ポリヴェーガル理論 3つの自律神経

ポリヴェーガル理論では、交感神経を「赤」、副交感神経を腹側迷走神経複合体と背側迷走神経複合体の2種類に分類して、それぞれの色を、前者は「緑」後者は「青」として説明します。

簡単に言えば、赤はアクセル、青はブレーキ、緑はチューニングの役割です。状況に応じ、それぞれの自律神経は「自分の身を守るための反応」として働きます。つまり、赤は獲物を追いかけたり、天敵から逃げたりすることで生きるために動く、青は活動が長期化してエネルギーが枯渇したり、天敵から逃げおおせないと分かった時、少しでも生き延びる確率を上げるために動かないでいる、緑はリラックスしてエネルギーを蓄えるために安心安全な状態で休息する、そういうイメージです。様々な感情を伴いますが、それは「生き延びるための体の反応」ととらえるのです。

赤の体の特徴
 •目じりが吊り上がり、目つきが鋭く、瞳孔は開く
 •敵や危険物を探すためそれ以外は目に入らず視野狭窄
 •眉間にしわ、歯を食いしばり、あごが力み、口が渇く
  •顔は赤くほてる •肩や腕の力み、手はこぶしを握り、指差しが多くなる
  •心臓の鼓動が早くなり、脈拍もはやくなる
  •呼吸は浅くて速く、吐くよりも力強く吸いがちになる
  •胃腸の動きは抑制され、食欲は出づらく、便秘がち
  •手のひら、足の裏の多汗
  •エネルギーがたくさん必要で、筋肉や肝臓からも栄養素を作り出す
赤の反応が出た時の感情
 落ち着かない、逃げたくなるような感情:心配、不安、恐怖、焦り、動揺、パニック
 戦いたくなるような感情:不快感、不機嫌、怒り、憤慨、恨み、憎悪、憎しみ
赤の思考パターン
「どうしたらいいの?」「何が正しいの?」「大変なことになった」「逃げたい」
「どっかに行って欲しい」「ミスしちゃいけない」
「間違ってる」「~すべき」「急げ」「どうしてこうなるの?」「あり得ない」
 ジャッジメント的、二者択一的な考えになりやすい
  「正しいか違いか」「普通か異常か」「良いか悪いか」

青の体の特徴
 ・外部をシャットダウン、閉じこもりたくなる感覚
 ・倦怠感があり、身体が重たく動きづらくなる
 ・力が入りにくく疲れやすい
 ・外の情報を取り入れる余裕がない、または取り入れたくない
 ・光、音、他人との接触を拒む
 ・五感が鈍くなり、食事を摂りたくない
 ・呼吸はゆっくり浅い、血圧・脈拍低下
青の反応が出たときの感情:ブレーキをかけられたような感情
  憂うつ、悲しみ、あきらめ、途方にくれる、恥、
  劣等感、罪悪感、無力感、無感動、消えたい、死にたい
青の思考パターン
「どうせできない」「もういいや」「もうだめだ」「終わりにしたい」
「休みたい」「放っておいて欲しい」「どうでもいい」「会いたくない」
「頭が回らない」「よくわからない」「かかわらないで」「一人にして」
ストレス(災難)から一旦離れ、活動レベルを一旦下げて充電の方向に向かう目的なのです。

緑の体の特徴
・血圧や脈拍は高くも低くもなくちょうどよい
・呼吸の速さも深さも適度
・筋肉の緊張は、力みも脱力もない
・話すスピードや動作もちょうどよい
・目元が柔らかく、目じりが下がり、口角が上がって笑顔に近い表情
・声の高さやトーンもちょうどよい
緑の反応が出たときの感情
 安心感、安全感、信頼感、穏やか、平和、愛おしい、
 あたたかい、好奇心、慶び、爽やか、感動的、仲間感、
 一体感、お任せ感、誇らしい
緑の思考パターン
「いつもありがとう」「おかげさま」「ご縁をいただいてうれしい」
「恵まれているな」「よくできたな」「すごいな、感動する」「何か一緒にやろう」
「自分の事のようにうれしい」「あれもいいし、これもいい」「自然にゆだねよう」
「まかせてみよう」「なるようになる」「私たちいい感じ」

何となくイメージ沸きましたでしょうか?


