこの順番に育たなければ、何かでバランスを崩すと「発達障害もどき」になる、と言うのです。

そして、からだの脳は、「寝る」「起きる」「食べる」など基本的な生活リズムを身につけることで育つのだそう。そう、「早寝 早起き 朝ごはん」です。

子育ての目標は、立派な原始人を作ること!!!と断言しています。

そして、発達障害かも・・・と言われたら、あるいは思ったら、すべき事

病院に行く前に、生活リズムが整っているかチェック

  ちゃんと食べているか、ちゃんと寝ているか

まずは朝早く起きる➡子供の興味を引くようなもので起こす

勉強を頑張らせ過ぎない(睡眠時間を削らない)

それを実行しても、なお改善しなければ初めて、病院へ・・・と書かれていました。

「発達障害もどき」とは、発達障害が、子供の行動のチェックリストなどで比較的安易に診断され、投薬されたりしてしまうことがある現状において、まず生活リズムが大事と訴える成田先生の苦肉の「造語」なのです。

これ、食事内容以前の最も大切な事ですね。それを無視して食事の話をするわけにはいかん、と思い、セミナーの初めの時間を結構割いて、成田先生の本の内容をご紹介しました。

そしてさらに、私は「ちゃんと食べる」に、「何をどのように食べる?」を加えると、「発達障害もどき」がもっと減るはず!と思っているのです。

本題は、次回から・・・・

ポリファーマシー②

ポリファーマシーに対して、患者さんができること、が今回のテーマです。

患者さんご本人ができること、それは・・・

①自分の内服薬を把握すること。

  何のために飲んでる?どんな作用?

主治医に「薬を少なくしたい」という意志を常に伝えること。

  忙しい医師のほとんどは、患者さんの訴えに対し、薬を処方してはくれても、薬を減らしてはくれまん。でも、患者さんが希望すれば考えてくれます。

③解毒を促す栄養を摂ること!

  解毒の回路を回す酵素の主成分タンパク質、ミネラル、ビタミン

  そして回路をエネルギーとなる炭水化物、脂質

  つまり、「5大栄養素」が、解毒のために不可欠です。

そして、下記の事を「知る」事です。

④「胃薬」は胃を丈夫にする薬ではない!

  昔の胃薬は胃の消化機能を補うもの、胃の粘膜を保護するもの、でした。

  現在よく使用されている胃薬の中には、胃酸をおさえて消化機能を落とすものが少なかずあります。

⑤医師も知らない思いもよらない副作用が実はある!

  長期使用することによって起こる栄養障害は、ほとんど副作用と認識されないと言っても過言ではありません。

ポリファーマシーは個人の不利益のみならず、不要な薬に大切な医療費(公費)を費やしてしまうことで、決して返すことのできない莫大な借金をして、将来の日本の国に大きな不利益を残しているのです。

ポリファーマシー① 

・ポリファーマシーとは

・ポリファーマシーはなぜ起こる

「ポリファーマシー」は「複数(poly)」と「調剤(pharmacy)」をドッキングした、「のある多剤服用」を意味する言葉です。

 単純に「薬の数が多い」ということではなく、不適切な薬の処方により、有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題に繋がる状態を指します。

日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、薬物有害事象は処方薬の数に比例するとされ、 6種類を超えると発生頻度が大きく増加すると言われています。   ですが、あくまでも重要なのは数ではなく、処方内容が適正かどうかという点です。

では、ポリファーマシーが起こるのはなぜでしょうか?原因を考えてみました。

①高齢社会:有害事象が出やすく、複数の医療機関にかかる人が多い。

 各診療科から複数の薬が処方され、合わせるとすごい数に・・・って珍しくありません。 安く薬が手に入ってしまう国民皆保険制度を基盤とする日本の医療の弊害ともいえます。

おまけに高齢者は胃腸機能が低下していて、タンパク質(アルブミン)が少ないために、様々な副作用が出やすく、肝腎機能が低下していて、薬(毒)を排泄する能力も低下しています。

