受け身の言葉を主体的・能動的な言葉に変えて使う習慣をつけることで、エネルギー値が上がります

私のクリニックの見つけにくいホームページを見つけてクリニックに来てくださる患者さんは、ほとんどの方が頑張り屋さんです。まじめで家族思いで仕事熱心で、勉強家で努力家で、栄養の知識も持ってらっしゃり、食事にも気を配って生活して、何とか元気になりたいと思って、でもなかなか元気が出ない方が多いんです。

そんな患者さんに「先生のブログを読んで、とても共感しました。」と言っていただくことが一度ならずあって、こんな更新の遅い、拙いブログを読んでくださる人が今もいるんだと、改めて思いました。

食事も栄養もとても大切ですが、栄養を体に取り入れるには、口から始まり、肛門に至る消化管という長~い管が正常に働いてくれることが大前提です。ストレスや緊張で消化管の機能が下がるので、栄養を正しく摂ることに頑張りすぎることも、皮肉なことに栄養の吸収を妨げてしまいます。

さらに、栄養を摂る最大の目的はエネルギーを作ること。全身のたった2%の重量の脳が安静時でも約20%のエネルギーを消費してるってご存知でしたか?つまり、せっかく栄養を摂っても、頭であれこれ考えすぎて悩みすぎると、ただでさえエネルギー食いの脳に多くのエネルギーつまり栄養が奪われてしまいます。

エネルギーを作る事と消費する事の収支の結果=その方の元気度を「エネルギー値」と言いますが、このエネルギー値、心の持ちよう、思考パターンに大きく左右されます。

何を隠そうこの私、栄養療法家にあるまじき、自分の体調不良(明らかに寝不足・過労が原因)を白状せねばなりません。

明らかなオーバーワークとポリシーと違う仕事に追われた勤務医から一転、栄養療法クリニックを開設して、完全予約制で自分のポリシーを曲げずに診療するようになって、ずいぶんと時間にも心にも余裕ができたと思っていたのですが・・・

日々より良い診療のためにあれこれ資料を準備したり、業者さんと交渉したり、もちろん勉強もしたり、やりがいのある楽しい作業と思って、睡眠時間をけずり頑張っていました。

一方、慣れない事務作業、眼科スタッフに栄養療法の患者さんの会計処理をお願いして慣れない仕事の負担を増やすことへの罪悪感、保険診療の何倍もの労力をかけているとはいえ、保険診療の何倍もの自費料金をいただくことの罪悪感。

とどめは娘の里帰り出産で、「まごわやさしい」、ならぬ、「まごはかわいい」で頑張りすぎた・・・泣 などなどでとうとう年末にひどい風邪をひいてしまいました。

そして、そんなこんなで投稿が滞っている間に、ブログの優先順位を自ら下げてしまっていました。そして、おさぼり期間が長くなると、だんだんハードルが上がって、ますます書けなくなって・・・

ところが、先日、セミナーの準備のため、心理関係の本や動画を見直していて、受け身の言葉を主体的な言葉におきかえるワークのスライドを久々に見ました。「300万円貯まったらお店を開きます。」を「300万円貯めてお店を開きます」におきかえる、「時間がない」という言葉を「時間を作ってない」におきかえる、とか。しかも自分が作って、セミナーで聞いて下さっている方々に偉そうに講義したスライド(笑)

ブログを書く時間、「ない」んじゃなくて「作ってなかったんだ」「ハードルが上がった」んじゃなくて自分で「ハードルを上げていた」と今さら気づいて反省。まあ、私の人生、こんなことの繰り返しなんですが、前向きに考えて再度ブログを更新することに・・・読んでくださる奇特な方に、元気になっていただけるような情報発信をやっぱりやろうと思います。

こんな私が言っても説得力ゼロですが、再度言います。受け身の言葉を主体的、能動的な言葉に変えて使う習慣をつけることで、エネルギー値が上がるんですよ~

おさぼりする前の最後のブログは「亜鉛」の話、しかも①。続きは下書きがすでにほぼできていたので、明日から話を一旦「栄養」に戻して、「亜鉛」を完結したいと思います。

亜鉛① 亜鉛のはたらき

ブログの更新が滞っています・・・

去る8月18日、月1回恒例のクリニックセミナーを開催しました。テーマは「亜鉛」

セミナーが終わってすぐにこのブログを書き始めたはずだったのに、「亜鉛」が重要すぎてなかなかまとまらず、気が付いたらすでに10月!

