食事がつくる発達障害③の2 ストレス

ストレスも腸内環境に大きな影響を及ぼします。ストレスというと、心理的ストレスを指すことが多いですが、ここで言うストレスは肉体的ストレスも含みます。すなわち、暑さ寒さやその変化、体の炎症、過度な運動や喫煙などです。

野生動物や、おそらく古代のヒトのストレスは、天敵に追いかけられるとか戦う事だったり事故や災害に見舞われることで、生死に関わる急激なストレス。生き延びればストレスは去り、獲物の獲得や逃げおおせた後の安らぎにかわります。生き延びられなければ命とともにストレスはなくなります。

ところが、現代に生きる私たちには、天敵に追いかけられることも生死にかかわる事象もめったに起きません。その代わり、人間関係に悩むとか、過度な仕事に追われるなど、死なない程度のストレスに慢性的にさらされている人がほとんどですよね。

子供の世界でも、同じ。友達関係、親子関係(虐待や強制)、生活環境(生活リズムの乱れ)などの大小のストレスが慢性化すると・・・・

ストレスホルモン全開で頑張った末、自律神経が乱れ、血糖値も乱れ、消化機能が落ちて腸内環境が乱れます。そして脳内物質に必要な栄養素も枯渇して、脳機能が著しく低下するのです。

発達障害には、やはりストレスも大きな原因になるんですね。

食事がつくる発達障害①の3  代謝障害と遺伝子トラブル

「代謝」という言葉はよく耳にすると思いますが、正しい意味は?と改めて聞かれると、ん?と思う方多いのではないでしょうか?

「代謝」には、酵素が必須 酵素にはビタミン・ミネラルが必須

生物学的には、自分自身が生きて行くことと、子孫を残すことが生物の最も大事な機能ですが、「代謝」とは、「生体が生命の維持と成長、生殖を可能にするために行っている生化学反応」です。つまりAという物質をB、C、Dと変化させる事。

それには必ず酵素が必要で、多くの酵素はタンパク質とミネラルでできています。酵素が活性化して働けるようになるため、補酵素のビタミンが必要です。

そして、栄養障害とは、必要な栄養素が欠乏することによる代謝のトラブルの事。

つまり、「栄養素」は、体が必要とする「代謝」を正しく行うための「材料」なんですね。

だから、栄養が不足すると必要な代謝のあちこちにトラブルを引き起こし、様々な病気が起こりやすくなるんです。

栄養不足以外に代謝の障害の原因になる要因は何でしょう?大きく分けて、

 ◎遺伝的要因:遺伝子トラブル と 

 ◎後天的要因:環境、毒物、精神ストレス、炎症など  があります。

そもそも遺伝子は、代謝を担う酵素の設計図、料理で言うと「レシピ」です。

遺比較的多くみられる遺伝子トラブルの事を遺伝子多型と言いますが、その中でも

   遺伝子配列の1カ所だけが正常と異なるものをSNPs(スニップス)といいます

   遺伝子多型があると、酵素の働きは正常の3~7割に落ちます。

そしてMTHFRという葉酸代謝酵素の遺伝子のSNPsが発達障害の一因となることがわかっています

メチレーション:重要な働きをする代謝の歯車

やっぱり、発達障害って、遺伝だからどうしようもないじゃないか、と思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。だって、MTHFR遺伝子のSNIPsの保有率は、日本人では70%もあるんですから。

それを説明するのが「エピジェネティクス」という概念です。

•遺伝子が発現するにはそれぞれにスイッチがあり、遺伝子そのものは変わらなくても、遺伝子が働くスイッチの ON、OFFの機能があり、それによって影響の現れ方が変わる、という考え方です。

遺伝子は料理で言うと「レシピ」ですから、レシピが少々違っても、調味料を少し工夫したり、他の材料で代用したり、食卓のインテリアを変えたりすると、それはそれで美味しい料理になる、って事。逆に、レシピは完璧でも材料が不足したり、劣悪な環境で食べると料理はおいしくありません。

これを発達障害に当てはめると、生まれつきの問題があっても、日常生活でできる適切な対策をしていれば、発達障害で見られる多くの症状の改善は可能、遺伝子に異常がなくても栄養や睡眠が不足していたり、生活環境が悪いといわゆる発達障害もどきになるよ、って事ですね。

代謝障害と遺伝子トラブルのお話でした。

食事がつくる発達障害①の2 神経伝達物質と脳機能

発達障害は一般的には脳の機能の障害ととらえられています。

現に、前回ご紹介した成田奈緒子先生の著書にも、脳機能の発達の順序が違うと、発達障害もどきの症状が起こると記されていました。

では、脳の機能が正常とは、いったいどんな状態でしょう?

