あなたの武器(免疫)、眠っていませんか?

今回は、病原体と闘う武器、免疫を育てる生活習慣と栄養の話です。

栄養の話がメインになりますが、それ以前に重要な生活習慣として

①規則正しく生活をする

②質の良い睡眠を十分とる

③毎朝日光を浴びて体内時計をリセットする

④ストレスをためない

⑤適度な運動

現代人ならそれ自体無理!という方も多いかもしれませんが、まずはそこが大事と知っておいていただきたいのであえて最初にあげました。

免疫をあげるのはこれ!っていう一つの栄養素や食材が薬のようにあるわけではありません。最も基本的な事は6大栄養素をしっかり摂ること・・・というと拍子抜けしますか?でも、コレやっぱり重要。「6大」には重要な意味があり、そこをクリヤーするだけで免疫はもちろん多くの症状の改善が期待されるのですよ。そして、なかなかそれができていない事が多いのが現状です。なぜか・・・それは現代の食環境にあります。

①食料の質の荒廃 ②環境毒素の増加 ③ストレス ④過剰な清潔志向 ⑤薬の過剰使用 などなど

①食料の質の荒廃:砂糖の過剰⇒悪玉菌の栄養になる。加工食品には食品添加物が多量に使用される。小麦グルテン、乳カゼインは品種改良?により難消化となり、アレルゲンとなりやすくなった。トランス脂肪酸、加熱処理による栄養の喪失や有害物質、油の原料のほとんどは遺伝子組み換え穀物であり、それは家畜の飼料にもなる。農薬による土中細菌の減少で作物の栄養価が格段に落ちている。

②環境毒素の増加:家庭用クリーナーや洗剤、化粧品、ボディケア用品、プラスチック、電磁波など多くの毒素に囲まれて暮らしている。これらは私たちの体に必要な代謝を阻害し、解毒の為に多くの栄養素を消耗する。

③ストレスもまたホルモンの分泌や代謝、栄養素の消化吸収に悪影響を及ぼして、栄養状態をむしばんでいる。

④過剰な清潔志向:ありとあらゆるものを洗浄し、消毒殺菌、消臭し、病原微生物から逃れようとするあまり、免疫を育てる機会を奪い、結果病原微生物に対する抵抗力をかえって落としている。

①~④すべてが免疫の要である腸内細菌叢にダメージを与え、善玉菌の数と種類を減少させることでリーキーガットの原因になるとされていて、すなわち栄養素の吸収力も落としてしまうのですが、とどめは

⑤薬剤の過剰使用:抗生物質は腸内細菌叢に甚大で時に不可逆的なダメージを与えます。胃酸抑制薬はタンパクの消化を阻害する事で、未消化のタンパクを腸に送り込んで腸を刺激しますし、食物の殺菌力が弱まることで腸内細菌叢を乱します。他にも抗炎症剤NSAIDSやピルなども腸内細菌叢にダメージを与えることが知られています。

個人のチカラのみではどうしようもない事もあり、コストもかかりますから、すべてを完璧に整えることは不可能ですが、まずは知ること、そして可能な事から実行することがとても大事です。

例えば添加物だらけの食べ物、砂糖まみれのお菓子、トランス脂肪酸を極力避けることは簡単ではないですが可能です。まずはパッケージの成分表示を見る癖をつけましょう。ボディケア用品やルームスプレーなども出来るだけ天然で添加物の少ない物を選ぶようにしてみませんか?

個人個人が気をつけて正しい選択をすれば、そしてそれが広まれば売る方の考え方も変わるはずです。こうして地道に共感して下さる人を増やすことがせめてもの私が出来ること。それで世の中が変わることを信じています。

適度な不潔が免疫を育てる。

ワクチン接種も済んでコロナ禍の状況にもいい意味で慣れると、過度に怖がることは少なくなってきてはいますが、コロナを恐れるあまり外出を控えすぎて筋力低下を来すお年寄り、経営難でお店をたたむしかなくなった飲食店や関連業者、接客を中心とするお店、職を失った人々、そのためにうつ病や自殺に追い込まれる人々。

「専門家」と言われる方々、マスコミの論調は、相変わらず「3密を避けよ」「手洗いうがい」「移動は極力するな」「マスクをせよ」「会食はするな」です。確かにそれは病原体を回避するという意味では正しいかもしれません。でもその中に、「本人の免疫力」という観点が完全に抜け落ちていると私は思っています。

生活が困窮して栄養事情が劣悪になり、外出が減って紫外線を浴びることが少なくなり、運動する機会が減り、ストレスが長期に持続する事は免疫力を落とし、かえって感染のリスクを高める可能性がないと誰がいえるでしょう?