残念ながら、西洋医学ではあまり「栄養」が重視されませんが、こと「亜鉛」に限っては近年基礎研究が進み、様々な働きがあることが実臨床のレベルにまで知らされるようになり、亜鉛欠乏症という概念が浸透し、亜鉛補充薬を積極的に使用する動きが出てきています。

まずはその亜鉛の多彩なはたらき。

亜鉛の働きはわかっていることだけでも数えきれないほどたくさんありますが、主なはたらきとして知られているのは

①触媒機能:300種類以上の酵素の必須成分

触媒というのは、例えばAという物質をBに変える化学反応を促進する物質の事です。生体内では「酵素」と言います。酵素という名前の方がなじみがあるかもしれませんね。酵素は、放っておくとAからBに変化するのに何万年もかかる反応、あるいはむしろBがAになってしまうかもしれない反応を、体の機能に必要とあれば瞬時に起こしてくれるんです。つまり、月並みですが生きて行くために必須のアイテムなので、亜鉛が300種類の酵素にかかわっているというだけでも十分に重要な栄養素であることは間違いないですね。

でも、皮肉なことにあまりに多くの働きがあるために、欠乏していても症状が多彩すぎて特徴がつかみにくく、欠乏症状に気づきにくいのが特徴です。

②構造機能:タンパク質を形作り、機能させるための成分

①や④のような機能を果たしている物質の主成分はほぼすべてタンパク質なのですが、ここで亜鉛が必要なのは、そのタンパク質を形作る構造の構成要素としても亜鉛が必要不可欠、つまり、亜鉛がなければ酵素やそれ以外の機能を果たすタンパク質をつくることができないっていう事です。

③ATPからエネルギーを取り出す&炎症制御、調整

私たちの細胞や体を動かす電力のような物はATPですが、細胞内のATPからエネルギーを取り出すのに ALP(アルカリフォスファターゼ)という酵素が必要です。健康診断でよく測定される酵素ですが、 亜鉛が構成要素として必要ですので、亜鉛が極端に少ないとたちまち元気がなくなってしまいます。また、細胞の外にATPが多すぎると炎症を起こしやすくなってしまいますが、この暴走を抑えるのも亜鉛です。また、亜鉛イオンの濃度そのものが細胞の内外の情報を伝達して様々な機能を調節する信号のような役割を果たしています。

④抗酸化・解毒機能

活性酸素や毒素は炎症の原因になったり、体の機能を妨げたり、細胞を変性させて正常に働かなくさせますが、亜鉛を含有するメタロチオネインというタンパク質は水銀やカドミウムなどの有害重金属を解毒・排泄したり、強力な抗酸化物質として活性酸素を取り除いたりしてくれています。

⑤細胞分裂に不可欠

亜鉛は遺伝子DNAの複製の際に2重らせん構造(お父さん側とお母さん側の2本のDNAがらせん状に絡まった状態)を解列する際に働く酵素の補因子です。亜鉛が足りなければDNAの複製が上手く起こりません。これは日々細胞分裂を繰り返し入れ替わって元気な状態を保っている全身のすべての細胞にとって亜鉛が必要不可欠という事ですが、当然成長期には特に重要なミネラルとなります。

⑥骨の成長

成長期と言えば、細胞分裂も盛んですが、何といっても骨を増やすことが必要です。前述③で亜鉛は骨を作る際に必要なリンを渡すALPという酵素の補因子になっていると言いましたが、ALPは骨を成長させるのにも必要です。ですから、ALPは成長期には大人の何倍もの数値となっているのが普通で、当然亜鉛の需要が急激に増します。

⑦その他

赤血球の形成、インスリンの安定化、神経伝達物質の生成(脳の機能)、免疫細胞の活性化など多くのはたらきに関わっています。

たくさんありすぎて書ききれませんが、ここにあげただけでも亜鉛がいかに重要なミネラルであるか、という事をお分かりいただけたか、と思います。

鉄欠乏の血液データ 深読み編

検診やドック、医療機関でのや血液検査の結果をご覧になったことがあると思います。

あなたの検査データの横には必ず「基準値」と言われる値が示されていて、その「基準値」を下回っていれば”L”(Low)または”↓”、上回っていれば ”H”(High)または”↑”  という印がついていますね。基準値の中に入っていれば「合格」です。

でも、この「基準値」は「正常値」ではないってご存知ですか?どうやって決められた数値かと言いますと、検査会社の自称健康(病院で病気だとは診断されていない)職員さん十数人~数十人の検査値の分布の上下5%を除いた値。つまり、職員さんの平均値のような値なんです。

これはつまり、鉄を例に挙げると、貧血とは言われてないけど隠れ鉄欠乏の若い女性職員さんの多い会社だと、鉄欠乏の症状がすでにある人も多く含まれている可能性大、という事。

え?じゃあ、自分が鉄欠乏ではないか、どうやったらわかるの?