正常な脳機能

脳は、細長い神経細胞がぎっしり詰まってネットワークを作り、情報を伝達している場所です。情報の伝達は、上流の神経と下流の神経のつなぎ目(シナプス)において、神経伝達物質を受け渡しする事で行われています。

必要な情報が、必要な時に適切に伝達される、つまり脳の機能が正常に作動するには、神経伝達物質がバランスよく作られることが重要で、

神経伝達物質を作るには、必要な栄養素が充足していなければならないのです。

逆に、脳の機能が低下しているとは?

脳機能の低下

神経伝達物質の・材料が不足している状態と・材料を作るために必要な酵素のDNAにトラブルがある状態、です。

さて、どちらの影響が大きいでしょう?

もちろん栄養不足にも程度があるし、遺伝子トラブルにも程度がありますから、どちらとも言えませんが、ただ、言えることは、変えることができない遺伝子トラブルがあっても、環境や食事で症状を変えることができる、という事です。

実は脳は、栄養の影響を最も大きく受ける臓器なんです!

脳内には、抑制系、調節系、興奮系の3つの系列の伝達物質があります。

それぞれの系列のスタートとなるのはアミノ酸(タンパク質が消化されたもの)で、酵素が働いて順々に代謝され、目的の物質を作っているわけです。酵素の主原料もタンパク質ですが、その化学構造の中身はミネラルを含むことが多く、また、酵素が働くためには補酵素であるビタミンも不可欠です。

例えば、調節系の神経伝達物質、別名幸せホルモンと言われている「セロトニン」の代謝を見てみましょう。

調節系伝達物質の代謝

セロトニンが不足すると、不安やこだわりが強い イライラしやすい、怖がり、パニック睡眠が上手く摂れない、などうつのような症状が現れます。実際、最もポピュラーな抗うつ薬の一つはセロトニンの量を増やすように設計されています。

右図のようにセロトニンを作るにはまずスタートとなるトリプトファンというアミノ酸に、鉄、リチウム、マグネシウムなどのミネラル、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6というビタミンB群などが不可欠です。何かが欠けると、この代謝の流れがスムーズにいかず、必要なセロトニンを作れず、セロトニンから代謝されてできるはずの、別名眠りのホルモン「メラトニン」も作られなくなるのです。

神経伝達物質のアンバランス

神経伝達物質のアンバランスは、右のような症状を起こしますが、これらの症状が発達障害で見られる精神症状と一致するところが大きいので、

というわけで、一般的には発達障害は脳の障害ととらえられています。

食事がつくる発達障害①の1 「生活リズム」 

去る9月21日、毎月恒例の「ココロとからだセミナー」を開催しました。

テーマは「食事がつくる発達障害」第1話 タンパクとビタミン・ミネラルのお話、だったのですが、栄養の前に知っておきたいことがありました。

それは、最近読んだ、文教大学教授 成田奈緒子先生の「『発達障害』と間違われる子供たち」成田先生は小児科医であり、ずい分以前より「早寝 早起き 朝ごはん」という非常に語呂の良いスローガンを掲げて子供の良好な精神発達を目指す、子供の脳科学の専門家です。

この本には、子供の脳の発達には順序があって、正しい順番に発達させなければならないと書かれています。

体の脳(土台)がしっかりしていると安定
体の脳が育っていないとバランスを崩しやすい

①からだの脳:呼吸・体温調節など、生きて行くために不可欠な脳

②おりこうさん脳:言語・計算・スポーツ等に必要な脳

③心の脳:想像力を働かせる、判断する、など人らしい脳力をつかさどる脳

これがこの順番に育たなければ、何かでバランスを崩すと「発達障害もどき」になる、と言うのです。

そして、からだの脳は、「寝る」「起きる」「食べる」など基本的な生活リズムを身につけることで育つのだそう。そう、「早寝 早起き 朝ごはん」です。

子育ての目標は、立派な原始人を作ること!!!と断言しています。

そして、発達障害かも・・・と言われたら、あるいは思ったら、すべき事

病院に行く前に、生活リズムが整っているかチェック

  ちゃんと食べているか、ちゃんと寝ているか

まずは朝早く起きる➡子供の興味を引くようなもので起こす

勉強を頑張らせ過ぎない(睡眠時間を削らない)

