ごあいさつ

30年以上皮膚科臨床医として生きてきました。

平成元年神戸大学医学部を卒業し、神戸大学附属病院に一年間勤務、その後、西脇市立西脇病院、加西市立加西病院、三田市民病院、西宮市立中央病院と、兵庫県の市民病院を歴任し、現職神鋼記念病院と、30年以上皮膚科医として勤務してきました。

その間多くの皮膚疾患の患者さんと出会い、患者さんとともに泣いたり笑ったりしながら過ごしています。私の生涯の仕事は、「目の前の患者さんに喜んでもらう事」と信じて、大きな病気にも小さな病気にも全力で向き合ってきました。

でも、どんなに治したいと思っても治らない病気があります。私の力量では無理なのか、と、より大きな病院を紹介しても、やっぱり治らないこともしばしば。まあ、人間の体にはまだまだわからない事がたくさんあるんだから、仕方がない、と思って納得していました。

そうした中で・・・・

だんだんと日本の医療界の傾向や体質がわかるようになり、高額な新薬が次々売り出されて古くから積みあげられてきた治療が軽視されていくことに疑問を感じるようになってきました。ある程度確立された治療があるにもかかわらず、それが様々な理由で正しく実行できていない事で難治化している疾患が多いことに気づいたからです。また、最新の治療法や治療薬をもってしても治らず治療に行き詰まる患者さんがどうしてもいらっしゃるからです。

ところで、今の医学の根幹となっているのが、病気を分析・分類して病名をつけたり、症状やデータを見て薬を投与する方法であり、医師も患者も、病気があれば手術で取り除く、または薬で治す、という認識が一般的です。国民皆保険制度のおかげで多くの人が等しく安価な(ホントは安価ではないのですが)医療を受けられるようになり、大勢の患者さんを治療するのにパッと効く薬をサッと出すというスタイルが都合が良いという側面もあるかもしれません。

たとえば皮膚科では、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚炎が疾患の多くを占めますが、それらをちゃんと治すには、薬を処方するだけでなく、丁寧な問診と丁寧な外用指導、さらに言えば食習慣の改善やストレス対策が必要です。今の保険診療の仕組みでは、丁寧に診察して時間をかければ待ち時間が長くなってクレームになる上、売り上げが上がらず、スタッフを増やすことも難しくなるのです。一人一人の患者さんに十分な情報を伝えるには時間が足りない!

そんなジレンマを感じながら診療に追われる日々でしたが、あるきっかけで「分子栄養学」に出会いました。人間の体の生理機能と栄養素のはたらきを理解して、症状だけではなく、患者さんの全身、生活習慣全般をみて治療にあたると、原因不明で治らないと思っていた疾患が改善する現象を多く目にする経験をしました。今までになかった視点でした。しかし、通常診療の中でそのような治療を実行するのには、さらにもっと時間がかかりすぎて難しいという、さらなる壁にぶち当たりました。

そこで、現役医師でいられるのもあと何年、となって、難治な症状に苦しむ患者さんの為に何かを残さなければ…という気持ちを持つようになりました。これからは「伝える」事を仕事にしよう、と思い立ち、本業を減らす決意をしました。そしてまず、ブログを書き始めることにしたのです。皮膚科医としての経験・考えてきたことが、少しでも、どなたかのお役に立ちますように、と願いを込めて・・・

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