ご安心ください。検診などの検査データを見れば結構わかります。

鉄欠乏の見分け方

もっと詳しく知りたい方は以下を熟読してください。

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その症状、鉄欠乏ではないですか?

 あなたも~隠れ鉄欠乏~かも?

去る7月21日、今泉眼科で恒例の「ココロとからだセミナー」を開催しました。

今月のテーマは「鉄欠乏」。鉄欠乏と言えば「貧血」。貧血は、男性に比べ、生理のある女性に圧倒的に多い。貧血にはなったことがないからご自分には関係なと思われたあなた、日本人女性の鉄欠乏は深刻なんですよ。20代~40代の女性の実に60%以上が鉄欠乏というから、他人ごとではないかもしれません。

例えば、こんな症状・・・

□”立ちくらみ”や“めまい”がある

□頭痛になりやすい

□疲れやすい

階段を昇ると息切れがする

よくあざができる

□大きなカプセルが飲み込みにくい

病院で訴えたら「不定愁訴」なんて言われて、ややもすると、訴えの多い面倒な患者と思われるかもしれないような症状ですよね。

それで血液検査をして、貧血があれば「鉄欠乏」と診断されますが、「貧血」と診断されない場合、「異常がないから気のせいです。」とか「神経質にならずに」なんて言われちゃうことがあってしまう。そんな、貧血じゃない鉄欠乏があるっていうのが、今回のお話でした。

さらに、そんな症状がなくても

□生理のある女性  □成長期のお子様  □スポーツをよくする人

このような方は、「鉄」の需要が大きく、鉄欠乏のリスクが高いのです。

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副腎疲労の本当の正体

前回の復習。ストレスや炎症が慢性的に続くと、副腎のホルモンを多く必要とするため、副腎が酷使され、ついにはホルモンをつくる機能が低下することが副腎疲労という話でした。

副腎は生命活動に欠かせない重要な臓器ですから、その機能が低下して明らかな症状が出るまでに、体にはそれをバックアップする機能がちゃんとあるのです。

脳の縦断面

それが、視床下部-下垂体-副腎軸。左右の脳の中央、視覚や聴覚を大脳に中継する重要な働きをしている「視床」の少し前下方にある「視床下部」。そこから木の実のように垂れ下がる「脳下垂体」がキーになります。

視床下部-下垂体-副腎軸
hypothalamic-pituitary-adrenal-axis
HPA軸

副腎が平社員ならば、脳下垂体が課長、視床下部は部長。コルチゾールの消費量に比して副腎からの分泌量が足りなくなってくると、部長の視床下部が感知し、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンCRHを分泌して課長の脳下垂体に知らせ、それを受けた課長、脳下垂体は副腎皮質刺激ホルモンACTHの分泌量を増やして平社員の副腎に働きかけコルチゾール生成を促します。つまり、コルチゾールの在庫が減って生産が追い付かなっくなった時、部長が課長に、課長が平社員にはっぱをかけて働かせます。 これが視床下部-下垂体-副腎軸。

初めのうちは課長に言われて頑張る平社員ですが、そのうち頑張ろうにも力が出なくなり、生産量が減るので、部長がさらなるはっぱを課長にかけ、課長は平社員に・・・・これを繰り返すうちに、平社員はもちろん、課長も部長も疲弊してしまって、倒産寸前。みたいなことが脳と身体で起こってしまう。まるでブラック企業です。

これが「副腎疲労」の正体。 視床下部-下垂体-副腎軸
(hypothalamic-pituitary-adrenal-axis
HPA軸
) の障害とも言います。

そうなると生きて行くためには、使うエネルギーを極力節約する必要がありますから、体をだるくさせてあまり動かないようにし、頭も使わず働かないようにしてうつ病のような状態にする必要があるのです。そして、事ここに至ると、視床下部-下垂体が司令塔となっている甲状腺機能、成長ホルモンなども影響を受け、さらに多彩な症状を呈するようになってしまうんです。

