皮膚科の標準治療の中に分子栄養学を・・・

人体の不思議 人間いや動物の体は、細胞の環境を適切に整えれば病気にならずに正しく働くよう、とても精巧に出来ています。細胞の適切な環境とは、必要な栄養素の補充が十分にあり、有害な毒物(重金属やニコチン、細菌、カビ、化学物質など)が排除(解毒排出)される状態をいいます。適正な免疫機能が働いてさえいれば起こりようのない病気が近年どんどん増えているのは、体の細胞の環境が適切でないという事ではないかな?

分子栄養学は、一言でいえば、「細胞の適切な環境」を作るため食事やサプリなどで栄養を摂取し、食物を消化吸収できる消化管を保ち、毒物の解毒がスムーズになされるプロセスを分子生物学的に解明し応用する学問です。そして個々の患者さんに合わせて生活習慣の改善、栄養の摂取、デトックスなどを行っていく治療を分子栄養医学、一般に栄養療法と呼んでいます。

西洋医学と栄養療法の違い 従来の西洋医学的対症的治療は、明らかな病気(と西洋医学が認めた症状)に対して行う比較的単純で強力な治療(機能が悪くなった細胞から発生する炎症物質をブロックしたり、ガンなどを切除、細菌をやっつける薬を投与、詰まった血管を再開通させるなど)が得意で、効果がすぐに目に見えて劇的です。しかし、残念ながら根本的には治癒しない疾患が少なくなく、治療は医師が主体、患者さんは多くの場合受け身の立場です。

それに対し栄養療法は・・・

「通常ならば異常とされない体調不良の原因を探る」、「癌や感染症に罹りにくい細胞環境づくり」、「血管が詰まらないための生活習慣指導」など、様々な角度から不具合を同定し予防を含めたアプローチをします。そのためには、より詳細な問診を要しますし、時には分子栄養学的解釈で血液検査データを生化学的意義に基づいて深読みしたり、保険適応外の検査を駆使して治療を行います。

それには多方面からのアプローチが必要で、結果が出るのに時間がかかることが多いので、症状が明らかに改善していても、西洋医学的な土俵では「結局何が効いたのかわからない。」「エビデンスがない。」とされがちになり、通常の医療界ではまだまだ認められていません。栄養療法では何より患者さんご本人の理解と主体的な協力・努力が必要なのです。

アトピー性皮膚炎への栄養療法の応用 ステロイド外用を丁寧に指導して結果が出る患者さんを多く経験する一方で、どんなに丁寧に指導し実行していただいても様々なやり方を工夫しても改善しない症例があると気づき、そのような患者さんたちはこの栄養療法の適応だと考えるようになりました。当時、そのようなことはすでに実行されている先生方もおられましたが、急性病院の勤務医だった私には自費の検査やサプリの販売はできないため、保険診療内で分子栄養学的治療を応用する私の試みが始まりました。

おりしも、難治なアトピー性皮膚炎にデュピルマブという特効薬が保険適応されたころでした。日本皮膚科学会が新薬デュピルマブの効果の劇的さに沸くころ、私はいかにすればデュピルマブを使わずにアトピー性皮膚炎を改善させるか、あるいはデュピルマブで急場を改善させ、いかにして投薬終了に持ち込むことができるかを毎日毎日考えていました。

保険適応の意味 保険適応は、通常の一般的な医療においていわゆるエビデンスがあると認められた治療や検査に対し、健康保険が7~10割負担してくれる国の制度です。栄養療法は知る人ぞ知る有用な治療と信じている私ですが、まだ一般医療の中では知名度が低いため、保険適応のない検査やサプリメントの投与が必要となります。その方がより早くより確実に症状を改善させることができるのですが、当然のように保険治療目的で来院される患者さんの多い病院でいきなり自費診療を行うわけにもいきません。

試行錯誤の末、保険の範囲内で工夫した私なりの腸アプローチで、十分とは言えないながらある程度の結果が出せるようになりました。私の保険適応版「腸アプローチ」はアトピー性皮膚炎だけのためのものではなく、皮膚科のすべての疾患に応用できることがだんだんわかってきました。皮膚疾患のほとんどが免疫と深いかかわりを持つからです。

「腸アプローチ」の目標 もちろん保険外の検査や治療も含めた「栄養療法」は、より難治な患者さんには必要で、将来的な本当の意味での健康状態を考えれば保険適応にこだわらない検査・治療が望ましいですが、私が保険適応にこだわりたかった理由は、単に患者さんの自己負担を考えてのことだけではありません。自分が長らく身を置いてきた通常の医療の世界、「栄養療法」と無縁な世界に、ほん一端でも栄養の重要性を紹介するため、より受け入れやすい保険診療内でのアプローチが必要と思ったからです。保険の範囲内で治療を行って結果が出れば、他の皮膚科の先生方にも耳を傾けてもらえるはず、と信じているのです。栄養の重要性を知らされない教育を受けてきた良心的な医師も、治らない患者さんを何とかして治したいと思っているはずですから。

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