それを実行しても、なお改善しなければ初めて、病院へ・・・と書かれていました。

「発達障害もどき」とは、発達障害が、子供の行動のチェックリストなどで比較的安易に診断され、投薬されたりしてしまうことがある現状において、まず生活リズムが大事と訴える成田先生の苦肉の「造語」なのです。

これ、食事内容以前の最も大切な事ですね。それを無視して食事の話をするわけにはいかん、と思い、セミナーの初めの時間を結構割いて、成田先生の本の内容をご紹介しました。

そしてさらに、私は「ちゃんと食べる」に、「何をどのように食べる?」を加えると、「発達障害もどき」がもっと減るはず!と思っているのです。

本題は、次回から・・・・

ポリファーマシー②

ポリファーマシーに対して、患者さんができること、が今回のテーマです。

患者さんご本人ができること、それは・・・

①自分の内服薬を把握すること。

  何のために飲んでる?どんな作用?

主治医に「薬を少なくしたい」という意志を常に伝えること。

  忙しい医師のほとんどは、患者さんの訴えに対し、薬を処方してはくれても、薬を減らしてはくれまん。でも、患者さんが希望すれば考えてくれます。

③解毒を促す栄養を摂ること!

  解毒の回路を回す酵素の主成分タンパク質、ミネラル、ビタミン

  そして回路をエネルギーとなる炭水化物、脂質

  つまり、「5大栄養素」が、解毒のために不可欠です。

そして、下記の事を「知る」事です。

④「胃薬」は胃を丈夫にする薬ではない!

  昔の胃薬は胃の消化機能を補うもの、胃の粘膜を保護するもの、でした。

  現在よく使用されている胃薬の中には、胃酸をおさえて消化機能を落とすものが少なかずあります。

⑤医師も知らない思いもよらない副作用が実はある!

  長期使用することによって起こる栄養障害は、ほとんど副作用と認識されないと言っても過言ではありません。

ポリファーマシーは個人の不利益のみならず、不要な薬に大切な医療費(公費)を費やしてしまうことで、決して返すことのできない莫大な借金をして、将来の日本の国に大きな不利益を残しているのです。

父の大腿骨骨折の顛末

今年6月紀伊半島を線状降水帯が通った日、父が転んで大腿骨骨折、入院となった。

3年前の冬に脳梗塞で入院し、外科的処置はかえって危険、打つ手なしとして暖かくなるのを待って退院した父である。脳梗塞の退院後、私は1週間実家に滞在して実家の調味料や油を全て見直し、朝食をパンからご飯に変更、牛乳を豆乳にかえ、野菜とタンパク質をしっかり摂ることを母に伝授した。そして、血液の凝固と炎症を抑制するオメガ3オイル、血管内脱水を防ぐ血中タンパクをアップするためアミノ酸や消化酵素、エネルギー産生に不可欠なビタミン・ミネラルなど、父の病状に合わせサプリメントを処方した。

長年二人で守ってきた畑でみかんや野菜を作りながら、いつまでも父と暮らしたいと強く願う母は、私の指導を一生懸命実行し、父のために美味しい食事を用意して、父の世話をすることを生き甲斐にした。(たまには私に内緒で禁断の好物を適度にこっそり食べていたのも、食養生を楽しく長続きさせる秘訣だったかもしれない。)

そして、父は、積極的治療を断念するという英断を下してくださった治療経験豊富な脳外科の先生に、「自分が今までやってきたこと(血管内手術)はいったい何だったんだろう」と言わしめるほどの回復を見せ、脱水によって血栓ができる危険を伴う暑い夏と、血管収縮によって血栓が詰まりやすい寒い冬を2度無事にこすことができた。

一時は認知機能が落ち、字もまっすぐに書くことができなかった父が、達筆でまっすぐの字が書けるようになり、毎日きれいに血圧の記録をつけていた。雨の日や夜は、元々好きだった本を山積みにしながら書斎にこもり、晴れた日には畑に出かけて私たち子どもや孫たちに収穫の喜びを味わわせるためにせっせと野菜を作ってくれていた。食欲は旺盛で、4月には私と娘が作ったお花見弁当を、お花見を楽しみながら美味しい美味しいと言ってペロッと平らげた。徐々に筋力は落ちてはいたものの、元気に暮らし、地元出身の鎌倉時代の高層、明恵上人ゆかりの高山寺(京都)へ行くツアーを楽しみにしていた。