人間は、いや、地球上の動物は太古の昔から常に病原体にさらされて生きてきました。感染症は病原体だけが起こすものではありません。現に同じ状況にいても感染する人としない人がいます。その違いは「免疫」です。

実は「免疫」は常に病原体に対峙することで訓練をして機能を維持しています。また、それはさらに腸内細菌を増やし腸内の環境を健全にすることで間接的に免疫力を高めます。今のような対応で病原体を避けてばかりいたら、目先は良くても長い目で見ると、免疫の減弱は避けられません。最近「子供に流行」と騒がれているRSウイルスの感染症も、子どもたちが病原体を避けすぎて免疫が低下した結果、かどうかわかりませんが無関係ではないと私は思っています。

過度な清潔がいかに危険か、という事を訴える著書は多数あります。目からうろこの考え方を提起する本をぜひ一度は読んでみてください。腸内細菌の重要性の啓蒙をライフワークとされていた故藤田紘一路先生が翻訳された右の著書、お勧めです。

適度に不潔で病原体にさらされることで、免疫が鍛えられ、適切な腸内細菌を育てることになるのです。

けれど、私たちはもはや太古の昔の野性的な衛生観念には戻ることはできません。ですから、過度な清潔観念を捨てるとともに、免疫を向上させる生活習慣と食習慣を心がけることが必要不可欠なんです。

免疫をあげる具体的な方法は次回に・・・・

お米の話

玄米は体にいいですか?と良く聞かれます。何を隠そう、私も2,3年前まで玄米を好んで食べていました。少し歯ごたえがあるけど、ゆっくりかみしめると美味しいし、慣れたら単純な味の白米が物足りなく感じるくらい、家族も結構気に入っていました。

玄米はもみ殻を除いたお米であり、周囲のぬか部分を削り落としたものが白米。白米は大半が糖質なので栄養バランスとしては栄養豊富な外皮を含んだ玄米の方が当然優れています。ぬかの部分には白米にはない栄養素としてビタミンB1をはじめとするビタミンや各種ミネラル、食物線維などが多く含まれています。糖質の吸収のゆっくりさも、急激に血糖を上げないという意味で玄米に軍配が上がりそうです。

それなら文句なしに玄米は体にいいじゃないか、と思いますよね?私もそう思っていた時期もありましたし、多少のデメリットを耳にしても、メリットを打ち消すほどではないと考えていました。ですが、・・・です。

玄米にも欠点はあります。

①脂質の多いぬか部分は酸化しやすい。これは、特に夏場は冷蔵庫で保管するとか、一度にたくさん買わない事で対処可能。

②ぬか部分は農薬の濃度が高い。これはちょっとお高くなりますが無農薬米を選べば解決。

③玄米にはフィチン酸というミネラルをくっつける成分が含まれており、ミネラル不足になる。(あら、ミネラルが多いと思って玄米食べているのに??)これは発芽玄米ならばかなり軽減するそう。

④消化に重いため腸内環境を悪化させる傾向がある。

特に④の理由は解決策が難しいため、腸内環境を重要視する分子栄養学の世界では玄米はあまり推奨されていません。

植物は、紫外線にさらされるため、抗酸化物質や食物線維が豊富というメリットの反面、動物から種(子孫)を守るため、動物にとってはうっすら毒になる物質を種子に含有していることが知られています。

玄米も種です。紫外線から身を守る抗酸化物質が豊富な事も、玄米のフィチン酸も動けぬ植物の抵抗なんだそうです。

お米の消化についてもう一つ、お米のデンプンの種類を知っておくと良いと思います。お米のデンプンにはアミロースとアミロペクチンがあります。アミロースは化学構造が単純で、比較的消化しやすいデンプンです。品種で言えばササニシキ系のお米。一方、アミロペクチンは枝分かれの多い複雑な形であるためモチモチっとしてちょっと消化の負担が重いデンプンです。品種で言えばコシヒカリ系。スーパーの店頭に並ぶお米の大半はコシヒカリ系でモチモチ感が多いものです。モチモチは日本人好みなんですね。

ちなみに、モチモチといえば・・・モチ米は100%アミロペクチン米。古来からお餅は日本の文化や風習とゆかりの深い食べ物ですが、お祝い事やお祭り、お正月など晴れの日と悲しみ事の忌の日に限定して食されたのには意味があるのかも知れません。