②新薬の多さと複雑さ、効果の強さ。

 最近の薬は効果が強く、言ってしまえば、根本原因である生活習慣を改善しないでも力技で症状を抑えこむことができるんです。根本原因である生活習慣を変えなければ、当然他の病気も起こりやすくなります。そうすればまた薬が増える・・・

③問診や薬剤歴のチェックには時間がかかり、保険点数がないので見過ごしがち。

 残念ながら、大勢の患者さんを短時間で診察することを求められる忙しい医師は、患者さんの内服中の薬剤すべてを把握することが困難です。自分が処方した薬ですら、いつ何の目的で投与し始めたかいちいち検討していない事もめずらしくありません。ましてや他の医療機関で内服している薬や薬同士の相互作用に気を配っていては経営が成り立ちませんし、待ち時間が長くなった次の患者さんに怒られてしまうことも・・・・。前回の処方をそのまま継続、または新しい訴えに対して薬を追加するのが関の山というのが現状でしょう。

医師が忙しすぎるのも、ちょっとしたことで医療機関に安くかかれる国民皆保険制度の弊害かもしれません。

④気づきにくい有害事象の症状も多い。

 例えば、当たり前のように長期処方されている一部の胃薬やコレステロールの薬には栄養障害の原因になるものがあります。また、多くの薬は、キレーションと言ってミネラルをくっつけて排出させてしまう作用を持っています。さらに、薬剤は最終的に肝臓でげぞくされ、排泄されますが、その「解毒」には多くの栄養素が必要です。つまり、思わぬ薬剤でタンパク質やミネラルの不足を招くのです。しかし、栄養障害による症状はすぐには現れず、年単位の時間で徐々に起こるうえ、あらゆる臓器で起こる症状は多岐にわたり、副作用と認識するにはかなりの栄養学の知識が必要です。そして、栄養学を知っている医師は稀です。

処方カスケード

⑤処方カスケード。

 ③の項で触れたように、医師の習性として、患者さんが何らかの症状を訴えると、その症状に対してまず薬を処方する、という発想になります。例えば、薬の副作用で頭痛が起こっていたとしても、副作用を考え原因薬がないか考える前にまずは鎮痛薬を処方するのが残念ながら一般的です。そしてまた、鎮痛薬で胃が痛くなったら胃薬を処方する、といった具合、これが処方カスケード。カスケードとは「小さな連続する滝」という意味。一つ薬を処方したことがきっかけで流れるようにどんどん薬が増えていくイメージです。

もちろん、医師や薬剤師が薬の適正な使い方をしてくれるべきなんですが、それは、今のシステムの中ではなかなかに困難な事です。

では、患者さんはどうしようもないの?いえいえ、そんなことはありません。患者さんができることがあります。それは次回に・・・

父が天国に・・・

去る8月27日、満中陰の法要、父は天国に旅立った。

その10日あまり前、お盆休みに帰省したが、折しも台風7号が実家和歌山の紀伊半島を直撃するコースで襲ってきつつあった。一人になって不安がる母のために、台風襲来前に実家に向かい、母と台風の通り過ぎる時間を一緒に過ごした。

当日、雨の中和歌山入りする私を母が心配したので、車中で、阪神淡路大震災を思い出していた。コースや通過時間があらかじめわかっている台風に向かうより、余震がいつ来るかわからない大地震後の現地に向かう方がよほど怖いではないか。

1995年に私が住んでいた神戸を襲った大震災。その時2歳になったばかりの長女、4ヶ月になったばかりの次女と夫の私たち家族は、震度7をたたき出した神戸市中央区に住んでいた。幸い家屋の倒壊には見舞われなかったが、家具がぐちゃぐちゃになった部屋をどうにか片づけ、水もガスも止まってしまった自宅マンションで二晩過ごした。すぐ近所の民家で何カ所か火事が起こったのを目にして、もしここに火が来てしまったら、二人の娘を守ることができるだろうか?給水の行列のどうやって並ぶのだろう?という不安に駆られ、神戸市北区で大きな被害を免れた大学時代の親友宅に一家で転がり込んだ。