そんな6月のある日、転倒して骨折。高齢者の大腿骨折は寝たきりの原因、あるいは命とりの大事件である。大雨でずぶぬれになった父は某市民病院に運ばれた。金属のインプラントで固定していた大腿骨の古傷の骨折が判明した。

脳梗塞再発予防の抗凝固剤(いわゆる血液サラサラの薬)が中止され、手術は2週間後と決まった。5月中旬にコロナウイルス感染症はインフルエンザと同等の感染症5類に格下げとなって約1か月経っていたが、病院はまだ厳戒態勢。病院入り口で手の消毒と検温、訪問者は住所と名前を記帳させられ、面会は1日に家族2人、15分まで、食べ物の持ち込みは禁止。おまけに飲んでいたサプリメントはすべて中止・・・

当初は、「もとより元気になって退院する。」と言っていた父であったが、手術を待つ間に食欲が落ち、だんだんやせ衰え、徐々に生気を失っていった。1週間もしないうちに、実の娘と、弟の奥さんの区別すらつかなくなり、提供された食事を口に入れても噛むこともできなくなった。ベッドサイドの看護師さんの食事記録には「半量摂取」と書かれていたが、到底半分も飲み込める状態にはみえない。見るに見かねて、たまたま院長と知り合いだった弟が頼み込んで何とか電解質輸液をしてもらった。

脱水状態が改善されると、再び前日とは見違えるように元気になり、こっそり持参した好物のバナナ、トマト、豆乳、甘酒を「美味しい」と言いながらパクパク食べ、「こんな生きのいい食事は病院にはないんや」「食べるという事はエネルギーのいることなんや。エネルギーがなくなったら食べることもできなくなる。」と言った。つまり食事をする元気も出ない、娘を判別することもできないほどの脱水状態だったのだ。それほど食事がとれていなかったのだ。その日、「頑張って元気になってな。」と父とハイタッチしたのが、父との最後の会話になった。

この極度の脱水状態(点滴の直前)の血液検査データは、血液濃縮が著明なはずにも関わらず、低タンパクと貧血が明らかだった。(血液が濃縮すると、血清タンパクや赤血球の濃度が相対的に上がり、実際より高い数値が出る)

術前の栄養状態の改善が必須(急務)と考えた私は、ゼリータイプのアミノ酸と腸機能を上げるドリンクを購入し、看護師さんの目を盗んで与えることを母と妹とともに画策したが、禁止されていることを限られた時間内にすることは思った以上に難しく、なかなか実行できないまま手術の日を迎えた。

術後、手術は非常に上手くいった、と整形外科の主治医はおっしゃり、「歩けるようになりますよ。」と言って母を喜ばせたが、父が麻酔から覚めることはなく、意識が戻らぬまま一晩過ごした挙句に「術後脳梗塞」と診断された。MRIの所見は絶望的で、広範囲に梗塞が広がり、そのまま危篤状態となっている。

脳梗塞が判明したとたん、術前とは打って変わって、入れ代わり立ち代わり担当医・看護師が手厚い処置をして下さるようになった。酸素マスクが装着され、輸血され、経鼻栄養が導入された。しかし、どんなに手厚い処置を施されても、父の脳のダメージは戻ることはない。

けがや手術という侵襲は、出血と炎症により通常の2倍近くものタンパクはじめ栄養素が必要になる。予備力がなく消化機能も衰えた高齢者の場合、食事以外に高カロリー、高タンパクの栄養ドリンクなどで補うくらい、時には術前に胃ろうからチューブで栄養補給するくらい、特に厳重な栄養管理が必要なのだ。そうしなければ、せっかく手術をして骨を修復しても、それを動かす筋肉がやせ衰えて、立つことができなくなるのだ。特に父の場合、低タンパクは血管内脱水を来し、血栓形成のリスクが増すため、十分なタンパク摂取は必須だった。

それなのに、入院しているにも関わらず栄養失調で衰弱したまま手術の日を迎え、病院スタッフの誰もが、それに気づかず、疑問も持たない。それが脳梗塞のリスクを高めたとは誰も思っていない「高齢者の大腿骨折は命取りになる。」のは常識と考えられているし、「抗凝固剤を中止したのだから、脳梗塞のリスクが上がるのは致し方ない。」からだ。みんな、日本の医療の常識の中で一生懸命仕事をしている。「栄養療法」を知らなかった頃の自分がそうであったように。