 

ポリヴェーガル理論を生活に取り入れよう!

栄養療法を求めてきてくださる患者さんはほとんどが頑張り屋さん。学校の勉強や部活、仕事や育児を目いっぱい頑張っている人たちです。何とか体を元気にしたいと、これも頑張って努力しています。

何かを我慢したり、何かを取り入れて実行したりをいっぱいしているのに、体調は改善しない・・・なぜ?

そこで、最近のセミナーより、「ポリヴェーガル理論」のお話を・・・

ポリは複数、ヴェーガルは迷走神経を表す言葉です。迷走神経は脳神経の一つで、脳と全身のあらゆる臓器を結ぶ自律神経(副交感神経)です。

一般的に、交感神経は「興奮」副交感神経は「リラックス」の神経と言われていますが、この迷走神経が複数あってそれぞれの役割があるという考えです。

•1994年 ステファン・ポージェス博士が提唱した理論で、•自律神経を3つの色に分類し、心の状態を客観視することで、「心と体の関係性」を理解し、「メンタルヘルスの回復」に役立つ考え方です。

一般向けに右のようなやさしい書籍がありますので、ぜひ読んでみられると良いと思います。

ポリヴェーガル理論では、交感神経を「赤」、副交感神経を腹側迷走神経複合体と背側迷走神経複合体の2種類に分類して、それぞれの色を、前者は「緑」後者は「青」として説明します。そして、この本のような色のキャラクターを連想すると、不思議と自分や他人の心の状態を客観視でき、深刻な状態も時に滑稽に見えたり、交感神経優位でイラついている人に対しても、寛大な気持ちで受け入れることができるのです。これは私自身も生活に取り入れてみて実証済みです。

同じ出来事に直面しても、悲観的にとらえて悩む人と楽観的にとらえて悩まない人がいますね。それを私たちはその人の「性格」とかと思いがちですが、栄養状態がよくなったり血糖値の変動が穏やかになると変わるという事は、このブログを読んでくださっている方は知っていますよね?今回はそのお話とは違う角度で考えます。

「悩み」はどうしたら解決するか?たいていの場合、悩みの「内容」を解決しようとしますね。例えば、子供の成績が落ちたら、勉強しているか見張るとか、塾に行かせるとか。

でも、悩みの「内容」を解決するために、まずこれやってみてというポイントが二つ。

自分の心を整える = 「考えを整理する」 「気持ちを整理する」 

 良い経験になったと考える、 良いところに目を向ける、 忘れる、 

 認知のゆがみに気づく 原因を考え整理する など

体を整える = 心は一旦置いといて、「身体のコンディションを整える」

 筋肉を緩めたり動かしたり 目やのどに潤いを与える

 汚れている部分を洗う お腹が空いていたら何か食べる

 呼吸を整える 足の裏をマッサージする

今回は主に②の体を整えるにあたるお話です。

赤、緑、青、各キャラクターの特徴は、次回に・・・

食事がつくる発達障害①の2 神経伝達物質と脳機能

発達障害は一般的には脳の機能の障害ととらえられています。

現に、前回ご紹介した成田奈緒子先生の著書にも、脳機能の発達の順序が違うと、発達障害もどきの症状が起こると記されていました。

では、脳の機能が正常とは、いったいどんな状態でしょう?

正常な脳機能

脳は、細長い神経細胞がぎっしり詰まってネットワークを作り、情報を伝達している場所です。情報の伝達は、上流の神経と下流の神経のつなぎ目(シナプス)において、神経伝達物質を受け渡しする事で行われています。

必要な情報が、必要な時に適切に伝達される、つまり脳の機能が正常に作動するには、神経伝達物質がバランスよく作られることが重要で、

神経伝達物質を作るには、必要な栄養素が充足していなければならないのです。

逆に、脳の機能が低下しているとは?

脳機能の低下

神経伝達物質の・材料が不足している状態と・材料を作るために必要な酵素のDNAにトラブルがある状態、です。

さて、どちらの影響が大きいでしょう?