それを知った両親(今の自分の年齢くらいだった)は、高速道路が寸断し、いつ余震が起こるかもしれない中、危険を顧みずに、走ったこともない山道をたどりたどり、和歌山から食料をもって迎えに来てくれた。そして、夫が一人で住めるよう、もどったマンションを掃除し、トイレタンクに水を満たして、私と幼い娘たちを実家に連れ帰ってくれたのだ。倒れた阪神高速の撤去作業中の国道43号線をくぐり抜けて、車の比較的少ない夜中に・・・

思えば、子供のころ、習字も計算も父に教わった。毎月習字教室で清書して「書の友」に出品する作品にはいつも父からダメ出しがあり、父がOKと言ってくれるまで書き直した。わからない算数の宿題は父に聞くと、(中学受験でいう「方陣算」とか「つるかめ算」などのテクニックを知らない父は)まずは方程式を使って答えを出し、その後小学生の私にもわかる教え方を考えて丁寧に教えてくれた。そんな宿題が出た日には、必ず友達の何人かから「教えて」と電話がかかり、父に教わったことを電話でわかるように一生懸命教えてあげた。当時はそれがちょっと面倒に思ったものだが、算数の問題を深く理解する復習だった。おそらく私は良くも悪くも父に認められたくて頑張ったんだなあ。

少し成長すると、巌とした父の言葉や考えに反発もした。そもそも、高2のころ、家庭科が好きで、家政科の大学に進学するか、学校の先生になるため教育学部に進学するか迷っていた私に、「百姓と先生しか見たことがないから、それしか思いつかんのや。お前は医学部に行け。」と言って強引に医学の道に進ませたのは他ならぬ父である。その時は、強い反感を抱いて衝突し、父を恨んだものだが、渡辺淳一の「花埋み」を「これおもしろいから読んでみ」と言われ、うっかり読んでしまって、日本初の女性医師に興味を抱いてしまい、気が付いたら医学部を目指していた。

時には体罰も厭わない、厳しくて近寄りがたい父だったが、大学進学後、7回もの引っ越しのたびに必ずトラックで駆け付け、力仕事を請け負ってくれ、晩年には、筋力の衰えた身体で懸命に野菜や果物を作って私たちに収穫を楽しませてくれた。

決してやさしい言葉をかけたりニコニコ笑顔を振りまく人ではなかったが、それが父の愛情表現だったのだ。

四十九日が済んで、あの世で数少ない気の合う友人に会えただろうか?なかなかに知的でユーモアがあるが、偏屈でもある父である。間を取り持つ母のいないあの世で上手くやっているだろうか?

父の大腿骨骨折の顛末

今年6月紀伊半島を線状降水帯が通った日、父が転んで大腿骨骨折、入院となった。

3年前の冬に脳梗塞で入院し、外科的処置はかえって危険、打つ手なしとして暖かくなるのを待って退院した父である。脳梗塞の退院後、私は1週間実家に滞在して実家の調味料や油を全て見直し、朝食をパンからご飯に変更、牛乳を豆乳にかえ、野菜とタンパク質をしっかり摂ることを母に伝授した。そして、血液の凝固と炎症を抑制するオメガ3オイル、血管内脱水を防ぐ血中タンパクをアップするためアミノ酸や消化酵素、エネルギー産生に不可欠なビタミン・ミネラルなど、父の病状に合わせサプリメントを処方した。

長年二人で守ってきた畑でみかんや野菜を作りながら、いつまでも父と暮らしたいと強く願う母は、私の指導を一生懸命実行し、父のために美味しい食事を用意して、父の世話をすることを生き甲斐にした。(たまには私に内緒で禁断の好物を適度にこっそり食べていたのも、食養生を楽しく長続きさせる秘訣だったかもしれない。)

そして、父は、積極的治療を断念するという英断を下してくださった治療経験豊富な脳外科の先生に、「自分が今までやってきたこと(血管内手術)はいったい何だったんだろう」と言わしめるほどの回復を見せ、脱水によって血栓ができる危険を伴う暑い夏と、血管収縮によって血栓が詰まりやすい寒い冬を2度無事にこすことができた。