何を食べても元気な人はそこまで考える必要はありませんが、何らかの病気あるいは体調不良を自覚されている方は腸環境が悪い確率が高いです。

そんなこんな紆余曲折の末、我が家は現在、無農薬ササニシキの5分搗き米を採用しています。そのうちまた意見が変わって違うものを採用しているかも知れませんが、そこは何を今自分が優先しているか、それぞれ各個人が選択すればよいと思っています。

様々な不調の原因、上咽頭炎

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上咽頭ってご存知ですか?喉の奥と鼻の奥の境目、図の赤丸のあたりの部位の事です。口を大きく開けて見える喉ちんこから上の裏側が上咽頭というイメージ。

上咽頭は、ウイルスや有害物質を吸い込むと普通のうがいや咳などでは取れにくくたまりやすいため、リンパ組織たくさん集まっていて、炎症が起こりやすい場所です。

鼻の穴( がいこう といいます)は二つで、絶え間なく働いているようで実は左右交互に休んでいるのだそうですが、上咽頭部では一つに合流して気道の方に曲がっている、吹き溜まりのような形。私たちが一日に吸う空気の量は1万リットル、500ミリ・リットルのペットボトル2万本に相当するのだそうですが、そこにウイルや有害物質がたくさん含まれていたら?そのために喉の他の部位と違ってリンパ組織が発達して、外来異物と常に戦ってくれているというわけなんです。

上咽頭炎が急性期だと、鼻と喉の間が痛いとか痰がたくさん出る、微熱が出るなどの症状があります。症状だけでは普通の喉風邪と区別がつきませんね。免疫がしっかりしている方ならば風邪と同じように自然治癒します。でも、免疫が弱くて炎症を収束できない方、アレルギー性鼻炎などでしょっちゅう炎症を繰り返す方などは、上咽頭炎が慢性化してしまう場合も多く、中には10年以上、この症状で苦しんでいる人、逆にそうとは気づかないでいる人がいるのが問題なんです。

慢性上咽頭炎が引き起こす症状

病巣感染と言って、体のどこかに感染症や慢性炎症があると、その影響で体中の様々な不調を起こす原因になると言われています。慢性上咽頭炎も病巣感染の一つです。

上咽頭炎の予防

まず、口呼吸で口の中が乾燥すると、上咽頭にウイルスが付着しやすくなるので鼻呼吸をすることがとても重要です。お昼間は極力意識して用のないときは口を閉じるようにしましょう。マスクを着用するとついつい口呼吸になっている人が多いと言われていますので、要注意です。

意外と夜間に無意識のうちに口呼吸になっている人が多いんですよ。朝起きたとき、口が乾いていたり、のどが痛くなっている方、口にテープを貼る方法、なかなかいいですよ。実は私もやってます。市販のテープもありますが、かぶれさえしなければ、普通の絆創膏でいいです。ただし、かぶれやすい方はちょっとごわつきますが、粘着力は弱いですがビニールテープがかぶれにくいです。それでもだめなら・・・難しいかもしれません(すみません)。

そして、鼻うがい。生理食塩水で鼻の穴を洗浄するというもの。生理食塩水の濃度ならば痛くはありません。かなりの予防効果があるようですが、洗いすぎもかえって悪いという意見もありますし、あまりに鼻詰まりの強い方は難しく、人によっては水が耳の方に流れて中耳炎になってしまう事もあるようなので、無理は禁物です。鼻うがいはハードルの高い物だと感じている人も多いようですが、やってみれば意外と簡単で、気持ちいいですよ。花粉の時期には花粉を洗い流す効果もありまから、できる人は是非実践してみてください。

痛む場所と痛みの原因の場所が違う

 咽頭痛、いわゆるのどの痛みというと、首の真ん中の辺りに感じる人がほとんど。インフルエンザの時も、そこに痛みを感じた経験があると思いますが、実際に綿棒で検査されるのは鼻の奥の上咽頭です。上咽頭でウイスルが急激に増殖するからなのですが、そこに痛みがあることはあまりありません。ところが実は、咽頭痛の原因の90%は上咽頭の炎症という報告があります。痛む場所と原因の場所が違っているのとなると、痛む場所だけを調べても正体はわかりません。

慢性上咽頭炎とは? 10年以上悩んだ症状の原因はこれだった

 10年以上前から、のどのヒリヒリと焼けつく感じに悩いたけれど、通常の診察では特に異常がなく、これといった治療もありません。

上咽頭炎を見てもらえる(これが重要)耳鼻科で喉頭内視鏡で上咽頭の腫れを指摘されました。(粘膜表面を綿棒でこすってみると、じわじわと出血(写真上)。本来は、粘膜だからといって簡単に出血するようなことはありません。)こする治療を続けたところ、4か月もすると、強くこすっても出血することがなくなり(写真下)、同時にヒリヒリした痛みも消失。

