ビタミンC① 歴史

ビタミンCといえば「美白!」と多くの方が思っているのではないでしょうか?

確かに代表的な抗酸化物質であり、十分に投与すれば抗酸化作用が皮膚にいきわたり、美白効果が得られます。でも、ビタミンCにはもっともっとたくさんの効能があるのですよ。

【ビタミンCの歴史】

壊血病


15~17世紀の大航海時代に、長い航海中乗組員の多くが病気になり死亡する恐ろしい病気がありました。歯肉や粘膜、皮膚から出血し、さらに下血や血尿も見られ、ついで免疫力も減退し筋力も低下し、ついには死に至ります。壊血病です。
当時は原因不明で治療法なく、「大航海の病」と言われていました。
1753年に、英国海軍の軍医ジェームズ・リンドは、壊血病に罹った水兵にさまざまな食事メニューを与えて比較実験を行いました。すると、新鮮な野菜や果物、とりわけオレンジやレモンなどの柑橘類を食すると著明な回復が認められることを突き止めました。

1768年から約3年間南太平洋の探検にあたったジェームズ・クック船長は、この結果をもとに大量の酢漬けキャベツ(ザワークラウト)を積み込み、野菜や果物を積極的に摂取させるようにしたところ、壊血病による死者が出ることのない長期の航海に成功しました。

加熱した濃縮ジュースでは壊血病を完全に回避することはできませんでした。抗壊血病因子(後にビタミンC)は熱に弱いという事が知られたのは後の事です。

【ビタミンCが作れる動物と作れない動物】

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ところで、地球上の動物の多くは体内でブドウ糖からビタミンCを生成することができます。しかし、人間、モルモット、一部の霊長類ではビタミンCを生成する遺伝子の一部が変異して作れなくなっています。

栄養素を自ら作るにはエネルギーが必要なので、脳にエネルギーの多くを奪われる人間は、果物などビタミンCが豊富な環境下で暮らすうちビタミンCを作る機能を放棄したとも言われています。

ビタミンCを生成できる動物は、感染症などの病気になった時、けがをしたときにはビタミンCの産生能を高め、平常時の何十倍、何百倍のビタミンCを産生します。

という事は、我々人間は、常にビタミンCを摂り続ける必要があるだけではなく、風邪や病気の時には普段の何倍ものビタミンCを意識して摂らなければならないってことですね。

余談ですが、現在でも壊血病で病院に来られる方がまれにおられますが、その中に、毎日卵かけご飯だけを食べていたという報告を聴いたことがあります。卵は完全食品だと信じてそうされていたようですが、鶏は自分でビタミンCを作れるので、ヒナが自分で作れて摂取する必要のないビタミンCが卵の中には用意されていないのでしょうね。モルモットもビタミンCを作れない動物ですが、もしモルモットに卵があったら(哺乳類だからないですけど)モルモット卵なら完全栄養食品になるかなあ・・・?

次回は、「ビタミンCの驚くべき働き」を紹介したいと思います。

栄養と発達障害

発達障害と診断された10歳の女の子との出会いです。

総合病院の皮膚科勤務医だった私のところに、「足の爪が白く弱くなって欠ける」という主訴で10歳の女の子が来てくれました。優しそうなお母さんが心配げに症状を語ってくれ、足趾にカサカサがあったので、顕微鏡で調べると水虫菌が見つかりました。爪からは菌が検出しませんでしたが通常ならば水虫を疑い、お子さんなので(飲み薬ではなく)まずは塗り薬を塗ってみましょうと言うと思いますし、実際抗真菌剤の塗り薬を処方しました。

水虫はカビの菌が皮膚の表面に感染して起こる病気とされています。もちろんそれは正しい。でも、栄養療法を学び始めていた私は、栄養療法的には水虫は腸内のカビの菌(カンジダ)の増殖を反映しているのではないかと、ちょっと疑ったんです。

食事内容を問診しましたら、食が細く、肉も魚も嫌いであまり食べないとの事。

そこで、タンパク質、鉄、亜鉛の欠乏で爪が濁ったり弱くなる可能性もあると説明し、「血液検査をするとある程度の栄養状態がわかるのですが、子供さんだしそこまではしなくても・・・」と言おうとしたところ「血液検査」と聞いたとたんに、「いやだ!怖い」と激しく泣き出してしまいました。 10歳にしてはあまりに幼い反応にびっくりすると、お母さんが「担任の先生や友達との関係が上手く築けず、不登校になっている。」とおっしゃり、のちに発達障害と診断されているとお聞きしました。