これはたまたま父が入院した病院だけの問題ではない。今の日本の医療の現状なのだ。せっかく高い技術できれいな手術をしても、筋力が衰えて立てなくなったり、麻痺で動かなくなったり、身体が死んでしまっては意味がない。「高齢者の骨折が命取りになる。」というのは、「骨折」そのものが命取りになるのではなく、骨折の前後の全身管理、特に栄養管理が全身状態を損なう事が大きな要因と痛感した。

高齢者の血液データは読みづらいというが、読みづらいとわかっているデータになぜ頼るのか。本人の言動や食事、元気度をみる視点が、「食べる」という最も重要な事を大切にする視点があれば、もっと救える命があるのではないか?何も難しいことではない。家族でも素人でも分かることなのだ、と声を大にして言いたかった。

父の場合は、両頸動脈梗塞の既往があり、ハイリスクだったため、どんなに厳重な管理をしても上手くいかなかったかもしれないが、低アルブミンによる脱水がなければ梗塞再発のリスクは減らせたかもしれない。せめて十分に面会させてもらえて、こっそりとでも十分な栄養補給が術前にできていれば、こんなにも悔いは残らなかったと思う。

弱毒となったコロナウイルスの感染を回避するという名目で漫然と行われていた面会制限、面会を制限し、食べ物の持ち込み不可と言い渡しておきながら手足が不自由となり、半分寝たまま不自由な手足で食事できない老人の食事が進まない事を軽視し、どれほど大きな意味があるかも知らないサプリメントを一方的に中止させる病院の体制。通常処方される保険薬ならば、さして意味のない薬が漫然と投与されていても入院後も機械的に継続されるのに。。。

今この時も、病院のスタッフたちは、気道確保に細心の注意を払い、おそらく呼吸中枢まで脳梗塞が進んだ、助かる見込みのない父の命が一分一秒でも長らえるよう、日夜一生懸命働いてくれている。

その矛盾に、早く日本の医療が、気づいてほしい、と願ってやまない。

その症状、鉄欠乏ではないですか?

 あなたも~隠れ鉄欠乏~かも?

去る7月21日、今泉眼科で恒例の「ココロとからだセミナー」を開催しました。

今月のテーマは「鉄欠乏」。鉄欠乏と言えば「貧血」。貧血は、男性に比べ、生理のある女性に圧倒的に多い。貧血にはなったことがないからご自分には関係なと思われたあなた、日本人女性の鉄欠乏は深刻なんですよ。20代~40代の女性の実に60%以上が鉄欠乏というから、他人ごとではないかもしれません。

例えば、こんな症状・・・

□”立ちくらみ”や“めまい”がある

□頭痛になりやすい

□疲れやすい

階段を昇ると息切れがする

よくあざができる

□大きなカプセルが飲み込みにくい

病院で訴えたら「不定愁訴」なんて言われて、ややもすると、訴えの多い面倒な患者と思われるかもしれないような症状ですよね。

それで血液検査をして、貧血があれば「鉄欠乏」と診断されますが、「貧血」と診断されない場合、「異常がないから気のせいです。」とか「神経質にならずに」なんて言われちゃうことがあってしまう。そんな、貧血じゃない鉄欠乏があるっていうのが、今回のお話でした。

さらに、そんな症状がなくても

□生理のある女性  □成長期のお子様  □スポーツをよくする人

このような方は、「鉄」の需要が大きく、鉄欠乏のリスクが高いのです。

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副腎疲労って何ですか?

「副腎」は、左右の腎臓の上にチョコンと載っかっている三角形の小さな臓器。

この小さな臓器、サイズのわりにとても重要な働きを担っているんです。

副腎の皮の部分、副腎皮質からはコルチゾール、俗にステロイドホルモンと呼ばれているホルモンが作られ分泌されています。別名ストレスホルモン。精神的ストレスだけでなく、肉体的ストレス、炎症などに対抗するホルモンです。炎症と免疫って表裏一体の反応ですから、免疫を抑える働きがあります。血糖を上げる働きもあります。

免疫を抑え血糖を上げるって、なんだか悪者~と思われました?そんなことはありません。例えばコロナの重症化はウイルスそのものの毒性ではなく「サイトカインストーム」が主因とされていますが、これはいわば「免疫の暴走」。いい具合に免疫が働くためには免疫のなだめ役が必要で、それが副腎皮質ホルモンなんです。現にコロナのサイトカインストームにはステロイドホルモンを投与することにより、飛躍的に救命率を上げています。

