衛生仮説ってご存知ですか?

抗生物質やワクチンが普及する以前、1950年頃までは、インフルエンザによる肺炎や結核などの感染症が死因のトップでした。これらの感染症を予防するために、薬やワクチンの開発だけでなく、衛生環境も格段に整備されました。

その結果、昔の子供と比較すると、現代の子供は環境中の微生物に触れる機会が減少しています。そして、「微生物と接触する機会の減少がアレルギー疾患の原因である」と提唱されたのが衛生仮説です。

下図は腸内細菌でご高名な藤田紘一郎先生の「アレルギーの9割は腸で治る!」のグラフを一部改変したものです。感染症の減少と反比例してアレルギーが増えているのが見て取れます。

細菌感染によりTh1細胞とTh2細胞のバランスが変化する

免疫細胞の中には白血球の仲間、ヘルパーT(Th)細胞というリンパ球があります。Th細胞は、「免疫の司令官」のような重要な細胞です。

体内に、異物が入ってくると、ヘルパーT細胞はTh1細胞やTh2細胞という免疫細胞に変化します。一般的に、細菌やウィルスが体内に侵入するとTh1細胞が活躍、花粉や埃などが侵入した場合はTh2細胞がはたらくといわれています。

このTh1細胞とTh2細胞はバランスが非常に重要です。Th2細胞が多くなりすぎるとアレルギー疾患にかかりやすく、逆にTh1細胞が多くなりすぎると、自分の細胞を攻撃する「自己免疫疾患(リウマチ、クローン病など)」という病気になりやすくなります。

そして重要なポイントとして、「新生児期は誰もがTh2細胞優位な状態」にあり、成長するに連れてTh1細胞が増加してTh1細胞とTh2細胞のバランスが整ってきます。Th1細胞を増やす刺激となるのが、「体内に侵入した細菌やウィルス」なのです。

つまり、「①新生時期はTh2細胞が優位 → ②成長の過程で体内に細菌やウィルスが侵入 → ③Th1細胞が増える → ④Th1細胞とTh2細胞のバランスが整う」という流れで、正常な免疫バランスになると考えられています。

衛生仮説は、「②の部分が不十分なため、Th1細胞とTh2細胞のバランスが取れずにアレルギー疾患になりやすい」という仮説なのです。

上述の腸の大家、藤田紘一先生の実践:①主に床に落ちたものを食べる、②足の指をなめる、という生活を送っていたそうです。子供4人の例なので実例としては少ないですが、一人もアトピーや喘息にはなっていないそうです。

腸内細菌研究で著名な福田真嗣先生の実践されている対策:①食べ物を床に落としたら3秒以内に拾って食べる、②手洗いはするがアルコール消毒はしない、③殺菌力の強いうがい薬を使いすぎない。

幼少期には過度に除菌されたものを使う事はかえって弊害もあるかもしれません。病原体を避けすぎるより、栄養を整え腸内環境を整えて自分の自然治癒力を育てる方が賢明と思いませんか?もちろん、適切な栄養、適度な運動、適度な休養もセットで、ですけどね。コロナ禍の時代でバランスが難しくはありますが、可能な範囲で実践するのも、コロナ対策の一手・・と言えばお叱りを受けるでしょうか?

産院ではペットとは接触しないようにと指導されたそうですが、私はペットと一緒に暮らすのは、「適度な不衛生環境」と考えています。アレルギーさえなければTh1の活発化に寄与しそうじゃないですか?我が家では、愛犬モカがたまに足の裏をペロってしたり、頭をクンクンしながら、そうっと理壱君の成長を見守っています。

と言ったら、産院の先生や看護師さん・助産師さんたちに叱られるでしょうか?

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