食事指導として肉や魚、野菜を頑張って食べること、カツオやイワシなどの出しの粉をチョコチョコ摂るよう勧めたところ、なんと再診時、学校へ行けるようになり、給食が完食できるようになった!と。しかも、ニコニコしながら「学校が楽しい」と大きな声で自分で報告してくれたんです。

私の栄養療法クリニック開業を機に栄養療法を希望され、 小麦、乳製品、砂糖、食品添加物を極力除去➡1か月で便秘が著明に改善し、「体が軽くなった」と喜んでくれましたが、まだ栄養療法の1時間のカウンセリング中にはエネルギー不足でじっと座っていられない状態。

これはよくあることで、発達障害のお子さんは押しなべて腸が悪く、その結果栄養状態も悪く、エネルギー産生が不十分なため、すぐに感染症などの病気になったりしんどくて学校に行けなかったり、神経伝達物質の代謝のバランスが悪くて過度な不安を感じたりするんです。

そこを栄養と結び付けて説明してさしあげると、お母さんは「○○ちゃんの我慢が足りないのではないと知って安心しました。」と言われました。栄養素が精神状態やエネルギー(元気度)に影響するという事が科学的に分かると、対処法が具体的になって安心されるようです。

お母さんとのカウンセリング(傾聴や思考パターンへの介入)、メールのやりとり、食事指導などを繰り返しましたが、その後、担任の先生がクラスメイトに暴力を振るうのを見たショックでまた学校に行けなくなったり、調子が悪くて受診できなかったりを繰り返し、やっぱりそう単純にはいかないのかなあと思っていた矢先のこと。

初診から1年半、クリニックで本格的に栄養療法を始めて約半年後、お母さんからうれしいメールが届きました。

「娘が修学旅行に行け、週に1日から2日学校に続けて通えました。前向きになり、出来る事も増えていて、(修学旅行や皆と一緒に卒業アルバムの写真を撮る等の行事の後は疲れて1週間程休んでしまいますが、)担任の先生からは先日「こんなに出来る○○ちゃんは見たことがありません。」と言っていただきまして、私もとても驚き嬉しいです。」

私が皮膚科医としてのキャリアを離れ栄養療法を選んだ最大の目的「子供を元気にする」に光がさした瞬間でした。

子供の発達障害は根本的には治らないとされています。心理療法やカウンセリングを繰り返してもなかなか成果が得られず、抗うつ剤などのお薬が使用されることもあります。でも、食事で劇的に改善する例もあるんです。薬には副作用がつきものですが、食べ物にはほぼ副作用はありませんし、精神症状のみならずエネルギー産生能や免疫機能の向上も期待できます。

どうかどうか、栄養療法が「治療」ではなく当たり前の「習慣」として世の中に浸透しますように・・・・

お子様の発達障害でお悩みのお父さんお母さん、まずは私の尊敬する内山葉子先生の著書「発達障害にクスリはいらない」をお勧めします!

栄養と心(精神症状)

去る1月10日にNHKカルチャーで「イライラは性格じゃなく症状かも」というタイトルでセミナーをさせて頂きました。この講座、毎回一部の方からは「目からうろこ、とても分かりやすかった」と言っていただける半面、一部の方からは「難しくて一回では分からない」とのご指摘も頂いています。それまでの経歴(何を学んできたか、どんなお仕事をしてきたか)や自分に関係があるかどうかによって、モチベーションも理解度も様々な方へのセミナーはやはり難しいなと思います。せっかく受講料をお支払いいただいた方、たった一つのヒントでもセミナーから得て頂いた知識が日常生活に生かされて、今より少しでも多く健康に、幸せになっていただけることを心から願います。

今回のセミナーの内容。心、つまり精神症状と栄養素が関係あると言ったら驚かれますか?

精神症状は脳内の神経伝達物質の代謝のバランスが決めています。神経伝達物質には大きく分けて「興奮系」「抑制系」「調節系」の3種類があり、それぞれの経路で代謝(体内で物質を作り出す変化)、生成されています。材料はアミノ酸。そして、その代謝には酵素(これもタンパク質)、酵素を作るためのミネラル、酵素の働きを助けるビタミンが必要です。脳の場合主に鉄とビタミンB群が不可欠。詳細は下図の通りです。矢印は酵素により進む生化学反応。その酵素が働くためにビタミンやミネラルは不可欠という図です。

ミネラル、ビタミンがいかに大事か、欠乏しないために何に気をつけるべきか、は2021/6/14~6/20のブログ「新型栄養失調」をお読みいただけたら幸いです。そして、アミノ酸の原料タンパク質の摂り方に関しては、2022/1/24「タンパク質の消化できてますか?」をお読みくださいね。