また、飽食の時代、血糖が上がりすぎることが病気の原因になってしまいましたが、人類の歴史始まって以来何百万年もの間人類というか地球上の生物は飢餓に苦しめられてきたんですから、食料がしばらく途絶えても血糖が下がりすぎない機能は命を繋ぐ手段だったって事。つまり、副腎皮質ホルモンは生きて行く上でとてもとても重要なホルモンなんです。

一方副腎のあんこの部分、副腎髄質からはアドレナリンやノルアドレナリンという自律神経を制御する神経伝達物質が作られ分泌されます。神経伝達物質は神経のつなぎ目(シナプス)において情報を伝達するホルモンのような物で、別名脳内ホルモンと呼ばれています。自律神経とは、意思とは無関係に生命を維持するうえで必要不可欠な機能を適切に制御する神経。肺や心臓、消化管などの臓器を動かしたり、発汗や血糖値の調節もしています。自律神経のうち興奮に導く交感神経の伝達物質が、副腎髄質から出るアドレナリンとノルアドレナリン。これらにはやる気や意欲、元気を出す作用がありますが、多すぎると不安やイライラ、夜間に出てしまうと不眠の原因になります。(参照 2022.4.29 良い睡眠とれていますか?)

このように、副腎は生命に欠かすことのできない働きをしていますが、長年のストレスや持続的な長期にわたる炎症があると特に副腎皮質ホルモンの浪費が続き、ついには副腎が頑張り切れなくなってホルモンを出せなくなるってことが起こってくる、というのが「副腎疲労」です。

そうなってしまうと、本来自前のステロイドホルモンが制御すべき炎症が暴走して、アレルギーやリウマチをはじめとする自己免疫疾患などの慢性炎症性疾患が起こりやすくなり、ステロイドホルモンを外注(薬で投与)せざるを得なくなりがちです。また、「体」の病気が起こららなくても、低血糖が起こりやすくなるため、エネルギーが作れない(元気がない)、朝起きられない、集中できない、消化機能が落ちる、栄養不足、うつ症状、とどんどん負のスパイラルに陥っていきます。

いわゆる体の病気は普通の医療機関で「病気」として扱ってもらえ、薬が投与されて症状を抑えることができる(注:治るわけではない)ので、わざわざ「副腎疲労」と呼ぶ必要はない?ですが、体の症状が乏しい方は「怠けもの」「やる気がない」と判断されたり、挙句の果てには「うつ病」と診断されたりしていますので、何とかしたいと模索するうちに「副腎疲労」に行き当たる、という感じでしょうか?

栄養療法も副腎疲労も知らずに向精神薬を飲み続けている患者さんの方が多いかも、とは思うけど・・・・

普通の(栄養療法を知らない)医師は「副腎疲労」という言葉さえ知らないし、知っていても「そんなへんてこな病名をうたっているけしからん医者や、それを信じるあきれた患者がいる。」と公言しているコラムをある雑誌で見かけました。それを読んで、このブログを書くことにしたんです。医学部では教えないから、知らないのは仕方ないですが、知っているならば、なぜもっとまともな情報を探してくれなかったのか、と残念。

そう、医学部では栄養の大切さも副腎疲労も教えないのだ。医学教育の現場を取り仕切る偉い先生方は、製薬会社のサポートを受けて研究しなければならない厳しい日本の現状で、素晴らし実績をあげた方々。正しいけどある意味偏った世界で生きておられる方がほとんどだから、この厚い壁を破ることは容易ではない。製薬会社にとって薬を使う必要がなくなる治療なんてお呼びではない。いかんいかん、このまま書き続けたらどんどんいやな事を書きそうなので、このあたりで止めることにしよう。

とはいえ、数十年前にカナダで産声を上げた「栄養療法」は苦難の時代を耐え抜いた偉人たちの意志を継ぐ人々によって少しずつ、でも確実に広まってきています。私もその伝道師の端くれになれたら、という思いで日々過ごしています。

次回は、「副腎疲労は副腎だけの問題にあらず。ホントの副腎疲労の正体は?」

良い睡眠とれていますか?