もちろん栄養不足にも程度があるし、遺伝子トラブルにも程度がありますから、どちらとも言えませんが、ただ、言えることは、変えることができない遺伝子トラブルがあっても、環境や食事で症状を変えることができる、という事です。

実は脳は、栄養の影響を最も大きく受ける臓器なんです!

脳内には、抑制系、調節系、興奮系の3つの系列の伝達物質があります。

それぞれの系列のスタートとなるのはアミノ酸(タンパク質が消化されたもの)で、酵素が働いて順々に代謝され、目的の物質を作っているわけです。酵素の主原料もタンパク質ですが、その化学構造の中身はミネラルを含むことが多く、また、酵素が働くためには補酵素であるビタミンも不可欠です。

例えば、調節系の神経伝達物質、別名幸せホルモンと言われている「セロトニン」の代謝を見てみましょう。

調節系伝達物質の代謝

セロトニンが不足すると、不安やこだわりが強い イライラしやすい、怖がり、パニック睡眠が上手く摂れない、などうつのような症状が現れます。実際、最もポピュラーな抗うつ薬の一つはセロトニンの量を増やすように設計されています。

右図のようにセロトニンを作るにはまずスタートとなるトリプトファンというアミノ酸に、鉄、リチウム、マグネシウムなどのミネラル、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6というビタミンB群などが不可欠です。何かが欠けると、この代謝の流れがスムーズにいかず、必要なセロトニンを作れず、セロトニンから代謝されてできるはずの、別名眠りのホルモン「メラトニン」も作られなくなるのです。

神経伝達物質のアンバランス

神経伝達物質のアンバランスは、右のような症状を起こしますが、これらの症状が発達障害で見られる精神症状と一致するところが大きいので、

というわけで、一般的には発達障害は脳の障害ととらえられています。

食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲むわ

とは、残念ながら日常診療でよく聞く言葉でした。今はそう思われる患者さんは私の栄養療法外来には来てくれないので、めっきり聞かなくなりましたが、決して世の中の患者さんの考えが大きく変わっているわけではないはずです。

ですが、薬は、その症状が何故おこっているのかとは無関係に、あくまでも困っている症状を消してくれるだけであって、決して根本的に治してくれるだけではないんですよ。それでも薬を選ぶ理由は・・・

①栄養がいかに大切かの知識がない

②薬で「おさえる」のと「根本的に治る」のは違うという事を十分に理解していない

③良い食材を購入するより薬の方が安価である

④料理には手間と時間がかかる

⑤安くて保存のきく加工食品が手に入りやすい

①②は医療の専門家が情報提供して、お導きする必要がありますが、残念ながら医療の世界でも、このような考えは浸透していません。

③は、そう、身体に良い食材は、たいてい通常の商品よりお高いのです。一方、日本は、国民皆保険制度が非常に充実しているため、投薬に対する患者さんのご負担が極端に少ない国です。これは皮肉なことに栄養療法をするにあたってネックになることなんですが、「食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲んだ方がまし」となるんですよね~でも、待ってください。その、よく効くお薬、ずーっと飲んでいて、ホントに害がないですか?それに関してはまた回を改めて詳しく述べたいと思います。

④毎日の食卓をあずかる主婦なら、一度は「人間毎日ご飯を食べなくて済んだらなあ」「料理をしてくれる奥さんが欲しい~」と思ったことがあると思います。(ないかな?私は何回もあります。)そこは栄養の専門家たちが、いかに栄養をバランスよく摂れる簡単な献立をたてるか、工夫を凝らしたレシピを公開していますね。

⑤現在の栄養の問題すなわち「新型栄養失調」を作り出している最大の原因は・・・手に取ったらほぼすぐに、あるいは超簡単な調理で食べることができる加工食品が、どこのスーパーでも所狭しと並んでいくらでも手に入りやすい環境にいることです。

数ある食品関係の大手企業は、いかにたくさん売って利益を上げるか、を最優先にしています(むしろそれしか考えてないと言いたい)し、日本では欧米やアジア各国がすでに規制・禁止している有害物質でも規制がゆるゆるで、国は国民の健康より企業の利益を優先する政策しか作ってくれないとしか思えません。

でも、です!企業は、みんなが買わなければ、作りませんし、みんなが選ぶものなら作ります。もう、これは、各自が自分で自分の身を守るべく知識を得て賢い消費者になるしかないんです。ホントに切実にそう思います。

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感想(28件)
「買い物は投票なんだ」という絵本、ぜひ読んでみてください!