これを改善するには、コルチゾールの浪費を減らすことが重要。

まず、体のどこかに炎症がないかどうか。ここで言う炎症とは一般的な「痛み、赤み、腫れ」などの症状を呈するものではなく、さほど自覚症状のないような、慢性の持続的な炎症。その代表は上咽頭炎(2021/7/21様々な不調の原因、上咽頭炎 を参照)、脂肪肝、歯周囲炎、そして腸(リーキーガットなど)。自覚症状がないのに、知らず知らずホルモンを浪費して不調の原因になっているのが特徴です。

次に、血糖の安定化。砂糖などの単純糖質を摂りすぎて血糖値スパイクを作ってしまうと、インスリンがドバっと出て急激に血糖を下げる。反動で下がりすぎた血糖値(低血糖)は命の危機ですから、手っ取り早く血糖を上げる砂糖やカフェインを渇望します。そしてまた血糖値スパイクが・・・という悪循環。この状態は無駄に血糖を上げるホルモンの出動を要し、コルチゾールもアドレナリンも無駄遣いされます。砂糖やドカ食いは色々ダメなんですが、こんな結果も招いてしまうんですね。(詳しくは、2022/1/26,2/6の低血糖 を参照)

そして、おそらくもっとも難しいのが精神的ストレス。あまりの場合には職場をかえる、離婚する、家を出るなどという強硬手段を行使せざるを得なくなる場合もありますし、あえて蓋していた人間関係の修復(特に親子)を余儀なくされることもあります。

いくら栄養を整えても体調が上がらない人、知らずしらずに栄養の吸収を妨げ、栄養の浪費を増やしていませんか?

自分自身の潜在意識と真剣に向き合い、時には人生を変えるほどの大ナタを振るう必要があるほどの、脳(=精神)の問題に行き当たる可能性がある「副腎疲労のホントの正体」でした。

副腎疲労って何ですか?

「副腎」は、左右の腎臓の上にチョコンと載っかっている三角形の小さな臓器。

この小さな臓器、サイズのわりにとても重要な働きを担っているんです。

副腎の皮の部分、副腎皮質からはコルチゾール、俗にステロイドホルモンと呼ばれているホルモンが作られ分泌されています。別名ストレスホルモン。精神的ストレスだけでなく、肉体的ストレス、炎症などに対抗するホルモンです。炎症と免疫って表裏一体の反応ですから、免疫を抑える働きがあります。血糖を上げる働きもあります。

免疫を抑え血糖を上げるって、なんだか悪者~と思われました?そんなことはありません。例えばコロナの重症化はウイルスそのものの毒性ではなく「サイトカインストーム」が主因とされていますが、これはいわば「免疫の暴走」。いい具合に免疫が働くためには免疫のなだめ役が必要で、それが副腎皮質ホルモンなんです。現にコロナのサイトカインストームにはステロイドホルモンを投与することにより、飛躍的に救命率を上げています。

また、飽食の時代、血糖が上がりすぎることが病気の原因になってしまいましたが、人類の歴史始まって以来何百万年もの間人類というか地球上の生物は飢餓に苦しめられてきたんですから、食料がしばらく途絶えても血糖が下がりすぎない機能は命を繋ぐ手段だったって事。つまり、副腎皮質ホルモンは生きて行く上でとてもとても重要なホルモンなんです。

一方副腎のあんこの部分、副腎髄質からはアドレナリンやノルアドレナリンという自律神経を制御する神経伝達物質が作られ分泌されます。神経伝達物質は神経のつなぎ目(シナプス)において情報を伝達するホルモンのような物で、別名脳内ホルモンと呼ばれています。自律神経とは、意思とは無関係に生命を維持するうえで必要不可欠な機能を適切に制御する神経。肺や心臓、消化管などの臓器を動かしたり、発汗や血糖値の調節もしています。自律神経のうち興奮に導く交感神経の伝達物質が、副腎髄質から出るアドレナリンとノルアドレナリン。これらにはやる気や意欲、元気を出す作用がありますが、多すぎると不安やイライラ、夜間に出てしまうと不眠の原因になります。(参照 2022.4.29 良い睡眠とれていますか?)