先日、クリニックで恒例の「ココロとからだセミナー」を開催しました。

都合がつく限り必ず来てくださるメンバーが2,3人、という、超人気セミナー(笑)今回は「睡眠」の話。

睡眠の原因には以下の5つようなものがあります。

・生理的原因:交代勤務やシフト制、時差、寝室の環境、スマホなど  

・心理的要因:ストレスや悩み、緊張、別れなど人生の大きな変化 

・身体的原因:痒み、痛み、下痢、咳、発熱、加齢など 

・精神医学的原因:うつ病、統合失調症、アルコール依存症など

・薬理学的原因:中枢神経抑制薬、降圧剤、抗がん剤、ステロイド、カフェインなど

そして睡眠障害には以下の4つの種類があります。もちろん混合している場合もよくあります。

・入眠困難 ・途中覚醒 ・早朝覚醒 ・熟眠障害

良い睡眠をとるためには、生活習慣が重要です。特に、脳のスイッチのON、OFF

<脳のスイッチをON>

 ・早起き

 ・朝食をよく噛んで食べる

 ・朝日を浴びる

 ・仕事(活動)は午前中に集中して

 ・日中できるだけからだを動かす

<脳のスイッチをOFF>

 ・夕方早く仕事を終える

 ・入浴は寝る90分前に終える:40℃、肩まで浸かって1015

   深部体温をいったん上げて下がる頃に眠くなる

 ・部屋の明かりは薄暗く、音楽を聴くなどしてボーっと過ごす

 ・寝具:背中を温める、締め付けの少ないパジャマ、靴下は履かない

    電気毛布やアンカは就寝前にOFF

    良眠には深部体温をさげることが必要で、手掌足底は覆わないほうが良い。

 ・アイマスクはお勧め (目とくびを温める)

と、ここまでは一般的にも良く言われていること。

実は、ここからが本題です。

熟眠障害には自覚がない場合も結構あるってご存知でしょうか?例えば

□寝汗 □寝違え □夢を見る □朝から疲れている

□食いしばり・歯ぎしり □朝ごはんが食べられない

□お通じ(排便)が困難   など。

思い当たる人は少なくないはず。

実はこれらの症状、交感神経の刺激によるアドレナリンの作用なんです!なんで、夜間に興奮系の脳内ホルモン、アドレナリンが出てしまうのか!その犯人は、「夜間低血糖」

食事をとらない夜間の血糖は脳下垂体から分泌される成長ホルモンと、副腎皮質から分泌されるコルチゾールが支えているんです。

どちらも栄養不足、ストレス、睡眠不足、砂糖の摂りすぎ、カフェイン、アルコール、腸環境の悪化、スマホなどの電磁波や光などの影響を大きく受けて低下してしまいます。そうすると血糖を上げるホルモンのバックアップ隊アドレナリンの出動です。睡眠前野睡眠中にアドレナリンが出ると、目が覚めてしまったり、悪夢を見たりして睡眠の質が悪くなります。「分かっていてもやめられない」と言われそうなものばかりだけど、知っているといないでは大違い!

心当たりのある方、このブログの栄養療法のカテゴリーに入っているタイトル、特に2022/1/26「低血糖症」の回、2022/2/6「低血糖症対策 補食」の回を復習してみてください。私の患者さんでも、根気よく取り組んで眠剤が要らなくなった方、大勢います!

様々な不調の原因、上咽頭炎

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上咽頭ってご存知ですか?喉の奥と鼻の奥の境目、図の赤丸のあたりの部位の事です。口を大きく開けて見える喉ちんこから上の裏側が上咽頭というイメージ。

上咽頭は、ウイルスや有害物質を吸い込むと普通のうがいや咳などでは取れにくくたまりやすいため、リンパ組織たくさん集まっていて、炎症が起こりやすい場所です。

鼻の穴( がいこう といいます)は二つで、絶え間なく働いているようで実は左右交互に休んでいるのだそうですが、上咽頭部では一つに合流して気道の方に曲がっている、吹き溜まりのような形。私たちが一日に吸う空気の量は1万リットル、500ミリ・リットルのペットボトル2万本に相当するのだそうですが、そこにウイルや有害物質がたくさん含まれていたら?そのために喉の他の部位と違ってリンパ組織が発達して、外来異物と常に戦ってくれているというわけなんです。

上咽頭炎が急性期だと、鼻と喉の間が痛いとか痰がたくさん出る、微熱が出るなどの症状があります。症状だけでは普通の喉風邪と区別がつきませんね。免疫がしっかりしている方ならば風邪と同じように自然治癒します。でも、免疫が弱くて炎症を収束できない方、アレルギー性鼻炎などでしょっちゅう炎症を繰り返す方などは、上咽頭炎が慢性化してしまう場合も多く、中には10年以上、この症状で苦しんでいる人、逆にそうとは気づかないでいる人がいるのが問題なんです。