私はあきらめたくないので、こうして、いったい何人の方が読んでくれるかわからないブログを書き、数名にも満たない参加者でも、何時間もかけてスライドを作成して毎月セミナーを開催しています。

副腎疲労って何ですか?

「副腎」は、左右の腎臓の上にチョコンと載っかっている三角形の小さな臓器。

この小さな臓器、サイズのわりにとても重要な働きを担っているんです。

副腎の皮の部分、副腎皮質からはコルチゾール、俗にステロイドホルモンと呼ばれているホルモンが作られ分泌されています。別名ストレスホルモン。精神的ストレスだけでなく、肉体的ストレス、炎症などに対抗するホルモンです。炎症と免疫って表裏一体の反応ですから、免疫を抑える働きがあります。血糖を上げる働きもあります。

免疫を抑え血糖を上げるって、なんだか悪者~と思われました?そんなことはありません。例えばコロナの重症化はウイルスそのものの毒性ではなく「サイトカインストーム」が主因とされていますが、これはいわば「免疫の暴走」。いい具合に免疫が働くためには免疫のなだめ役が必要で、それが副腎皮質ホルモンなんです。現にコロナのサイトカインストームにはステロイドホルモンを投与することにより、飛躍的に救命率を上げています。

また、飽食の時代、血糖が上がりすぎることが病気の原因になってしまいましたが、人類の歴史始まって以来何百万年もの間人類というか地球上の生物は飢餓に苦しめられてきたんですから、食料がしばらく途絶えても血糖が下がりすぎない機能は命を繋ぐ手段だったって事。つまり、副腎皮質ホルモンは生きて行く上でとてもとても重要なホルモンなんです。

一方副腎のあんこの部分、副腎髄質からはアドレナリンやノルアドレナリンという自律神経を制御する神経伝達物質が作られ分泌されます。神経伝達物質は神経のつなぎ目(シナプス)において情報を伝達するホルモンのような物で、別名脳内ホルモンと呼ばれています。自律神経とは、意思とは無関係に生命を維持するうえで必要不可欠な機能を適切に制御する神経。肺や心臓、消化管などの臓器を動かしたり、発汗や血糖値の調節もしています。自律神経のうち興奮に導く交感神経の伝達物質が、副腎髄質から出るアドレナリンとノルアドレナリン。これらにはやる気や意欲、元気を出す作用がありますが、多すぎると不安やイライラ、夜間に出てしまうと不眠の原因になります。(参照 2022.4.29 良い睡眠とれていますか?)

このように、副腎は生命に欠かすことのできない働きをしていますが、長年のストレスや持続的な長期にわたる炎症があると特に副腎皮質ホルモンの浪費が続き、ついには副腎が頑張り切れなくなってホルモンを出せなくなるってことが起こってくる、というのが「副腎疲労」です。

そうなってしまうと、本来自前のステロイドホルモンが制御すべき炎症が暴走して、アレルギーやリウマチをはじめとする自己免疫疾患などの慢性炎症性疾患が起こりやすくなり、ステロイドホルモンを外注(薬で投与)せざるを得なくなりがちです。また、「体」の病気が起こららなくても、低血糖が起こりやすくなるため、エネルギーが作れない(元気がない)、朝起きられない、集中できない、消化機能が落ちる、栄養不足、うつ症状、とどんどん負のスパイラルに陥っていきます。

いわゆる体の病気は普通の医療機関で「病気」として扱ってもらえ、薬が投与されて症状を抑えることができる(注:治るわけではない)ので、わざわざ「副腎疲労」と呼ぶ必要はない?ですが、体の症状が乏しい方は「怠けもの」「やる気がない」と判断されたり、挙句の果てには「うつ病」と診断されたりしていますので、何とかしたいと模索するうちに「副腎疲労」に行き当たる、という感じでしょうか?