実は、分子栄養学に基づく栄養療法を提唱、確立されたカナダの偉大な医師の一人、故エイブラハム・ホッファー博士は、元々が生理学者であり、精神科医でした。生理学を学んだ彼は、栄養素と精神の関連に興味を持って医学部に進みましたが、精神科医になって、精神病が客観的な生化学的異常ではなく、臨床症状だけで診断され、にもかかわらず劇薬が投与されることに疑問を感じたと言います。

そして彼は後に統合失調症に対するナイアシン(ビタミンB3)の大量投与が有効という発表をし、治療実績も上げるのですが、時期を同じくしてハロペリドールという向精神薬が発売され、彼の主張は全く顧みられないどころか、当時としてはとうてい受け入れられない画期的過ぎる学説に精神科学会から追放されるという不幸な転機をたどりました。

その後、彼はビクトリアの小さな町に小さなクリニックを開き、統合失調症の患者さんに対する栄養療法を実践して、多くの患者さんたちを改善させ、社会復帰させました。彼のモットーは「統合失調症の患者さんをTax payerにする」というものでした。精神症状を薬でただ抑えて社会の「迷惑」にならないようにおとなしくさせるのではなく、健常人と同様仕事が出来るように(税金を払えるように)するという事。

精神医学が発端となった栄養療法は今やすべての疾患の病態の理解や治療の基礎として徐々に知られるようになってきたのですが、ホッファーの時代ほどではないにしても、日本では西洋医学にはまだまだ取り入れられそうにもない現状です。

次回は私の患者さんが教えてくれた「栄養と心」のエピソードをご紹介したいと思います。

「がんでは死なないがん患者」

このタイトルは、藤田保健衛生大学教授(現 医療法人 尚徳会 ヨナハ総合病院院長)東口高志氏の著書(2016年発行)のタイトルである。

癌患者の多くが感染症でなくなっている。歩いて入院した人がなぜか退院時には歩けなくなっている。入院患者の3割は栄養不良。

ご存知ない方が見たらびっくりするような言葉が本のカバーや目次に次々と出てくる。

まず、癌患者さんに栄養を与えると癌が大きくなるという都市伝説を未だに信じている医療従事者が、末期の癌患者さんの診療に携わる緩和治療の専門家にもいるが、そんなことはない。栄養を摂らなくても、いえ、むしろ栄養が足りなくて患者の免疫が弱れば癌は大きくなるのだ!

癌患者さんに限りませんが、同じ栄養素を体に入れるならば、点滴より経管(チューブで流動食を消化管に注入する)、経管より経口(口から食べる)、つまり、より自然に近い方が効果が高いのは言うまでもありません。もし誤嚥(軌道に食べ物が入ってしまう)の心配があるならば、とろみをつけてごく少量から始めてほんの少しでもいいので口から食べ物を入れてあげましょう。消化管が動くためのエネルギーは消化管内の食べ物から直接得ているのです。

最も大事な栄養は、当然のことながら3大栄養素、つまりエネルギーの元となる栄養素、中でもエネルギー以外の様々な機能を果たすタンパク質です。体内で最も多いタンパク質であるアルブミンの量が少ない人ほど薬も効きにくく予後が悪いというデータは枚挙にいとまがありません。

ただし、食欲のないがん患者さんが効率よく栄養を摂取する事、癌細胞に栄養を奪われないで自分のエネルギー源とすることにはちょっとした工夫が必要です。がん細胞は糖をエネルギー源としているので、糖を癌に奪われないための栄養素が特に必要なのです。この本にはなぜそうなのかという理論が詳細に書かれています。

理論からじっくり学びたい方はぜひ実際に書籍を購入して読んでいただきたいですが、難しいことはともかく、実践したいという方のために栄養素を美味しく手軽に摂るための具体的な食材を中心に今日のブログを書くことにしました。

がん患者は肝機能、解毒能が低下していることが多いので、小麦や乳製品、砂糖など腸に刺激のある食べ物、添加物や重金属などの有害物質を含む食べ物は元気な人と同じかそれ以上に避けたほうが良いのは言うまでもありません。

意識して摂りたい栄養素は以下の通り。もちろんサプリメントで摂るのが手軽ですが、食べ物のほうが美味しくて楽しい!