一時は認知機能が落ち、字もまっすぐに書くことができなかった父が、達筆でまっすぐの字が書けるようになり、毎日きれいに血圧の記録をつけていた。雨の日や夜は、元々好きだった本を山積みにしながら書斎にこもり、晴れた日には畑に出かけて私たち子どもや孫たちに収穫の喜びを味わわせるためにせっせと野菜を作ってくれていた。食欲は旺盛で、4月には私と娘が作ったお花見弁当を、お花見を楽しみながら美味しい美味しいと言ってペロッと平らげた。徐々に筋力は落ちてはいたものの、元気に暮らし、地元出身の鎌倉時代の高層、明恵上人ゆかりの高山寺(京都)へ行くツアーを楽しみにしていた。

そんな6月のある日、転倒して骨折。高齢者の大腿骨折は寝たきりの原因、あるいは命とりの大事件である。大雨でずぶぬれになった父は某市民病院に運ばれた。金属のインプラントで固定していた大腿骨の古傷の骨折が判明した。

脳梗塞再発予防の抗凝固剤(いわゆる血液サラサラの薬)が中止され、手術は2週間後と決まった。5月中旬にコロナウイルス感染症はインフルエンザと同等の感染症5類に格下げとなって約1か月経っていたが、病院はまだ厳戒態勢。病院入り口で手の消毒と検温、訪問者は住所と名前を記帳させられ、面会は1日に家族2人、15分まで、食べ物の持ち込みは禁止。おまけに飲んでいたサプリメントはすべて中止・・・

当初は、「もとより元気になって退院する。」と言っていた父であったが、手術を待つ間に食欲が落ち、だんだんやせ衰え、徐々に生気を失っていった。1週間もしないうちに、実の娘と、弟の奥さんの区別すらつかなくなり、提供された食事を口に入れても噛むこともできなくなった。ベッドサイドの看護師さんの食事記録には「半量摂取」と書かれていたが、到底半分も飲み込める状態にはみえない。見るに見かねて、たまたま院長と知り合いだった弟が頼み込んで何とか電解質輸液をしてもらった。

脱水状態が改善されると、再び前日とは見違えるように元気になり、こっそり持参した好物のバナナ、トマト、豆乳、甘酒を「美味しい」と言いながらパクパク食べ、「こんな生きのいい食事は病院にはないんや」「食べるという事はエネルギーのいることなんや。エネルギーがなくなったら食べることもできなくなる。」と言った。つまり食事をする元気も出ない、娘を判別することもできないほどの脱水状態だったのだ。それほど食事がとれていなかったのだ。その日、「頑張って元気になってな。」と父とハイタッチしたのが、父との最後の会話になった。

この極度の脱水状態(点滴の直前)の血液検査データは、血液濃縮が著明なはずにも関わらず、低タンパクと貧血が明らかだった。(血液が濃縮すると、血清タンパクや赤血球の濃度が相対的に上がり、実際より高い数値が出る)

術前の栄養状態の改善が必須(急務)と考えた私は、ゼリータイプのアミノ酸と腸機能を上げるドリンクを購入し、看護師さんの目を盗んで与えることを母と妹とともに画策したが、禁止されていることを限られた時間内にすることは思った以上に難しく、なかなか実行できないまま手術の日を迎えた。

術後、手術は非常に上手くいった、と整形外科の主治医はおっしゃり、「歩けるようになりますよ。」と言って母を喜ばせたが、父が麻酔から覚めることはなく、意識が戻らぬまま一晩過ごした挙句に「術後脳梗塞」と診断された。MRIの所見は絶望的で、広範囲に梗塞が広がり、そのまま危篤状態となっている。

脳梗塞が判明したとたん、術前とは打って変わって、入れ代わり立ち代わり担当医・看護師が手厚い処置をして下さるようになった。酸素マスクが装着され、輸血され、経鼻栄養が導入された。しかし、どんなに手厚い処置を施されても、父の脳のダメージは戻ることはない。

