グルテンフリーという言葉がやっと日本でも市民権を得てきたように思います。グルテンは小麦に含まれる蛋白質で、消化が悪いため腸内環境を悪化させ、アレルギーの原因になることもあります。
世界的なテニスプレイヤー、ジョコビッチ選手の本は、グルテンフリーという言葉を有名にしました。
わが娘もグルテンフリーを含む食事療法で蕁麻疹を克服しました。私の患者さんで、グルテンフリーを徹底して頂いて難治な症状が改善した方はたくさんいらっしゃいます。皮膚の病気では蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、脱毛、血管炎など。蜂窩織炎やヘルペスなどの繰り返す感染症がほとんど起こらなくなった人、過敏性腸症候群の症状が劇的に改善した人もいます。
そうは分かっていてもなかなかやめられないパン。グルテンフリーを勧めた患者さんの多くは何とかしてパンを食べようと、米粉パンを探し回ります。
米粉パンは最近そこここで見かけますが注意が必要なのは、米粉では小麦のパンのようなふっくらパリッとが難しいらしく、グルテンを添加している物がありますので、必ずグルテンフリーの物を買ってくださいね。
ところで生米パンってご存知ですか?偶然見つけた本。生米パンの作り方です。
米粉は酸化しやすいし、常備はしていないので、生のおコメからパンを作るというこだわりのパン。と思いきや、作り方は意外と簡単。半信半疑で試しに作ってみました。
なんとなんと、グルテンは使っていないのに、ふっくらパリッと美味しい!!!しかも小麦のパンのようにこねることもせず、ミキサーで全材料をガーっと撹拌していきなり型に流し込み、そのまましばらく発酵させた後オーブンで焼くだけ。いたって簡単です。
小麦はやめたいけどパンが食べたい人、特にお料理好きの方、必見です。
材料(16.5×6.2×6cmの型)①米115g(浸水済150g)②油13g③メープルシロップ8g④塩2g⑤湯70~75g⑥酵母3g(ドライイーストならば2g)・・・私は家にあったパウンド型が大きかったので、いつも倍量で作っています。
作り方 ①米をお水に浸す ②型にペーパーをセットする ③お湯を準備(60℃くらい) ④米の水けをきる ⑤材料をミキサーに入れる ⑥撹拌約30秒×数回 ⑦なめらかになったらOK ⑧型に入れて霧を吹く ⑨蓋をして40℃約20分発酵で1.5倍に ⑩型を取り出し余熱 2倍になったら発酵完了 ⑪オーブン180℃ 30分で焼く ⑫できあがり
うちにたまたまあったパウンド型が大きめサイズだったので、倍量で、油はオリーブオイル、メープルシロップがないのではちみつで代用しています。
コツはミキサーでの撹拌は30秒×数回で滑らかになり少し粘りが出るまですること、表面が乾かないように霧吹きをすること、膨らまない時は長め、または少し温度高めで発酵させます。
小麦の中に含まれる2種類のタンパク質、グリアジンとグルテニンがくっついてできる「グルテン」は、腰の強いうどんやパンには欠かせませんが、非常に粘りが強く、難消化です。また、腸の細胞間の接着(タイトジャンクション)をゆるくしてしまう「ゾヌリン」という物質を増やしてリーキーガット症候群を起こしてしまう事があります。
タイトジャンクションが緩むと腸本来のはたらきである有害物質のブロックができずに吸収してしまったり、未消化のタンパク質を吸収してアレルギーが起こりやすくなったり、腸の炎症も起こりやすくなります。この状態をリーキーガット症候群と言います。「リーク」は漏れる、「ガット」は腸という意味です。つまり腸漏れ症候群。
アレルギーのほとんどは、生物の特性を反映するタンパク質を異物と認識して過剰攻撃することで起こりますが、消化管では本来タンパク質が正しく消化されて完全にアミノ酸になっていれば生物の特性を失っていてアレルギーは起こりようがないはずです。
ところが、胃酸の低下などが理由でタンパク分解酵素のはたらきが悪いと胃でたんぱく質が正しく消化されないまま腸に到達し、かつ腸のタイトジャンクションが障害されていれば、未消化タンパク質が体内に侵入してアレルギーを起こすのです。
食物アレルギーは本来攻撃する必要のない食物抗原を攻撃することをさしますが、そもそも消化機能が不十分で入るべきでない未消化蛋白が体内に侵入することが問題であり、ある意味免疫は正しく働いているともいえます。
一般に言われる小麦アレルギーとは、即時型アレルギーで、食べたらすぐ、または食べて運動したりすると蕁麻疹が起こる、IgE抗体が関与するものを指しますが、実はまだ日本ではあまり知られていない、IgGが関与する遅延型食物アレルギーというものがあります。比較的摂取頻度の多い食品が原因で様々な体調不良を起こすことがあり、そのアレルゲンの代表が小麦なのです。
腸が免疫と深~い関係にあり、小麦を辞めたら色々な慢性疾患が改善する話は以前しましたが、それは、初めに書いたようにグルテンが①腸の壁を損傷することのほか、②遅延型アレルギーの原因になるという主に2つの理由によります。
また厄介なことに、グルテンの構造はモルヒネに類似しており、麻薬のように依存するともいわれています。パンが大好きでやめられない人の多くはグルテン依存があるのかもしれません。病気に悪いからと除去を勧めてもなかなかパンがやめられない人も少なくないのも納得ですね。