慢性上咽頭炎が引き起こす症状

病巣感染と言って、体のどこかに感染症や慢性炎症があると、その影響で体中の様々な不調を起こす原因になると言われています。慢性上咽頭炎も病巣感染の一つです。

上咽頭炎の予防

まず、口呼吸で口の中が乾燥すると、上咽頭にウイルスが付着しやすくなるので鼻呼吸をすることがとても重要です。お昼間は極力意識して用のないときは口を閉じるようにしましょう。マスクを着用するとついつい口呼吸になっている人が多いと言われていますので、要注意です。

意外と夜間に無意識のうちに口呼吸になっている人が多いんですよ。朝起きたとき、口が乾いていたり、のどが痛くなっている方、口にテープを貼る方法、なかなかいいですよ。実は私もやってます。市販のテープもありますが、かぶれさえしなければ、普通の絆創膏でいいです。ただし、かぶれやすい方はちょっとごわつきますが、粘着力は弱いですがビニールテープがかぶれにくいです。それでもだめなら・・・難しいかもしれません(すみません)。

そして、鼻うがい。生理食塩水で鼻の穴を洗浄するというもの。生理食塩水の濃度ならば痛くはありません。かなりの予防効果があるようですが、洗いすぎもかえって悪いという意見もありますし、あまりに鼻詰まりの強い方は難しく、人によっては水が耳の方に流れて中耳炎になってしまう事もあるようなので、無理は禁物です。鼻うがいはハードルの高い物だと感じている人も多いようですが、やってみれば意外と簡単で、気持ちいいですよ。花粉の時期には花粉を洗い流す効果もありまから、できる人は是非実践してみてください。

痛む場所と痛みの原因の場所が違う

 咽頭痛、いわゆるのどの痛みというと、首の真ん中の辺りに感じる人がほとんど。インフルエンザの時も、そこに痛みを感じた経験があると思いますが、実際に綿棒で検査されるのは鼻の奥の上咽頭です。上咽頭でウイスルが急激に増殖するからなのですが、そこに痛みがあることはあまりありません。ところが実は、咽頭痛の原因の90%は上咽頭の炎症という報告があります。痛む場所と原因の場所が違っているのとなると、痛む場所だけを調べても正体はわかりません。

慢性上咽頭炎とは? 10年以上悩んだ症状の原因はこれだった

 10年以上前から、のどのヒリヒリと焼けつく感じに悩いたけれど、通常の診察では特に異常がなく、これといった治療もありません。

上咽頭炎を見てもらえる(これが重要)耳鼻科で喉頭内視鏡で上咽頭の腫れを指摘されました。(粘膜表面を綿棒でこすってみると、じわじわと出血(写真上)。本来は、粘膜だからといって簡単に出血するようなことはありません。)こする治療を続けたところ、4か月もすると、強くこすっても出血することがなくなり(写真下)、同時にヒリヒリした痛みも消失。

こすって治す上咽頭擦過治療EAT療法

慢性上咽頭炎に対し、塩化亜鉛という強い刺激物質を塗布して綿棒でこするというこの治療は、上咽頭擦過治療(Epipharyngeal Abrasive Therapy:EATイート)といいます。まさに傷口に塩を塗りつけるかのような、とても原始的な治療で、治療の際の痛み(炎症が強いほど激痛)もあります。

栄養療法的に慢性炎症として多いのが、①腸の炎症、②脂肪肝 ③上咽頭炎

慢性炎症は直接的、間接的にいろいろな症状や病気を引き起こしていることが分かってきています。長年続くのどの痛み、鼻づまり、後鼻漏(咽に流れる痰や鼻汁)、首回りのいろいろな症状はもちろん、頭がボーっとする、疲れやすいなどの症状で悩んでいる人は一度、慢性上咽頭炎を疑ってみてはいかがでしょうか。

慢性上咽頭炎については、いまだ診断・治療が標準化されておらず、耳鼻科の先生でもそれを診断治療して下さるところは少ないのが現状ですが、2019年11月、日本耳鼻咽喉科学会の関連学会である日本口腔・咽頭科学会の中で、上咽頭擦過療法検討委員会が発足したそうです。同委員会の活動により、慢性上咽頭炎についてさらに多くの知見が集まって、広く知られるとともに診断治療が受けられる耳鼻科クリニックが増えてくれたらうれしいですね。