・コエンザイムQ10:エネルギー産生に重要な栄養素。抗酸化作用も強い。肉、魚、野菜、ナッツなどに含まれる。鶏ハツなどはおすすめ。 

・L-カルニチン:脂肪のエネルギー化に必須。年齢と共に低下する。炭水化物の摂り過ぎはがん細胞を増殖させるので、脂質からエネルギーを得ることは重要。馬肉やラム肉、牛肉に豊富。 

・アミノ酸とくにBCAA:タンパク質の消化能力が低下している人はそれがすでに分解されたアミノ酸に近い形で摂取する必要がある。お勧めは何といってもボーンブロス(骨付き肉のスープ)と、小魚丸ごとの煮干しの粉(通称出し粉。イワシ、あごがお勧め)。出し粉の活用法は、一言で言えば「なんにでも混ぜる」。お味噌汁の出汁として投入、和え物にあえる、ご飯に混ぜる、卵焼きの味付けに、お湯に溶かして飲料として(梅干しなど入れると美味しく飲める。) など。 

・クエン酸:エネルギー回路を効率よく回すために必要。柑橘類、梅干し、大豆、パイナップルなどに多く含まれる。

・ GFO(グルタミン、水溶性食物繊維、オリゴ糖)腸機能の向上のために不可欠な栄養素 グルタミン:魚、ボーンブロス、   水溶性食物線維:野菜や海藻   オリゴ糖:バナナ、りんご

・抗酸化作用のある栄養素:コエンザイムQ10、ビタミンACE、亜鉛

・ビタミンD:の事はこの本にはあまり書かれていませんが、癌患者さんの血清ビタミンD濃度が有意に低いというデータは多数。ビタミンDは近年研究が急速に進み、多くの機能がわかっていますが、中でも免疫に非常に重要な役割を果たしています。

がん細胞は元気な人でも毎日約5000個できていると言われています。リンパ球などの免疫細胞が日々がん細胞を見つけては戦ってくれているのです。5000勝0敗なら癌にはなりません。しかし、免疫機能はストレスや加齢、栄養障害などによって低下し、時にがん細胞に負けてしまう事態が起こります。生き残ったがん細胞が増殖して塊を作り大きくなると、やがて内視鏡やレントゲンで見えるくらいに、さらには自覚症状が出現するのです。

癌拠点病院に長年勤務して日本のがん治療、病院の栄養管理の実態を知ったうえ、栄養療法を知ってしまった私にとって、内容的には「びっくり」するというより、「まさにそうです!よくぞ言ってくれている!!」(身の程知らずで偉そうですが(笑))というものでした。

感銘を受けたのは、その内容はもちろんの事、大学病院という大きな組織の第一線の診療のただ中で、日本で初めて全科型栄養サポートチーム(NST)という体制を作り、なおかつ、論文や書籍を執筆され栄養管理の重要性を世に示されているという事。なぜなら、私は急性期病院で栄養療法を実行しようとして、そのハードルの高さとそれを乗り越えるための体力の消耗に打ち勝てず、クリニックを開業したのですから・・・ちなみにNSTという言葉は今や全国の医療機関で浸透しているように見えますが、内情はと言えば、相変わらず栄養の基礎知識に乏しい医師が主導する、形だけの物が多いのが現状です。

人間、いや地球上の生物のだれしもが必ずいつかは死にます。これは避けようのない事実。現在の医療は「死=敗北」として、病気という敵をあくまでも取り除いたり攻撃して撲滅しようとします。医療が進んだとはいえ、癌は特に末期になると取り除くことが困難です。でも、最も強い本能である「食」をきちんと整える事で、癌と闘わずに穏やかに延命、もしくは延命は叶わずとも幸せに生を全うできるのではないか、そうする事こそ重要ではないか、と訴えられています。

治療法がないと言われ失意の中におられる患者さんやそのご家族に、癌と共存しながら元気に「生ききる」ため、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

低血糖症の対策「補食」

低血糖症が昼間の激しい眠気やイライラ、夜間の睡眠障害の原因になりうることを前回お伝えしました。

今回は低血糖の対策方法についてお伝えしたいと思います。

食事によって維持される血糖は2,3時間。それを過ぎると自力で生成した糖で血糖を穏やかに上げる必要があるのですが、それが上手くできないのが低血糖症ですから、体が糖を生成する代わりに糖質を補充する「補食」が重要になります。

そもそも低血糖の症状と思われている「イライラ」「ドキドキ」は、何とか血糖を上げて急場をしのごうとする「アドレナリン」の仕業です。アドレナリンは興奮系神経伝達物質。ここぞと集中して頑張る時にこそ威力を発揮するのですが、過剰だとイライラや不安が出現したり、リラックスするべき夜間にはたらくと睡眠障害を招いてしまうのです。

つまり、低血糖に反応するアドレナリンを出させないよう、「低血糖そのものを未然に防ぐ」ことが「補食」の目的ですから、血糖が下がる(空腹を感じる)前に補食が必要です。