栄養療法も副腎疲労も知らずに向精神薬を飲み続けている患者さんの方が多いかも、とは思うけど・・・・

普通の(栄養療法を知らない)医師は「副腎疲労」という言葉さえ知らないし、知っていても「そんなへんてこな病名をうたっているけしからん医者や、それを信じるあきれた患者がいる。」と公言しているコラムをある雑誌で見かけました。それを読んで、このブログを書くことにしたんです。医学部では教えないから、知らないのは仕方ないですが、知っているならば、なぜもっとまともな情報を探してくれなかったのか、と残念。

そう、医学部では栄養の大切さも副腎疲労も教えないのだ。医学教育の現場を取り仕切る偉い先生方は、製薬会社のサポートを受けて研究しなければならない厳しい日本の現状で、素晴らし実績をあげた方々。正しいけどある意味偏った世界で生きておられる方がほとんどだから、この厚い壁を破ることは容易ではない。製薬会社にとって薬を使う必要がなくなる治療なんてお呼びではない。いかんいかん、このまま書き続けたらどんどんいやな事を書きそうなので、このあたりで止めることにしよう。

とはいえ、数十年前にカナダで産声を上げた「栄養療法」は苦難の時代を耐え抜いた偉人たちの意志を継ぐ人々によって少しずつ、でも確実に広まってきています。私もその伝道師の端くれになれたら、という思いで日々過ごしています。

次回は、「副腎疲労は副腎だけの問題にあらず。ホントの副腎疲労の正体は?」

ビタミンC④ 身体のどこに?

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図1

人間同様、ビタミンCを作ることができないモルモットでビタミンCの投与量と臓器別の濃度を調べた実験があります(図1)。縦軸がビタミンC濃度、横軸が投与量。

この図からは、投与量が少ない時の臓器による濃度の格差がかなり大きいことがわかります。副腎がダントツでまず濃度が上がり、ついで肝臓、脳のビタミンC濃度が上がっています。ビタミンCの投与量が少ないと優先順位の低い臓器にはほとんどビタミンCが分布していないことがわかります。

栄養素というのは、それを必要とする臓器に優先的に運ばれ存在し、摂取量が少なかったり消費量が多くて足りない時には、優先順位の低い臓器にはその栄養素が回ってこないという事です。優先順位は多少人(遺伝など)によって違いますが、最大の要因は「生命活動を維持するのに必要な度合い」でしょう。

副腎はステロイドホルモンやカテコラミンと呼ばれる脳内ホルモンの一種、アドレナリンなどを作る臓器です。何度も出てきますがステロイドはストレスや炎症に対応するためのホルモン、アドレナリンもストレス時に多く放出されるホルモンですから、ストレスや炎症があるとホルモンの需要量が高まります。ステロイドホルモンをつくるためにはビタミンCを多く消費しますので、ストレス、炎症時にはビタミンCの消費量が増えるという事になります。

また活性酸素を除去するためにもビタミンが必要なので、活性酸素を常に除去する必要のある脳のビタミンC濃度は当然高くなりますし、活性酸素を多く発生する環境や喫煙でもビタミンCの消費量が上昇します。

という事は、シミを薄くするためにビタミンCを摂取していても、ストレスや炎症があったり煙草を吸っていてはかんじんの皮膚には一向にビタミンCは来てくれないという事になりますね。

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図2人間の臓器別ビタミンC濃

人間の臓器別では、図2のように血管(血中濃度)を1とすれば、脳は20、免疫細胞である白血球は80、ステロイドホルモンをつくる副腎では150倍もの濃度のビタミンCが存在している、つまりビタミンCを必要としているという事です。

脳ではアミノ酸を血液から脳に運び込む際や活性酸素を除去するのに必須、白血球は免疫細胞ですからその活性を高めて「風邪やガンにビタミンCが効く」根拠の一つになりますね。

さらに副腎は、「副腎疲労」に象徴されるように、エネルギー産生、血糖維持、炎症や免疫、ストレス、など生きて行くうえで不可欠な機能がたくさんある重要な臓器です。それを支えている重要な栄養素の一つがビタミンCなんですね。

「ん?副腎疲労って何?」と思ったあなた。次は「副腎疲労」の事書こうかな。

ビタミンC③ 有効な摂取方法

ビタミンCは水溶性で熱に弱い、とは多くの方がすでにご存じでしょう。

それはその通り。

では、「ビタミンCはいくら摂っても吸収しきれない余剰分はすべて排泄されて無駄になる」というのが、古~い見解で、すでに否定されていることはご存知ですか?