こすって治す上咽頭擦過治療EAT療法

慢性上咽頭炎に対し、塩化亜鉛という強い刺激物質を塗布して綿棒でこするというこの治療は、上咽頭擦過治療(Epipharyngeal Abrasive Therapy:EATイート)といいます。まさに傷口に塩を塗りつけるかのような、とても原始的な治療で、治療の際の痛み(炎症が強いほど激痛)もあります。

栄養療法的に慢性炎症として多いのが、①腸の炎症、②脂肪肝 ③上咽頭炎

慢性炎症は直接的、間接的にいろいろな症状や病気を引き起こしていることが分かってきています。長年続くのどの痛み、鼻づまり、後鼻漏(咽に流れる痰や鼻汁)、首回りのいろいろな症状はもちろん、頭がボーっとする、疲れやすいなどの症状で悩んでいる人は一度、慢性上咽頭炎を疑ってみてはいかがでしょうか。

慢性上咽頭炎については、いまだ診断・治療が標準化されておらず、耳鼻科の先生でもそれを診断治療して下さるところは少ないのが現状ですが、2019年11月、日本耳鼻咽喉科学会の関連学会である日本口腔・咽頭科学会の中で、上咽頭擦過療法検討委員会が発足したそうです。同委員会の活動により、慢性上咽頭炎についてさらに多くの知見が集まって、広く知られるとともに診断治療が受けられる耳鼻科クリニックが増えてくれたらうれしいですね。

健康を作る油病気を作る油

このタイトルで、去る7/15にクリニックでセミナーを開催しました。

今年6月にクリニックをオープンして開始したばかりの月1回のセミナーの第2弾。セミナーで栄養療法の事を広く皆さんに知っていただくのが、クリニックオープン前からの一つの目標だったのです。宣伝も不十分、日程もクリニックの休診時間を利用しての木曜日午後なので、今回まで参加費がモニター価格の1000円と格安ながら、参加人数はたった5名ですが、一人でも参加して下さる方がいらっしゃったら頑張って続けるつもりです。

余談ですが、スライドつくりにかけた時間は10時間以上、ポスターやレジュメ作成、その他もろもろの経費などを考えると、果たして私の時給は300円もで出ただろうか?もちろん、セミナーで喋る内容を習得するのにかけた莫大な費用は抜いての話です。というわけで、次回からは2000円の参加費とさせていただきます。中身は5000円払っても損はないと言っていただけるくらいのものを目指します!

これは、私のクリニックの1時間の自費カウンセリングがうけられないとおっしゃる患者さんや、患者さん予備軍の方に、複数でお話を聞いていただくことによってお得に知識を得て頂くのが目的。

とまあ、つまらぬ前置きはさておき、先日のセミナーの内容。

油の良しあしを理解するために必要な最低限の化学的知識として脂質の構造、脂質の種類、その働き、脂肪の消化吸収、有害な脂質、市販の油の価格と製法の違い、厚生労働省の対応の諸外国との違い、腸内細菌との関係、などについて1時間お話しました。

ざっくりと結論を言えば、

①脂肪酸は炭素と水素と酸素でできていて、炭素の長さが様々で、短いものは短鎖脂肪酸(常温で液体、水に溶ける)、中くらいは中鎖脂肪酸(MCT:常温で液体)、長いものは長鎖脂肪酸(常温で固体)。エネルギー源となる他、細胞膜の成分として非常に重要な働きをしている。

②飽和脂肪酸(主に動物性の油とココナッツオイル)は巷で言われるほど悪くないエネルギー摂取源であり、そのひとつである前述したMCTオイルでのエネルギー摂取には様々なメリットがある(前述のとおり)。

②不飽和脂肪酸には炭素が水素と手をつないでいない二重結合があり、その位置と数によって性質が異なる。アミノ基(Ch3)の末端から数えて最初の二重結合が9番目、6番目、3番目の物をそれぞれオメガ9、オメガ6,オメガ3と称し、その順に二重結合が増え、二重結合が多いほど紫外線、熱などでより酸化しやすい。

③加熱に使用するならオメガ9の多いオリーブオイル、こめ油などがお勧め。

④脂質の吸収には脂質を包み込んで血液の溶けやすくする「胆汁酸」、エネルギー産生工場のミトコンドリアに運び込むシャトルバスの働きをする「カルニチン」が必要

⑤オメガ6は炎症や血液の凝固を促進し、オメガ3はその反対の働きをする。いずれも生体に必要不可欠な脂肪酸だが、現在の食事では圧倒的にオメガ6の摂りすぎであり、それが様々な病気の原因になっている。オメガ6を極力控え、オメガ3を積極的に「生で」摂ることが望ましい。