補食の頻度や量、何を食べるかは、低血糖の程度など個人差や好みがあるので、自分で見つけていくしかないのですが、目安は1~2時間おき、ピンポン大程度のおにぎり、干芋や甘栗、焼き芋、バナナなどを少量頻回に食べる。要するに出来るだけ天然素材に近い良質のデンプンを選びましょう。加工が施されていない食材ほど、糖以外の栄養素、食物繊維やビタミン、ミネラルなどが含まれているため、急激な血糖上昇を起こさず、代謝を助けてくれます。症状がよほど激しい人や、仕事中に苔ウ物が摂りにくい人は、「生はちみつ」もおすすめです。

外出先でひどい低血糖になってしまったときには、コンビニで買えるキャンディ、ようかん、チョコレートなどの砂糖を多く含む食材でもいいので食べて血糖を上げる措置が必要になることもあります。ただし、その際には必ず砂糖よりゆっくり血糖を上げてくれるような上記のようなデンプンと組み合わせて食べておくのがお勧めです。

ただし、血糖が上がりすぎてインスリンを多量に出させてしまうとまた反応性低血糖が起こりかねませんので、急激に血糖を上昇させる単純糖質(砂糖など)や、一気に大量の食べるのははNG。一気に食べたくなるのを予防する意味でも空腹を感じない間に捕食するのが重要なんです。

低血糖になりやすい人は、食事が抜けてしまうのはもってのほか。外出する時にも手軽にちょこっと血糖を上げる「My補食」を持ち歩くようにしましょう。

最後に、低血糖が起こりやすい方の多くは、糖新生(糖以外の物質:タンパク質や脂質から糖を作り出す反応)が上手く働いていない方です。この糖新生の材料はタンパク質や脂質、また主役はコルチゾールというホルモンです。炎症や精神的ストレス、有害物質の暴露などが慢性的に長期間持続すると、それらに対応するコルチゾールを生成する臓器である副腎の機能や副腎をコントロールする脳の脳下垂体や視床下部の連携が低下しています。腸内環境も深く関与しています。いずれも食事を含めた生活習慣や思考ぐせの影響が背景に存在しています。

それら根本原因にテコ入れしなければ根本的解決にはなりません。「補食」は、あくまでも変動が激しくなりがちな血糖を安定化させることで穏やかな日常を取り戻すためのテクニック。血糖を維持しながら根本原因に目を向けて生活全般を見直すことこそが重要な事を、ぜひお忘れなく!

「低血糖症」って「糖尿病」の逆ではないんです

「低血糖症」という言葉をご存知ですか?文字通り低血糖が起こる病気なんですが、高血糖が問題とされる糖尿病に比べ認知度は格段に低い病気です。西洋医学の世界では全く知られていないと言っても過言ではないかもしれません。

でも、低血糖はイライラやうつ、アレルギー、不眠症など様々な病気を引き起こす引き金になりうる重大な症状なんですよ。

図1

では、低血糖症、どんな病気でしょうか。高血糖の逆だから、糖尿病の反対かと思いきや、そうでもなくて、低血糖の症状が前面に出る耐糖能異常です。なんのこっちゃ。

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たんぱく質の消化、できていますか?

これは昨年12月にNHKカルチャーでお話しした内容の抜粋です。

私たちの体、水分を除けば半分がタンパク質。タンパク質はからだを形作るだけでなく、様々な体内の反応を促す酵素やホルモン、体を守る免疫細胞、栄養素を運ぶ、エネルギーのバックアップなど数えきれない多くの働きがあり、とても重要な栄養素なんです。タンパク質英語でproteinと言いますが、その語源はプロテウスというギリシャ神話の海神、「第一の」という意味があります。

このたんぱく質、生物の個性を決める要素でもあり、消化機能が悪くて未消化のタンパク質が腸に到達すると吸収できないばかりか「異物」と認識され、アレルギーや炎症の原因になり得ます。

たんぱく質の消化には必要なプロセスがいくつもあります。今日からでも簡単に出来るコツお教えします!

①口:咀嚼、つまりよく噛んで出来るだけ細かくしておくこと。これ、簡単なようでとても重要。しかも安上がり。よく噛むうちに胃や膵臓などの消化液が準備されます。また、噛んでいる間に食欲中枢に情報が届いて満腹感が得られ、食べ過ぎが予防できます。よいことだらけ。一口30回噛むこと、即今日から実行しましょう!

②胃酸とタンパク分解酵素ペプシンが分泌されます。胃酸は酸でタンパク質を変性させ、ペプシンは胃酸によって活性化します。胃潰瘍でもなく、ピロリ菌除菌目的でもないのに、胃の不快感のためだけに胃酸抑制薬を飲んでおられる方、要注意です。

日本の保険診療では胃酸は敵のように扱われていますが、栄養療法ではとても重要。胃酸をサプリで飲む治療もあるんです。もちろん潰瘍などで胃酸を抑えないといけない方もいますから、主治医に相談なく薬を勝手に止めるのはダメですよ。

胃酸の代わりに食事中にレモンなどの柑橘類やお酢などで酸味を補うのは効果的です。また、タンパクを分解してくれる酵素は生の野菜や果物の細胞内に存在します。大根おろしや玉ねぎおろし、舞茸のみじん切りなどに付け込んだお肉はとても柔らかく美味しくなるんです。もちろん消化にもgood!