このように、副腎は生命に欠かすことのできない働きをしていますが、長年のストレスや持続的な長期にわたる炎症があると特に副腎皮質ホルモンの浪費が続き、ついには副腎が頑張り切れなくなってホルモンを出せなくなるってことが起こってくる、というのが「副腎疲労」です。

そうなってしまうと、本来自前のステロイドホルモンが制御すべき炎症が暴走して、アレルギーやリウマチをはじめとする自己免疫疾患などの慢性炎症性疾患が起こりやすくなり、ステロイドホルモンを外注(薬で投与)せざるを得なくなりがちです。また、「体」の病気が起こららなくても、低血糖が起こりやすくなるため、エネルギーが作れない(元気がない)、朝起きられない、集中できない、消化機能が落ちる、栄養不足、うつ症状、とどんどん負のスパイラルに陥っていきます。

いわゆる体の病気は普通の医療機関で「病気」として扱ってもらえ、薬が投与されて症状を抑えることができる(注:治るわけではない)ので、わざわざ「副腎疲労」と呼ぶ必要はない?ですが、体の症状が乏しい方は「怠けもの」「やる気がない」と判断されたり、挙句の果てには「うつ病」と診断されたりしていますので、何とかしたいと模索するうちに「副腎疲労」に行き当たる、という感じでしょうか?

栄養療法も副腎疲労も知らずに向精神薬を飲み続けている患者さんの方が多いかも、とは思うけど・・・・

普通の(栄養療法を知らない)医師は「副腎疲労」という言葉さえ知らないし、知っていても「そんなへんてこな病名をうたっているけしからん医者や、それを信じるあきれた患者がいる。」と公言しているコラムをある雑誌で見かけました。それを読んで、このブログを書くことにしたんです。医学部では教えないから、知らないのは仕方ないですが、知っているならば、なぜもっとまともな情報を探してくれなかったのか、と残念。

そう、医学部では栄養の大切さも副腎疲労も教えないのだ。医学教育の現場を取り仕切る偉い先生方は、製薬会社のサポートを受けて研究しなければならない厳しい日本の現状で、素晴らし実績をあげた方々。正しいけどある意味偏った世界で生きておられる方がほとんどだから、この厚い壁を破ることは容易ではない。製薬会社にとって薬を使う必要がなくなる治療なんてお呼びではない。いかんいかん、このまま書き続けたらどんどんいやな事を書きそうなので、このあたりで止めることにしよう。

とはいえ、数十年前にカナダで産声を上げた「栄養療法」は苦難の時代を耐え抜いた偉人たちの意志を継ぐ人々によって少しずつ、でも確実に広まってきています。私もその伝道師の端くれになれたら、という思いで日々過ごしています。

次回は、「副腎疲労は副腎だけの問題にあらず。ホントの副腎疲労の正体は?」

ビタミンC④ 身体のどこに?

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図1

人間同様、ビタミンCを作ることができないモルモットでビタミンCの投与量と臓器別の濃度を調べた実験があります(図1)。縦軸がビタミンC濃度、横軸が投与量。

この図からは、投与量が少ない時の臓器による濃度の格差がかなり大きいことがわかります。副腎がダントツでまず濃度が上がり、ついで肝臓、脳のビタミンC濃度が上がっています。ビタミンCの投与量が少ないと優先順位の低い臓器にはほとんどビタミンCが分布していないことがわかります。

栄養素というのは、それを必要とする臓器に優先的に運ばれ存在し、摂取量が少なかったり消費量が多くて足りない時には、優先順位の低い臓器にはその栄養素が回ってこないという事です。優先順位は多少人(遺伝など)によって違いますが、最大の要因は「生命活動を維持するのに必要な度合い」でしょう。

副腎はステロイドホルモンやカテコラミンと呼ばれる脳内ホルモンの一種、アドレナリンなどを作る臓器です。何度も出てきますがステロイドはストレスや炎症に対応するためのホルモン、アドレナリンもストレス時に多く放出されるホルモンですから、ストレスや炎症があるとホルモンの需要量が高まります。ステロイドホルモンをつくるためにはビタミンCを多く消費しますので、ストレス、炎症時にはビタミンCの消費量が増えるという事になります。

また活性酸素を除去するためにもビタミンが必要なので、活性酸素を常に除去する必要のある脳のビタミンC濃度は当然高くなりますし、活性酸素を多く発生する環境や喫煙でもビタミンCの消費量が上昇します。