「吸収しきれないビタミンCはすべて排泄されてしまう」というのは、その昔囚人を使って行った実験を誤って解釈した見解なのです。ビタミンC欠乏食でビタミンCを欠乏させた囚人にビタミンCを少しずつ摂取させ、どの時点で尿にビタミンCが排泄されたかを測定したところ、60mgのビタミンCを与えた時点で尿中にビタミンCが排泄されたのです。だから「ビタミンCは60mg以上は吸収されず、人間の体には60mgのビタミンCで十分なのだ。」と結論付けられました。

さて、それは本当なのか。そう思って実験した人がいました。60mg以上の摂取量と排泄量の関係を調べてみたところ、ビタミンCを投与したときの尿中排泄量は、例えば1000mgでは250mg、2000mgでは1120mg。吸収率で言えば1000mg摂取で75%、2000mg摂取では44%。つまり、大量のビタミンCを摂取すれば吸収率は下がるけれど、それなりに多くが吸収され、60mgを超える分がすべて排泄されるわけではなかったんです。

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ビタミンC② 多彩なはたらき

ビタミンCの働きは他にもたくさんありますが、代表的なものは以下の通り。

働き不足するとおきやすい症状
①コラーゲンをつくるシワができやすい。傷が治りにくい。
毛細血管がやぶれやすい。
②免疫力を高める感染症(風邪など)にかかりやすい。
がんになりやすい。
③ステロイドホルモンをつくるストレスに弱くなる。
④鉄の吸収を助ける貧血になりやすい。
⑤酵素の働きを助ける肝臓の解毒作用が低下する。
⑥活性酸素を除去する色黒・シミ・ソバカスができやすい。

それぞれに少し補足しましょう。

①コラーゲンというと「お肌」をイメージされると思いますが、コラーゲンは皮膚に限らず全身のあらゆる臓器組織の形を作っています。血管の壁もコラーゲンですから、ビタミンC欠乏症である壊血病では血管が弱くなって出血しやすくなるんです。壊血病にはごく少量のビタミンCの補充が著効します。つまりビタミンCが少々足りなくてもまずはコラーゲンを作るお仕事が優先される、というくらい大事なお仕事なんですね。

②風邪にビタミンCが効く、とは以前より言われつつも、「ほんとかな?」と思っていませんでしたか?「風邪薬ほどは効かないでしょ!」と言われそうですが、そんなことはありません。コロナもそうですが、風邪の原因のほとんどは「ウイルス」。コロナの特効薬もないですが、風邪のウイルスそのものをやっつける薬はありません。西洋薬ではせいぜい熱さましや咳止めという対症療法しかできないんです。症状が軽くなれば効いているように錯覚しますが、「発熱」は体温を上げて免疫を上げるため、「咳」は病原体を肺や気管支から追い出すため、つまり治すための自然な反応なんですよ。つまり西洋薬の風邪薬では症状は軽くなるけど「治り」は遅くなるんです。漢方薬はその限りではありませんが、薬の事はさておき、ここではビタミンCの話。ビタミンCは好中球という白血球を活性化する働きがあるんです。好中球は、病原体が体内に入ってきたら真っ先に駆けつけて戦ってくれる細胞です。病原体が何者かわからなくても、怪しい!と察知したらすぐに駆け付けてくれる、いわば自然免疫の主役です。ただし、好中球が活性化するには、壊血病予防の10~100倍の量のビタミンCを摂取する必要があるんです。