⑥油の生成には圧搾法(原材料をつぶして圧のみで絞り出す昔ながらの製法コールドプレス)、溶剤抽出法(ヘキサンという有害な溶剤で原材料から油を溶かし出し、加熱することによってヘキサンを除去する製法)が。溶剤抽出法は圧搾法の約50分の1の時間で生成することができ、安価で大量生産に向くが、加熱により抗酸化物質などの有用成分がなくなり、有害な物質ができてしまう可能性が高くなる。また油の原料や家畜の飼料ならば大豆やトウモロコシの産地や遺伝子組み換えなどの表記義務がないので、安価なオメガ6オイルのほとんどが遺伝子組み換えの輸入穀物が使用されている。

⑦オメガ6の安価な油をさらに加工して固まりやすくしたものがトランス脂肪酸。これも以前記載したように、諸外国では表示義務から禁止まで様々な対策がとられているが、日本には表示義務すらもなく野放し。

⑧オリーブオイルは体にいいと言われるが、普通のスーパーで売られているオリーブオイルの表示も日本では管理がずさんで、例えば1敵でもエクストラバージンオイル(圧搾法の一番搾り)が入っていれば「エクストラバージンオリーブオイル」と名乗れる。そもそもプラスチック容器や透明の瓶に入ったものは信用できない。

⑨腸内細菌がオメガ6のオイルを体に有用な脂質に変換しているという報告がある! 例えばこんな論文が⇒⇒⇒

大衆情報に惑わされず正しい知識を持って食材を選ぶことが必要で、他の事は少し節約しても、かけがえのない健康のために、本物の食材の為にお金を使う事を惜しまないって、大事です。

そして、それは、良心的に本物を作ってくれている生産者を応援する事にもなるんですから・・

骨粗しょう症の薬に要注意

女性ホルモンのエストロゲンが骨の代謝に深く関わっているため、特に女性は更年期以後急激に骨粗しょう症のリスクが上がります。今回は骨粗しょう症とその治療薬、そして栄養との関係のお話です。

骨組織は硬くて不変なように思われますが、実は一定のサイクルで日々古いものが壊され、新しいものに生まれ変わっています。これを骨代謝(リモデリング)と言います。

骨代謝に関わる細胞には、新しい細胞を作り出す(骨形成)「骨芽細胞」、骨の約9割を占める「骨細胞」と、古い骨を溶かして壊す(骨吸収)「破骨細胞」があります。1年で約30%の骨が新しく生まれ変わるとされています。

骨の強度を考える際に「骨量」「骨密度」「骨質」という言葉があります。「骨量」は骨全体のミネラルの量、「骨密度」は骨量を骨の体積で割ったミネラルの密度。「骨質」は骨のミネラル以外の要素を含めた骨の強度です。

骨粗しょう症の検査に「骨密度」とはよく聞かれますが、実は「骨質」が良くないと骨密度が高くても骨折しやすいという事になりかねません。どういうことでしょうか?

それは、カルシウム以外のミネラルとコラーゲンにヒントがあります。

骨を形作っている主な成分は、カルシウムとコラーゲン。確かにミネラルの中ではカルシウムとリンが最も多いのですが、カルシウムを上手く取り込んで骨にするためにはマグネシウムが不可欠ですし、その反応を助ける酵素は蛋白質でできていて、微量ミネラルの亜鉛やマグネシウムが補因子(酵素の一部)となっています。また、コラーゲンもタンパク質ですから、それらの栄養素が十分摂取され、機能して初めて骨が形成されるのです。ちなみに、リンは皮肉にも食品添加物から結構たくさん取られている方が多いため、現在欠乏することはあまりありません。

また、常時骨に一定の圧がかかることも良好な骨のリモデリングを促進するうえで非常に重要です。若い自転車競技の選手が自転車に乗る練習ばかりしていて足の骨にほとんど荷重がかからない状況が続いたら、毎日運動しているはずなのに骨粗しょう症になって骨折したというエピソードもあります。「地に足を着けて」運動することが重要という興味深いお話です。