という事は、シミを薄くするためにビタミンCを摂取していても、ストレスや炎症があったり煙草を吸っていてはかんじんの皮膚には一向にビタミンCは来てくれないという事になりますね。

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図2人間の臓器別ビタミンC濃

人間の臓器別では、図2のように血管(血中濃度)を1とすれば、脳は20、免疫細胞である白血球は80、ステロイドホルモンをつくる副腎では150倍もの濃度のビタミンCが存在している、つまりビタミンCを必要としているという事です。

脳ではアミノ酸を血液から脳に運び込む際や活性酸素を除去するのに必須、白血球は免疫細胞ですからその活性を高めて「風邪やガンにビタミンCが効く」根拠の一つになりますね。

さらに副腎は、「副腎疲労」に象徴されるように、エネルギー産生、血糖維持、炎症や免疫、ストレス、など生きて行くうえで不可欠な機能がたくさんある重要な臓器です。それを支えている重要な栄養素の一つがビタミンCなんですね。

「ん?副腎疲労って何?」と思ったあなた。次は「副腎疲労」の事書こうかな。

ビタミンC③ 有効な摂取方法

ビタミンCは水溶性で熱に弱い、とは多くの方がすでにご存じでしょう。

それはその通り。

では、「ビタミンCはいくら摂っても吸収しきれない余剰分はすべて排泄されて無駄になる」というのが、古~い見解で、すでに否定されていることはご存知ですか?

「吸収しきれないビタミンCはすべて排泄されてしまう」というのは、その昔囚人を使って行った実験を誤って解釈した見解なのです。ビタミンC欠乏食でビタミンCを欠乏させた囚人にビタミンCを少しずつ摂取させ、どの時点で尿にビタミンCが排泄されたかを測定したところ、60mgのビタミンCを与えた時点で尿中にビタミンCが排泄されたのです。だから「ビタミンCは60mg以上は吸収されず、人間の体には60mgのビタミンCで十分なのだ。」と結論付けられました。

さて、それは本当なのか。そう思って実験した人がいました。60mg以上の摂取量と排泄量の関係を調べてみたところ、ビタミンCを投与したときの尿中排泄量は、例えば1000mgでは250mg、2000mgでは1120mg。吸収率で言えば1000mg摂取で75%、2000mg摂取では44%。つまり、大量のビタミンCを摂取すれば吸収率は下がるけれど、それなりに多くが吸収され、60mgを超える分がすべて排泄されるわけではなかったんです。

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ビタミンC② 多彩なはたらき

ビタミンCの働きは他にもたくさんありますが、代表的なものは以下の通り。

働き不足するとおきやすい症状
①コラーゲンをつくるシワができやすい。傷が治りにくい。
毛細血管がやぶれやすい。
②免疫力を高める感染症(風邪など)にかかりやすい。
がんになりやすい。
③ステロイドホルモンをつくるストレスに弱くなる。
④鉄の吸収を助ける貧血になりやすい。
⑤酵素の働きを助ける肝臓の解毒作用が低下する。
⑥活性酸素を除去する色黒・シミ・ソバカスができやすい。

それぞれに少し補足しましょう。

①コラーゲンというと「お肌」をイメージされると思いますが、コラーゲンは皮膚に限らず全身のあらゆる臓器組織の形を作っています。血管の壁もコラーゲンですから、ビタミンC欠乏症である壊血病では血管が弱くなって出血しやすくなるんです。壊血病にはごく少量のビタミンCの補充が著効します。つまりビタミンCが少々足りなくてもまずはコラーゲンを作るお仕事が優先される、というくらい大事なお仕事なんですね。

②風邪にビタミンCが効く、とは以前より言われつつも、「ほんとかな?」と思っていませんでしたか?「風邪薬ほどは効かないでしょ!」と言われそうですが、そんなことはありません。コロナもそうですが、風邪の原因のほとんどは「ウイルス」。コロナの特効薬もないですが、風邪のウイルスそのものをやっつける薬はありません。西洋薬ではせいぜい熱さましや咳止めという対症療法しかできないんです。症状が軽くなれば効いているように錯覚しますが、「発熱」は体温を上げて免疫を上げるため、「咳」は病原体を肺や気管支から追い出すため、つまり治すための自然な反応なんですよ。つまり西洋薬の風邪薬では症状は軽くなるけど「治り」は遅くなるんです。漢方薬はその限りではありませんが、薬の事はさておき、ここではビタミンCの話。ビタミンCは好中球という白血球を活性化する働きがあるんです。好中球は、病原体が体内に入ってきたら真っ先に駆けつけて戦ってくれる細胞です。病原体が何者かわからなくても、怪しい!と察知したらすぐに駆け付けてくれる、いわば自然免疫の主役です。ただし、好中球が活性化するには、壊血病予防の10~100倍の量のビタミンCを摂取する必要があるんです。