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③ステロイドホルモンって、なんだか怖い薬のイメージがありますが、そもそもは副腎という臓器で作られる、ストレスや炎症を制御している重要なホルモンなんです。このホルモンが相対的に足りなくなると、勝手に炎症が起こったり免疫がおかしくなるので、お薬として投与せざるを得なくなるんですよね。そして、ステロイドホルモンをつくるのに、ビタミンCは風邪予防以上の量が必要なんです。

その他、鉄の吸収や酵素の働きを助けたり、活性酸素を抑える働きがありますが、鉄にも様々な作用があり、人間の体は酵素がなければ生きて行けないし、過剰な活性酸素は万病のもとですから、いかにビタミンCが重要かという事は、ここまで読んでいただいただけでも十分お分かりいただけたのではないでしょうか?

そして、近年、口からは摂れないほど高容量のビタミンCを血管に直接点滴すると癌に効くという事も科学的に証明されています。もちろんすべての癌に確実に効くわけではないですが、副作用がほとんどなく、ついでに感染症予防や副腎機能の向上も期待できますので、仮に延命はできなくても最後まで元気に「生ききる」お手伝いをしてくれるんです。抗がん剤で体力が弱って食欲がなくなるのと対照的ですね。抗がん剤投与中の患者さんでは、抗がん剤の作用を補助し副作用を軽減してくれる効果が期待できることも知られています。

このようにビタミンCは摂取量によって効果が変わってきますが、ビタミンではB群、Dなどでも摂取量や血中濃度による効果がそれぞれ分かってきていて、効果を出すのに必要な量を至適量、容量に応じて体の反応が起こることをことを「ドーズレスポンス」と言います。

「ビタミンCの歴史」で触れましたが、ビタミン発見の歴史は「欠乏症」の原因追及の歴史です。「欠乏症」と言われる命にかかわる病気を回避するだけならば少量で十分なことが多く(命に係わるのはよほどの欠乏ってことですね)、国が1日必要量として定められている量は、この欠乏症を予防する量です。だから、ドラッグストアで安く手に入るサプリメントや保険適応のビタミン剤では、欠乏症は予防できても風邪の予防やストレス対応などというビタミンCの能力全てを発揮することができない事を知っておきましょう。

もちろん安価な保険薬が欠乏症を予防して多くの命を救ってきた歴史が非常に貴重な事には変わりありませんけどね。

次回のビタミンCは「最適量のビタミンCを摂取するコツ」です。

お米の話

玄米は体にいいですか?と良く聞かれます。何を隠そう、私も2,3年前まで玄米を好んで食べていました。少し歯ごたえがあるけど、ゆっくりかみしめると美味しいし、慣れたら単純な味の白米が物足りなく感じるくらい、家族も結構気に入っていました。

玄米はもみ殻を除いたお米であり、周囲のぬか部分を削り落としたものが白米。白米は大半が糖質なので栄養バランスとしては栄養豊富な外皮を含んだ玄米の方が当然優れています。ぬかの部分には白米にはない栄養素としてビタミンB1をはじめとするビタミンや各種ミネラル、食物線維などが多く含まれています。糖質の吸収のゆっくりさも、急激に血糖を上げないという意味で玄米に軍配が上がりそうです。

それなら文句なしに玄米は体にいいじゃないか、と思いますよね?私もそう思っていた時期もありましたし、多少のデメリットを耳にしても、メリットを打ち消すほどではないと考えていました。ですが、・・・です。

玄米にも欠点はあります。

①脂質の多いぬか部分は酸化しやすい。これは、特に夏場は冷蔵庫で保管するとか、一度にたくさん買わない事で対処可能。

②ぬか部分は農薬の濃度が高い。これはちょっとお高くなりますが無農薬米を選べば解決。

③玄米にはフィチン酸というミネラルをくっつける成分が含まれており、ミネラル不足になる。(あら、ミネラルが多いと思って玄米食べているのに??)これは発芽玄米ならばかなり軽減するそう。

④消化に重いため腸内環境を悪化させる傾向がある。

特に④の理由は解決策が難しいため、腸内環境を重要視する分子栄養学の世界では玄米はあまり推奨されていません。

植物は、紫外線にさらされるため、抗酸化物質や食物線維が豊富というメリットの反面、動物から種(子孫)を守るため、動物にとってはうっすら毒になる物質を種子に含有していることが知られています。