③とはいえ、消化機能が落ちてしまっている方(自覚がない場合も多いので要注意)、できるだけ分子量の小さいタンパク質(アミノ酸に近い)を摂ることがお勧め。

安価で手軽に摂れる食材で一押しは、何といっても煮干し出し粉。タンパク質はすでにかなり小さくなっています。(アミノ酸が数個~数十個つながった状態、ペプチドといいます。)かつお節のように骨や内臓を取り除いていないので、多少クセがありますが、その分ミネラルが豊富なんです。さらに少し高級なあご出し粉を混ぜて使うと味も栄養価もアップします。お味噌汁の出汁に入れたり、ご飯や和え物に混ぜたり振りかけたり、卵焼きの生地に入れ込んだり、色々使えて簡単で美味しいですよ。

そして、何といってもボーンブロス。骨付き肉をコトコト煮だして作ったスープです。骨はアミノ酸とミネラルの宝庫なんです。骨付き肉を入れたスープというだけでも十分栄養が摂れますが、圧力なべなら30~40分の加圧で骨がボロボロになって余すところなく骨の栄養が頂けます。できれば丁寧にアクをとって、もっとできればいったん冷やして浮いて固まった油を取り除けば完璧です。野菜を足して煮込めば、もうその一品だけでおかずになりますね。

とまあ、1時間のセミナーの内容の理論をすっ飛ばした実践編のダイジェストでした。ぜひぜひタンパク質を有効に摂取して、ちゃんと消化して健康になりましょう!

サプリメントのイロハ

9月の第3木曜日に、恒例のセミナーを開催しました。参加人数は6名の超人気セミナー(笑)

ドラッグストアにはありとあらゆるメーカーのサプリメントが所狭しと売られるようになりました。「どれもよさそうだけど、種類が多すぎて選べない!いったい何をどれだけ摂ればいいの~?」と思ったことはありませんか? 

というわけで、・サプリメントを摂る目的、・優先順位、・品質の見抜き方(原料と表示の見方)、・最適量という考え方、・効率的なビタミンCの摂り方、についてお話ししました。

1.まず、サプリメントを摂る目的です。

栄養素を補充する

  現在の食材そのものの栄養価が低下している

  精製度の高い食品・・・白砂糖、白米、食用油

  食品添加物・医薬品・・・ミネラルの吸収阻害、腸内細菌へのダメージ

  過食やストレスによる栄養素の浪費 

根本原因の解決:腸内環境改善・副腎疲労をサプリで修復する

   腸に必要な栄養素:プレ・プロバイオティクス、グルタミン、消化酵素など

      副腎機能に必要な栄養素:ビタミンCなど

 しかし、あくまで食事が「主」、サプリは、どうしても足りない栄養素を補うもの、です。

2.次に、サプリメントの優先順位ですが、サプリの種類は大別して2種類

 ①全ての人に必要な栄養素:極端に欠乏すると病気になるか、ひどい場合は死んでしまう栄養素と 

②特殊な機能を持つ成分:例:蜂の分泌物、キノコの成分、ゴマの抽出物、ハーブなど  これらはそれぞれに素晴らしい効用を持っているかもしれませんが、摂取しないと生きて行けないわけではありません。

  当然、優先順位が高いのは①です!ところが、ビタミン、ミネラルなどは当たり前すぎて地味なのか、特殊なものほど華々しく宣伝され、熱心に販売されるんです。6大栄養素が足りてこその特殊成分という事をお忘れなく!

3.サプリメントの品質の見抜き方

①天然原料 VS 合成原料

天然原料の長所は、野菜・果物などの天然食材から抽出し、食べ物に近いので吸収率や体内での働きが良い(一緒に働く他の微量栄養素がくっついてくる)。短所は、どうしても高額になる、濃度が低いのでかさばるということ。

対して、合成原料の長所は、化学的に合成、大量生産できる、安価で高濃度ゆえにコンパクト。短所は単一成分で効果が単純(微量協力栄養素との相互作用が期待できない)、合成過程で不純物が混入し、その除去のコストがかかる、つまり、コストを安くするために不純物の除去の手を抜く余地があるってこと。