けがや手術という侵襲は、出血と炎症により通常の2倍近くものタンパクはじめ栄養素が必要になる。予備力がなく消化機能も衰えた高齢者の場合、食事以外に高カロリー、高タンパクの栄養ドリンクなどで補うくらい、時には術前に胃ろうからチューブで栄養補給するくらい、特に厳重な栄養管理が必要なのだ。そうしなければ、せっかく手術をして骨を修復しても、それを動かす筋肉がやせ衰えて、立つことができなくなるのだ。特に父の場合、低タンパクは血管内脱水を来し、血栓形成のリスクが増すため、十分なタンパク摂取は必須だった。

それなのに、入院しているにも関わらず栄養失調で衰弱したまま手術の日を迎え、病院スタッフの誰もが、それに気づかず、疑問も持たない。それが脳梗塞のリスクを高めたとは誰も思っていない「高齢者の大腿骨折は命取りになる。」のは常識と考えられているし、「抗凝固剤を中止したのだから、脳梗塞のリスクが上がるのは致し方ない。」からだ。みんな、日本の医療の常識の中で一生懸命仕事をしている。「栄養療法」を知らなかった頃の自分がそうであったように。

これはたまたま父が入院した病院だけの問題ではない。今の日本の医療の現状なのだ。せっかく高い技術できれいな手術をしても、筋力が衰えて立てなくなったり、麻痺で動かなくなったり、身体が死んでしまっては意味がない。「高齢者の骨折が命取りになる。」というのは、「骨折」そのものが命取りになるのではなく、骨折の前後の全身管理、特に栄養管理が全身状態を損なう事が大きな要因と痛感した。

高齢者の血液データは読みづらいというが、読みづらいとわかっているデータになぜ頼るのか。本人の言動や食事、元気度をみる視点が、「食べる」という最も重要な事を大切にする視点があれば、もっと救える命があるのではないか?何も難しいことではない。家族でも素人でも分かることなのだ、と声を大にして言いたかった。

父の場合は、両頸動脈梗塞の既往があり、ハイリスクだったため、どんなに厳重な管理をしても上手くいかなかったかもしれないが、低アルブミンによる脱水がなければ梗塞再発のリスクは減らせたかもしれない。せめて十分に面会させてもらえて、こっそりとでも十分な栄養補給が術前にできていれば、こんなにも悔いは残らなかったと思う。

弱毒となったコロナウイルスの感染を回避するという名目で漫然と行われていた面会制限、面会を制限し、食べ物の持ち込み不可と言い渡しておきながら手足が不自由となり、半分寝たまま不自由な手足で食事できない老人の食事が進まない事を軽視し、どれほど大きな意味があるかも知らないサプリメントを一方的に中止させる病院の体制。通常処方される保険薬ならば、さして意味のない薬が漫然と投与されていても入院後も機械的に継続されるのに。。。

今この時も、病院のスタッフたちは、気道確保に細心の注意を払い、おそらく呼吸中枢まで脳梗塞が進んだ、助かる見込みのない父の命が一分一秒でも長らえるよう、日夜一生懸命働いてくれている。

その矛盾に、早く日本の医療が、気づいてほしい、と願ってやまない。

発達障害にクスリを使う前に・・・

上図のように、発達障害は症状によって分類されていますが、発達障害の名称、分類にはあやふやなところがあり、症状が混在することも多いことから、近年では自閉症スペクトラムという呼び方がなされています。「スペクトラム」とは、虹のように境界がくっきりではないものを並べたもの、というような意味です。

一方で、発達障害では、精神症状つまり脳の機能の問題以外の「身体症状」として

•疲れやすい、同じ姿勢を保つことが難しい、ごろごろする •偏食が多い、音に敏感 •おもらし •チック(意志とは無関係に体の一部の動きや発声を繰り返す) •頭痛、筋肉痛、腹痛 •吐き気、便秘、下痢、少食、過食などの消化器症状 •蕁麻疹、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎などアレルギー症状 •中耳炎、扁桃炎などの慢性感染症(免疫力の低下) •筋力不足、体力不足

などの症状がよく見られる事がよく知られています。これは、脳の機能障害だけでは説明のつかない事実です。栄養療法の世界では、発達障害の本質は、代謝障害と考えられています。