玄米も種です。紫外線から身を守る抗酸化物質が豊富な事も、玄米のフィチン酸も動けぬ植物の抵抗なんだそうです。

お米の消化についてもう一つ、お米のデンプンの種類を知っておくと良いと思います。お米のデンプンにはアミロースとアミロペクチンがあります。アミロースは化学構造が単純で、比較的消化しやすいデンプンです。品種で言えばササニシキ系のお米。一方、アミロペクチンは枝分かれの多い複雑な形であるためモチモチっとしてちょっと消化の負担が重いデンプンです。品種で言えばコシヒカリ系。スーパーの店頭に並ぶお米の大半はコシヒカリ系でモチモチ感が多いものです。モチモチは日本人好みなんですね。

ちなみに、モチモチといえば・・・モチ米は100%アミロペクチン米。古来からお餅は日本の文化や風習とゆかりの深い食べ物ですが、お祝い事やお祭り、お正月など晴れの日と悲しみ事の忌の日に限定して食されたのには意味があるのかも知れません。

何を食べても元気な人はそこまで考える必要はありませんが、何らかの病気あるいは体調不良を自覚されている方は腸環境が悪い確率が高いです。

そんなこんな紆余曲折の末、我が家は現在、無農薬ササニシキの5分搗き米を採用しています。そのうちまた意見が変わって違うものを採用しているかも知れませんが、そこは何を今自分が優先しているか、それぞれ各個人が選択すればよいと思っています。

新型栄養失調 最終章

新型栄養失調の原因

1.そもそも食べるメニューが偏っている。

2.パック野菜(カット野菜、水煮野菜)があふれている。

3.精製度の高い調味料

4.食品添加物

5.食材そのものの栄養価の低下

6.ストレス、消化機能、腸内環境・・・・・・・・

新型栄養失調の原因の最後は消化機能を取り巻く環境です。

ストレスが健康に様々な悪影響を及ぼす事例は枚挙にいとまがありませんが、ここでは、新型栄養失調に拍車をかける影響という観点で考えてみました。

身体的、精神的ストレスがあると、ストレスホルモン(副腎皮質ステロイド)を多く分泌してそれに対抗しようと体が反応します。ステロイドの主材料はコレステロール。それを作る段階で大量のビタミンCが必要です。

そして、ストレスは交感神経の緊張状態なので、副交感神経支配下の消化管の機能は手薄になり、消化吸収能力が低下します。

消化管の機能の低下とは、食べたものを分解して吸収する能力、蠕動運動(排便に必要な腸の動き)の低下ということです。ちゃんと吸収してくれなければせっかく食べた食物の栄養が体に入ってきてくれませんし、排便が滞れば有害物質の排出ができなくなります。

腸内環境をつくる最大の要因は腸内細菌ですが、抗生剤でダメージを受けたり、以前書いた砂糖、小麦、乳製品、加工食品などにより消化管の炎症が起こると、腸内細菌のバランは大きく崩れます。そうすると栄養不足はもちろん、免疫や脳機能にも多大な影響が及んで、アレルギー、うつ、自閉症、癌、自己免疫疾患様々な疾患の原因になりうることも分かっています。

大量生産大量消費時代。手軽で安価な商品が巷にあふれています。知らなければ思いもしない食べ物が健康被害を招いていることをよく知って、賢く商品を選ぶ意識を持ちましょう。少し高価でも、健康で暮らす幸せの為によい食材を選ぶって、とても重要と思いませんか?良いものを良心的に作っている生産者を応援する事にもなります。何かをちょっとがまんして、良い食材を買う賢い消費者になりましょうよ。

賢い消費者と言えば・・・ぜひご紹介したい絵本があります!!

藤原ひろのぶさんの「買い物は投票なんだ」。 私たちが、知らず知らずのうちにいかに地球を汚しているか、一人一人の意識がいかに大切か、を、ほうさんの優しいタッチのかわいらしい絵とともに具体的な例を挙げて分かりやすく書いています。

子供のころからそういう意識を持つように大人が教えてあげたいものです。