②成分表示の見方

例えば、右は、ある医療機関専売サプリ、いわゆるドクターズサプリの葉酸サプリ(葉酸含有量400㎍)の表記です。

原材料表記では、天然原料は、「酵母、小麦胚芽、牡蠣殻、卵」など、食べ物の名前で書かれ主原料側に、合成材料は「ビタミンC、ステアリン酸カルシウム」など栄養素名で書かれ添加物側に記載されます。

ちなみに主成分は「/」より前に、添加物は「/」より後に記載され、また、いずれも含有量の順に書くのがルールです。

つまり、このサプリは、葉酸と共に働き、葉酸の働きを良好に補助するために必要なビタミンB12、B6などが一緒に含有され、添加物側にもどうせならばと酸化防止(ビタミンC)や錠剤を固めるための材料(カルシウム)として合成の栄養素が極力使用されています。ホントの意味での添加物はHPMCのみ。これは錠剤の形状を保つための最低限の材料です。

また、ある市販の人気葉酸サプリの表記。

葉酸の含有量は400㎍と負けていません。ミネラルも添加されて、妊婦さんによさそうです。

ただ、原材料には所狭しと様々な天然原料が並べられ、めっちゃよさそう!! ただ、トップ2が、還元麦芽糖水あめ、デキストリン。これは味の調整のため?これってよいのかな? 添加物側にも結構栄養素が入ってるけど、セルロース、加工油脂がちょっと気になるなあ・・・

てな具合に見るわけです。全体としていずれのサプリもそう悪くなさそうですが、安価な粗悪サプリが巷に出回る中、ちゃんと成分表示を見る癖をつけましょうね。中には99%添加物なんて言う代物もあるんですよ。安い物には訳がある、高い物にも訳があるんです。ですが、どんなに穴が開くほど表示を見ても、たとえプロでもサプリの良しあしを見分けるのは難しいそう。だから、私のクリニックでは、企業理念がしっかりしていて、確実に良心的なひなものを作り良心的に販売していると信じることの出来る会社のサプリメントを採用しています。

4.最適量という考え方

ビタミンの発見の歴史は「欠乏症の歴史」それぞれに壮絶なドラマがあるんです。詳しく知りたいマニアックな方は「栄養学を拓いた巨人たち」を読んでみてください。だもんで、ビタミンとは微量に必要な成分で、欠乏症が起こらなければ十分と考えられてきました。ところが近年、明らかな欠乏症には至らない量でも不調の原因になりうる、つまり最低必要量より多くの量の投与で得られる効果があることがわかってきました。

表はその例です。

栄養素ビタミンB1ビタミンB3葉酸ビタミンCビタミンD
最低必要量脚気の 予防ペラグラの予防二分脊椎の予防壊血病の予防くる病の予防
最適量ミトコンドリアの活性化統合失調症治療メチレーション改善がん・ 風邪予防免疫向上 がん予防

最低必要量とは、欠乏症が起こらない量、最適量とはある狙った効果が期待できる量、です。今まで微量で欠乏症を予防するものと認識されてきたビタミンを、時には何百倍、何千倍と投与することによってこのような効果が期待できる場合があるのです。もちろん栄養素の性質をよく知り、個体差と現状を考慮しての話ですが・・・そして、このような量を摂取するためには「食物」から得る栄養素だけでは到底足りなくて、ここで良質のサプリメントが威力を発揮するわけです。

ビタミンCについては詳しい話が面白過ぎるので、次に改めて書きたいと思います。

あなたの武器(免疫)、眠っていませんか?

今回は、病原体と闘う武器、免疫を育てる生活習慣と栄養の話です。

栄養の話がメインになりますが、それ以前に重要な生活習慣として

①規則正しく生活をする

②質の良い睡眠を十分とる

③毎朝日光を浴びて体内時計をリセットする

④ストレスをためない

⑤適度な運動

現代人ならそれ自体無理!という方も多いかもしれませんが、まずはそこが大事と知っておいていただきたいのであえて最初にあげました。

免疫をあげるのはこれ!っていう一つの栄養素や食材が薬のようにあるわけではありません。最も基本的な事は6大栄養素をしっかり摂ること・・・というと拍子抜けしますか?でも、コレやっぱり重要。「6大」には重要な意味があり、そこをクリヤーするだけで免疫はもちろん多くの症状の改善が期待されるのですよ。そして、なかなかそれができていない事が多いのが現状です。なぜか・・・それは現代の食環境にあります。

①食料の質の荒廃 ②環境毒素の増加 ③ストレス ④過剰な清潔志向 ⑤薬の過剰使用 などなど

①食料の質の荒廃:砂糖の過剰⇒悪玉菌の栄養になる。加工食品には食品添加物が多量に使用される。小麦グルテン、乳カゼインは品種改良?により難消化となり、アレルゲンとなりやすくなった。トランス脂肪酸、加熱処理による栄養の喪失や有害物質、油の原料のほとんどは遺伝子組み換え穀物であり、それは家畜の飼料にもなる。農薬による土中細菌の減少で作物の栄養価が格段に落ちている。