つまり、骨量のミネラルが多くてもバランスが悪かったり、たんぱく質が不足したり、適切な運動を怠ると強い骨にはならないのです。

ところで骨量を増やす画期的な薬、ビスホスホネート製剤(BP製剤)を骨粗しょう症の治療の為に内服または注射していらっしゃる方はとても多いのですが、その作用機序は、破骨細胞の働きを抑え骨量を増やすというものです。骨量を増やすという意味では画期的なお薬です。

しかし、前述した本来人体に備わっている骨代謝が抑制され、古い骨が排除されることなく残り、骨質としては悪化してしまう可能性があるという事をご存知でしょうか?いわば、ぼろ屋の廃材を残したまま新しい材料で修繕し、材料がたくさんあるから丈夫と言っているようなものと言えば、叱られるかもしれませんが、私はそう思っています。

現に非常にまれではありますが、BP製剤内服中に抜歯などの処置をして、顎骨壊死という悲惨な副作用が起こる例が報告されているのです。非常にまれだから骨折するよりましと思われるかもしれませんが、ひとたび顎骨壊死になると有効な治療法はなく、内服を中止しても進行する事すらあります。また、長期投与で骨折のリスクが増加するという報告もあるんですよ。

私の経験ですが、永年BP製剤を飲んでいて骨密度が横ばいだった元気な90歳の患者さんの血清亜鉛濃度が非常に低値だったため、タンパク質をしっかり摂る食事指導と共に亜鉛のサプリメントを投与したところ、劇的に骨密度が上昇したという例もあります。

もちろん、BP製剤を使用することが医療界のガイドラインでは推奨されていますから、100%否定するわけにいきませんが、せめて食事、運動で骨を強くする努力をしてから、服薬を検討してはいかがでしょうか?

コロナ後遺症と栄養

コロナ禍と言われてもう1年以上になります。コロナ感染自体も大きな問題になっていますが、後遺症で苦しむ人たちが大勢いらっしゃることも、コロナを必要以上に恐れさせる要因になっています。

コロナ後遺症の症状:出典は

新型コロナ後遺症の頻度と持続期間:yahoo newsより

yahoo news。感染症専門医、忽那賢志先生の記事から抜粋させて頂きました。

①肺の症状の痕跡:息苦しさ、胸の痛みや違和感、咳

②だるさ、脱毛、PTSD、不眠、記憶障害、集中直低下、抑うつ

比較的頻度が高く、持続期間が長いな、と改めて思います。

今のところ対処法はないとされていて、「いつかは治る可能性が高い。」と慰められている現状。

予防法はコロナに罹らない事しかないので、出来るだけ外出せず、3密を避けるということです。

①は肺の炎症の名残ですから、ある程度代償機能が働くようにならないと改善されないと思いますが、私は当初から、②の症状は栄養不足であろうと思っています。栄養が不足すると感染症に罹りやすく重症化しやすいですし、重症化すれば強い炎症で、様々な栄養素が総動員されて消費されるので、病後はさらに栄養不足が進みます。

そうすると、②のような症状が起こるのは分子栄養学的には当然なんです。そして②が改善して体と頭が動くようになれば、きっと①の回復も早くなるだろうと。とはいえ、そのような患者さんに出会ったこともなく、ましてや治療したこともないので、大きな声では言えませんでした。

先日、たまたま、お知り合いの息子さんがコロナ感染に見舞われ、発熱はしたものの元気にしていると聞いておりましたが、治癒後しばらくして、激しい脱毛が起こったと相談されました。そこで、おそらく感染で消耗されたであろうグルタミン、ビタミンミネラル、特に亜鉛を補充する適切なサプリメントをご紹介したところ、なんと、たった10日で劇的に改善という嬉しい報告をいただきました。

彼は若いし、まだ比較的早期の対処できたので、皆が皆そう劇的に上手くいくとは思い難いですが、手をこまねいて長期間自然治癒を待つだけよりは、やってみる価値がずっと高いと思いました。

そして早速「コロナ後遺症の診察始めました。」とクリニックのホームページにご案内しましたよ。こんなことは、大きな病院に勤務していたら、「エビデンスがない」とか「専門外」とか言われる可能性もありますし、良くても「倫理委員会を通すために書類を書いて会議にかけて判断する」となるので、弱小のクリニックでよかった、と思っています。