「代謝」は「栄養」の影響を大きく受けます。

約2年前、発達障害と言われている当時9歳の女の子の診察をしました。ちょうど私が分子栄養学を学び始めて栄養素のチカラを知って興味を持ち始めたころで、足の爪がもろくて白く濁っているという主訴でした。なんだか元気のない爪。「お肉とお魚が嫌いで、全く食べなかったらしく、たんぱく、ミネラルの不足が推察されました。診察中女の子はずっと下を向いて黙っていましたが、「血液検査」という言葉に敏感に反応して急におびえて泣き出してしまいました。もちろん採血はしませんでしたが、これが女の子との初めての出会いでした。

その後数回私の皮膚科を訪れてくれました。実は女の子はあるショックな出来事があって学校に行けなくなっていたことがわかりました。そんな中、「先生に会うのは楽しみ!!」と言ってきてくれていたようでした。食事の大切さをお話しているうちに少しずつお肉やお魚が食べられるようになり、来るたびごとに少しずつ明るくなって、ニコニコ大きな声で話すようになってくれたのです。「学校に行くのも給食を食べるのも楽しい!!」って言ってくれるようにもなりました。

さらに出来るだけ頑張ってグルテン・カゼイン・シュガー・添加物フリーの食事を心がけて頂くよう指示したところ、便秘が改善して、「体が軽くなった」とのこと。

薬はまったく使用していませんが、こんなに改善することが珍しくはないのです。もちろん、そう一筋縄ではいかず、その後、学校で何かある度に症状が一進一退したことも事実ではありますが・・・

現在の医療では、発達障害は根本的には治らず、有効な治療はないと考えられています。カウンセリングや心理療法などが試みられていますが、治療は難しく改善することは多くはありません。症状が軽ければ「個性」として認めてあげるという方針です。それで、本人が幸せならばそれも良しでしょう。しかし、症状が重ければ、家族は大変、本人もつらく、普通に仕事をして家庭をもつことも、生きて行くことも困難になります。そして周囲の人に迷惑のかかる言動を軽減するため、小さな子供に向精神薬が投与される例も少なくないのです。

一方、発達障害と言われるほぼすべての子供は腸が悪いです。明らかに便秘や下痢の症状のある子も多いですが、自覚症状がなくても腸内環境が悪いのです。腸は、迷走神経という神経で直接脳と繋がっていると考えられていますが、ビタミンの産生、有害物質の吸収、セロトニンなどの幸せホルモンと呼ばれる物質をも産生し、間接的にも脳の機能、エネルギー代謝に大きな影響を与えています。

腸の環境は食事に大きな影響を受けます。私の患者さんの例のように、そう単純な話ではないですが、食事が発達障害の症状に大きな影響を与えるのです。裏を返せば、食事改善に取り組めば、治療が困難とされている発達障害が改善する可能性があるのです。副作用もなく、むしろ他の体の機能もよくする食事で、です。実行しない手はないと思いませんか?

食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲むわ

とは、残念ながら日常診療でよく聞く言葉でした。今はそう思われる患者さんは私の栄養療法外来には来てくれないので、めっきり聞かなくなりましたが、決して世の中の患者さんの考えが大きく変わっているわけではないはずです。

ですが、薬は、その症状が何故おこっているのかとは無関係に、あくまでも困っている症状を消してくれるだけであって、決して根本的に治してくれるだけではないんですよ。それでも薬を選ぶ理由は・・・

①栄養がいかに大切かの知識がない

②薬で「おさえる」のと「根本的に治る」のは違うという事を十分に理解していない

③良い食材を購入するより薬の方が安価である

④料理には手間と時間がかかる

⑤安くて保存のきく加工食品が手に入りやすい

①②は医療の専門家が情報提供して、お導きする必要がありますが、残念ながら医療の世界でも、このような考えは浸透していません。

③は、そう、身体に良い食材は、たいてい通常の商品よりお高いのです。一方、日本は、国民皆保険制度が非常に充実しているため、投薬に対する患者さんのご負担が極端に少ない国です。これは皮肉なことに栄養療法をするにあたってネックになることなんですが、「食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲んだ方がまし」となるんですよね~でも、待ってください。その、よく効くお薬、ずーっと飲んでいて、ホントに害がないですか?それに関してはまた回を改めて詳しく述べたいと思います。