②環境毒素の増加:家庭用クリーナーや洗剤、化粧品、ボディケア用品、プラスチック、電磁波など多くの毒素に囲まれて暮らしている。これらは私たちの体に必要な代謝を阻害し、解毒の為に多くの栄養素を消耗する。

③ストレスもまたホルモンの分泌や代謝、栄養素の消化吸収に悪影響を及ぼして、栄養状態をむしばんでいる。

④過剰な清潔志向:ありとあらゆるものを洗浄し、消毒殺菌、消臭し、病原微生物から逃れようとするあまり、免疫を育てる機会を奪い、結果病原微生物に対する抵抗力をかえって落としている。

①~④すべてが免疫の要である腸内細菌叢にダメージを与え、善玉菌の数と種類を減少させることでリーキーガットの原因になるとされていて、すなわち栄養素の吸収力も落としてしまうのですが、とどめは

⑤薬剤の過剰使用:抗生物質は腸内細菌叢に甚大で時に不可逆的なダメージを与えます。胃酸抑制薬はタンパクの消化を阻害する事で、未消化のタンパクを腸に送り込んで腸を刺激しますし、食物の殺菌力が弱まることで腸内細菌叢を乱します。他にも抗炎症剤NSAIDSやピルなども腸内細菌叢にダメージを与えることが知られています。

個人のチカラのみではどうしようもない事もあり、コストもかかりますから、すべてを完璧に整えることは不可能ですが、まずは知ること、そして可能な事から実行することがとても大事です。

例えば添加物だらけの食べ物、砂糖まみれのお菓子、トランス脂肪酸を極力避けることは簡単ではないですが可能です。まずはパッケージの成分表示を見る癖をつけましょう。ボディケア用品やルームスプレーなども出来るだけ天然で添加物の少ない物を選ぶようにしてみませんか?

個人個人が気をつけて正しい選択をすれば、そしてそれが広まれば売る方の考え方も変わるはずです。こうして地道に共感して下さる人を増やすことがせめてもの私が出来ること。それで世の中が変わることを信じています。

適度な不潔が免疫を育てる。

ワクチン接種も済んでコロナ禍の状況にもいい意味で慣れると、過度に怖がることは少なくなってきてはいますが、コロナを恐れるあまり外出を控えすぎて筋力低下を来すお年寄り、経営難でお店をたたむしかなくなった飲食店や関連業者、接客を中心とするお店、職を失った人々、そのためにうつ病や自殺に追い込まれる人々。

「専門家」と言われる方々、マスコミの論調は、相変わらず「3密を避けよ」「手洗いうがい」「移動は極力するな」「マスクをせよ」「会食はするな」です。確かにそれは病原体を回避するという意味では正しいかもしれません。でもその中に、「本人の免疫力」という観点が完全に抜け落ちていると私は思っています。

生活が困窮して栄養事情が劣悪になり、外出が減って紫外線を浴びることが少なくなり、運動する機会が減り、ストレスが長期に持続する事は免疫力を落とし、かえって感染のリスクを高める可能性がないと誰がいえるでしょう?

人間は、いや、地球上の動物は太古の昔から常に病原体にさらされて生きてきました。感染症は病原体だけが起こすものではありません。現に同じ状況にいても感染する人としない人がいます。その違いは「免疫」です。

実は「免疫」は常に病原体に対峙することで訓練をして機能を維持しています。また、それはさらに腸内細菌を増やし腸内の環境を健全にすることで間接的に免疫力を高めます。今のような対応で病原体を避けてばかりいたら、目先は良くても長い目で見ると、免疫の減弱は避けられません。最近「子供に流行」と騒がれているRSウイルスの感染症も、子どもたちが病原体を避けすぎて免疫が低下した結果、かどうかわかりませんが無関係ではないと私は思っています。

過度な清潔がいかに危険か、という事を訴える著書は多数あります。目からうろこの考え方を提起する本をぜひ一度は読んでみてください。腸内細菌の重要性の啓蒙をライフワークとされていた故藤田紘一路先生が翻訳された右の著書、お勧めです。

適度に不潔で病原体にさらされることで、免疫が鍛えられ、適切な腸内細菌を育てることになるのです。

けれど、私たちはもはや太古の昔の野性的な衛生観念には戻ることはできません。ですから、過度な清潔観念を捨てるとともに、免疫を向上させる生活習慣と食習慣を心がけることが必要不可欠なんです。

免疫をあげる具体的な方法は次回に・・・・