とはいえ、患者さんはそのお知り合いの息子さんまだ一人。どうかどうか、困っているコロナ患者さんが私のブログかホームページを見つけてくれますように・・・

新型栄養失調 最終章

新型栄養失調の原因

1.そもそも食べるメニューが偏っている。

2.パック野菜(カット野菜、水煮野菜)があふれている。

3.精製度の高い調味料

4.食品添加物

5.食材そのものの栄養価の低下

6.ストレス、消化機能、腸内環境・・・・・・・・

新型栄養失調の原因の最後は消化機能を取り巻く環境です。

ストレスが健康に様々な悪影響を及ぼす事例は枚挙にいとまがありませんが、ここでは、新型栄養失調に拍車をかける影響という観点で考えてみました。

身体的、精神的ストレスがあると、ストレスホルモン(副腎皮質ステロイド)を多く分泌してそれに対抗しようと体が反応します。ステロイドの主材料はコレステロール。それを作る段階で大量のビタミンCが必要です。

そして、ストレスは交感神経の緊張状態なので、副交感神経支配下の消化管の機能は手薄になり、消化吸収能力が低下します。

消化管の機能の低下とは、食べたものを分解して吸収する能力、蠕動運動(排便に必要な腸の動き)の低下ということです。ちゃんと吸収してくれなければせっかく食べた食物の栄養が体に入ってきてくれませんし、排便が滞れば有害物質の排出ができなくなります。

腸内環境をつくる最大の要因は腸内細菌ですが、抗生剤でダメージを受けたり、以前書いた砂糖、小麦、乳製品、加工食品などにより消化管の炎症が起こると、腸内細菌のバランは大きく崩れます。そうすると栄養不足はもちろん、免疫や脳機能にも多大な影響が及んで、アレルギー、うつ、自閉症、癌、自己免疫疾患様々な疾患の原因になりうることも分かっています。

大量生産大量消費時代。手軽で安価な商品が巷にあふれています。知らなければ思いもしない食べ物が健康被害を招いていることをよく知って、賢く商品を選ぶ意識を持ちましょう。少し高価でも、健康で暮らす幸せの為によい食材を選ぶって、とても重要と思いませんか?良いものを良心的に作っている生産者を応援する事にもなります。何かをちょっとがまんして、良い食材を買う賢い消費者になりましょうよ。

賢い消費者と言えば・・・ぜひご紹介したい絵本があります!!

藤原ひろのぶさんの「買い物は投票なんだ」。 私たちが、知らず知らずのうちにいかに地球を汚しているか、一人一人の意識がいかに大切か、を、ほうさんの優しいタッチのかわいらしい絵とともに具体的な例を挙げて分かりやすく書いています。

子供のころからそういう意識を持つように大人が教えてあげたいものです。

低下している食材の栄養価 その2

新型栄養失調の原因

1.そもそも食べるメニューが偏っている。

2.パック野菜(カット野菜、水煮野菜)があふれている。

3.精製度の高い調味料

4.食品添加物

5.食材そのものの栄養価の低下

6.ストレス、消化機能、腸内環境・・・・・・・・

畜産物と海産物はそのものの栄養価の低下というよりは、栄養価の働きを阻害すると言った方が正しいかもしれません。

まず畜産物。動物のお肉は主要な蛋白源。草を食べてお肉を提供してくれている牛や豚は当然草食動物。牛や豚は食べた草をタンパク質に置き換える消化酵素、腸内細菌を持っているんです。

昔は干し草を餌として育てていた牛や豚、現在は90%はトウモロコシが餌になっています。草を餌にした牛とトウモロコシを餌にした牛では脂質の違いにより栄養価が格段に変わってくるのですが、それは後日に置いとくとして・・・・

トウモロコシや大豆の大半は輸入の物。納豆や豆腐の材料や大豆そのものには「遺伝子組み換えでない」大豆を使っている、と表示していますが、家畜のエサには表示義務がないので、ほとんどが遺伝子組み換え・・・なぜ遺伝子を組み換えるのか、それは強い農薬でも枯れない品種にするためです。ってことは、遺伝子組み換えそのものの不気味さに加えて、成長段階で強い農薬が散布されているってことですよね。

遺伝子が組み換えられた作物は本来地球上にない物だから、我々地球上の生物には、それを消化吸収したり体の細胞として利用する機能が、うまく作動しない可能性があるのではないかと危惧されています。

ってことは、栄養不足と同様に生体の機能が回りにくくなります。いやそれ以上に有害?