④毎日の食卓をあずかる主婦なら、一度は「人間毎日ご飯を食べなくて済んだらなあ」「料理をしてくれる奥さんが欲しい~」と思ったことがあると思います。(ないかな?私は何回もあります。)そこは栄養の専門家たちが、いかに栄養をバランスよく摂れる簡単な献立をたてるか、工夫を凝らしたレシピを公開していますね。

⑤現在の栄養の問題すなわち「新型栄養失調」を作り出している最大の原因は・・・手に取ったらほぼすぐに、あるいは超簡単な調理で食べることができる加工食品が、どこのスーパーでも所狭しと並んでいくらでも手に入りやすい環境にいることです。

数ある食品関係の大手企業は、いかにたくさん売って利益を上げるか、を最優先にしています(むしろそれしか考えてないと言いたい)し、日本では欧米やアジア各国がすでに規制・禁止している有害物質でも規制がゆるゆるで、国は国民の健康より企業の利益を優先する政策しか作ってくれないとしか思えません。

でも、です!企業は、みんなが買わなければ、作りませんし、みんなが選ぶものなら作ります。もう、これは、各自が自分で自分の身を守るべく知識を得て賢い消費者になるしかないんです。ホントに切実にそう思います。

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感想(28件)
「買い物は投票なんだ」という絵本、ぜひ読んでみてください!

私はあきらめたくないので、こうして、いったい何人の方が読んでくれるかわからないブログを書き、数名にも満たない参加者でも、何時間もかけてスライドを作成して毎月セミナーを開催しています。

パワースポットを訪ねて

松山市の隣東温市の知る人ぞ知る秘境、滑川渓谷。さんざん車でくねくねと山を登っていくと、軒下におそらくお風呂を沸かすためであろう薪が積まれた民家がまばらに・・・もっと狭い山道を恐る恐る上っていくと駐車場。そして、駐車場からさらに歩いて30分ほど山を登る。

このあたりではもうスマホの電波も弱くなり、むしろ周囲の木々のパワーを感じる。これぞ天然の電磁波フリースペース。ちょろちょろと岩肌を這う清流(滑川の源流らしい)が流れる斜面を登っていくと、肩にかけたリュックが(多分)電磁波が抜けて筋力がアップするせいで軽くなるの、ホントに。体から毒素が抜けるような、ちょっとビックリな体験。

気の遠くなるような年月の間の地殻変動と自然の植物の成長が作り上げたものである事を、断層や地面に露出したり、岩肌からぶら下がっている「木々の根っこ」が物語る。

最後の犬は娘の愛犬モコ 子どもは娘の長男 なぜかスマホを・・・

そして、行きつく先にはしぶきを上げて落ちる滝。滝口の周囲を取り囲む木々が私たちを見下ろすかのように茂る。頭上では風が作るゴーっという音が鳴る。まさに龍の声か。この場所は「龍の腹」と呼ばれている。「便利」から離れて大自然に抱かれたとき、生物の体は最大限に能力を発揮するのだろうと、本当に素直に納得できた。

昔からパワースポットと言われる場所の多くで得られる体感は、電磁波の少ないエリアで自身の体の機能が発揮しやすくなる時に感じる感覚なのかもしれない 。

そう言いながら、こうして「ブログ」などという、自然とかけ離れたものを書いているのが、矛盾なんだよね〜

いやホント。

栄養療法が誕生した数十年前は、栄養を整えるだけで多くの人が改善したと思われる。今は、栄養療法を駆使しても改善しない人が増えていると感じる。そしてその主な背景は「心理(ストレス)」と私は考えていた。 それも間違いではない。

しかし、数十年前と今の電磁波の量が桁違いなんで、栄養療法の限界を作っている主因の一つに電磁波があるのか、と腑に落ちた旅だった。