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③ステロイドホルモンって、なんだか怖い薬のイメージがありますが、そもそもは副腎という臓器で作られる、ストレスや炎症を制御している重要なホルモンなんです。このホルモンが相対的に足りなくなると、勝手に炎症が起こったり免疫がおかしくなるので、お薬として投与せざるを得なくなるんですよね。そして、ステロイドホルモンをつくるのに、ビタミンCは風邪予防以上の量が必要なんです。

その他、鉄の吸収や酵素の働きを助けたり、活性酸素を抑える働きがありますが、鉄にも様々な作用があり、人間の体は酵素がなければ生きて行けないし、過剰な活性酸素は万病のもとですから、いかにビタミンCが重要かという事は、ここまで読んでいただいただけでも十分お分かりいただけたのではないでしょうか?

そして、近年、口からは摂れないほど高容量のビタミンCを血管に直接点滴すると癌に効くという事も科学的に証明されています。もちろんすべての癌に確実に効くわけではないですが、副作用がほとんどなく、ついでに感染症予防や副腎機能の向上も期待できますので、仮に延命はできなくても最後まで元気に「生ききる」お手伝いをしてくれるんです。抗がん剤で体力が弱って食欲がなくなるのと対照的ですね。抗がん剤投与中の患者さんでは、抗がん剤の作用を補助し副作用を軽減してくれる効果が期待できることも知られています。

このようにビタミンCは摂取量によって効果が変わってきますが、ビタミンではB群、Dなどでも摂取量や血中濃度による効果がそれぞれ分かってきていて、効果を出すのに必要な量を至適量、容量に応じて体の反応が起こることをことを「ドーズレスポンス」と言います。

「ビタミンCの歴史」で触れましたが、ビタミン発見の歴史は「欠乏症」の原因追及の歴史です。「欠乏症」と言われる命にかかわる病気を回避するだけならば少量で十分なことが多く(命に係わるのはよほどの欠乏ってことですね)、国が1日必要量として定められている量は、この欠乏症を予防する量です。だから、ドラッグストアで安く手に入るサプリメントや保険適応のビタミン剤では、欠乏症は予防できても風邪の予防やストレス対応などというビタミンCの能力全てを発揮することができない事を知っておきましょう。

もちろん安価な保険薬が欠乏症を予防して多くの命を救ってきた歴史が非常に貴重な事には変わりありませんけどね。

次回のビタミンCは「最適量のビタミンCを摂取するコツ」です。

ファスティング(断食)

去る3月半ば、私の所属する分子栄養学の研究会で、グループファスティングに参加した。2年前と昨年は3日ファスティング、今回は主人と5日ファスティングに挑戦。今回は娘夫婦も3日ファスティングに参加した。

最近、特にダイエットのためファスティングはちょっとしたブームになっているらしい。

私はやせっぽっちなので体重を減らしたくはないが、そんな人にとっては腸機能を上げて摂取した栄養をしっかり吸収」利用できるようにしてくれるのがファスティング。要するに適正体重になる・・・はず。

ファスティング前2日間は準備食で基本は例の「まごわやさしい」。注意点は小麦、乳製品、トランス脂肪酸、添加物、砂糖、アルコール、カフェインなどをOFF、ここまでは普段から習慣にしている食事なので特に問題なし。ただ、動物性たんぱく質は消化の負担が大きいのでOFFする。

ファスティング中は酵素ドリンクを頻回に飲みながらたっぷり水分を摂って、ミネラル補給のため岩塩をなめたり、岩塩で漬けた梅干しを使った梅湯と飲む。時に水便が出て、腸を洗浄している気分。ちなみに私が使用している酵素ドリンクや岩塩、梅干しなどは分子栄養学の勉強仲間が販売している無農薬食材で作った無添加の物です。ファスティング中は胃腸が敏感になりますし、解毒の目的もあるので、少しでも「毒」は入れないという趣旨に賛同しました。

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