そして、最後に海産物。海産物は日本人が古来から食料としてきた、日本人の体質に合った食材。魚や海藻は栄養豊富で、ぜひ食卓に取り入れたいものです。

しかし、産業革命以来、海には多くの有害物質が流れこみ蓄積されています。火力発電所などから排出される有機水銀がその代表です。日本はじめアジアの近海の海水の水銀量は世界でも特に多いのです。

水銀は食物連鎖の上位の大型魚になるほど蓄積され、濃縮されています。あの腰の重い厚生労働省が妊婦さんに「マグロを食べる量を制限せよ」と明言しているのはそのためです。水銀の蓄積の究極は水俣病ですよね。そこまでいかずとも、大型魚をたくさん食べると、水銀が蓄積されていきます。

水銀のなにが問題か。

水銀は金属です。人間の体に必要なミネラルも金属です。化学構造の似た(元素の最外角の電子の数が同じ)亜鉛が働くべきところに水銀が邪魔をしに来ます。亜鉛は300を超える酵素(体の反応を促進する物質)の構成因子として重要なミネラルですから、300以上の反応の邪魔をするという事です。

様々な症状の多くは、亜鉛欠乏の症状と関連があると考えられます。血糖の調節、免疫、細胞分裂、炎症、精神症状・・・あげればキリのない多くの重要な働きが阻害されるのです。

フィッシュオイルは摂りたい。でも、魚を食べるのは注意が必要。そこで、出来るだけ水銀が濃縮されていない小魚を食べるようにしましょう。目安はまな板の上にのる大きさまで。鯛くらいまでの大きさの魚を心がけましょう。

低下している食材の栄養価 その1

新型栄養失調の原因

1.そもそも食べるメニューが偏っている。

2.パック野菜(カット野菜、水煮野菜)があふれている。

3.精製度の高い調味料

4.食品添加物

5.食材そのものの栄養価の低下

6.ストレス、消化機能、腸内環境・・・・・・・・

加工食品の栄養価が下がっていることは、すでに述べました。それならば、生鮮食品を買ってきて、自分で調理をすれば解決するはずですね。もちろんそれが理想ですし、有効です。

ですが、その生鮮食品自体の栄養に問題があるとしたら・・・?

まずは農産物。私は、いつも少し高くても国産の食材を買う事にしています。第一の理由は、日本の農家を応援したいから。

何を隠そう私の実家はみかん農家です。大地が育む作物のおいしさと有難さを肌で感じ、それを作っている農家の姿を見て育ちましたから、医者の中では最も農業に対して思い入れが深い人間の一人だと勝手に自負しています。

輸入作物のポストハーベストの問題もあります。ポストハーベストとは、収穫後に防腐の為に使用する農薬の事です。輸入レモンがいつまでたってもカビないのを気持ち悪く思った事がある人、いらっしゃいませんか?

しかし、実は日本の農薬の規制の甘さは世界トップクラスって、ご存知でしたか?様々な政治的な理由で、農作物はかつてないほど農薬にさらされています。

農薬そのものが作物に残っている(残留農薬)のも問題ですが、実はもっと深刻な問題は土。ただし、日本の農家さんたちの名誉のため言っておきますが、個々の農家さんそれぞれに良い土づくりに力を入れていて、土の質は世界のなかでも至って優良であるというデータがあります。決して輸入作物のほうが良いというつもりではさらさらありません。その前提でのお話です。

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図1 腸絨毛の顕微鏡写真

余談ですが、図1は腸の粘膜の顕微鏡像です。腸絨毛という細長い凸凹があり、見えにくいですがその表面にさらに細い微絨毛があて、表面積を大きくした粘膜の表面が腸管内に突き出して腸にやってきた栄養素を吸収しています。

植物の根っこ

図2は実物大でちょっとイメージしにくいかもしれませんが、植物の根が太い根からひげ根を出して表面積を広げ、土から栄養素を吸い上げるのとそっくりでしょ?

農薬は生物が生きていく営みのどこかの過程を阻害するものですから、野菜につく虫を殺すために散布した農薬はやがて土に流れ、土の中の微生物を死滅させます。

ヒトの腸内細菌がお腹の中で免疫を育て、ビタミンや酪酸などの栄養素を作り、宿主の体の機能を支えているのと同様に、土の中の無数の微生物たちは、宿主である「大地」を健全に保つ役割を果たしています。

ですから農薬で、土中の微生物が死滅したら、土の免疫力は弱って、さらに虫にやられやすくなります。そうすると、もっと強い農薬が必要になる・・・ちょうど抗生物質を使いすぎて腸内細菌がダメージを受け、免疫が弱ってしまう人間のように・・・

そうすると、採れた野菜は、一見きれいで栄養豊富そうに見えても、実はそこに含まれる栄養素、特にミネラル・ビタミンの量が、何十年か前に比べ格段に少なくなっているのだそうです。

ましてやそのような作物をさらに加工して栄養価を捨て、それを日常的に食べ続けたらどうなるか・・・想像すれば、分かりますよね。

次は、畜産物と海産物の話です。