食事がつくる発達障害③の2 医薬品の乱用

腸内環境悪化の原因 その5 医薬品の乱用

皆さんが比較的よく処方されるお薬に、腸内環境を悪化させるものが結構あります。

腸内細菌叢の乱れは万病の元ですよ~

その代表

①胃酸抑制薬 H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビター(PPI)

胃酸は蛋白質の消化、ミネラルやビタミンB12の吸収に不可欠ですが、食べ物に含まれる有害微生物を強い酸で殺菌する働きも担っています。胃潰瘍や逆流性食道炎に非常によく使用される薬剤ですが、特にPPIは胃酸をほぼ完全に出なくしてしまって、本来の胃酸の機能が行えなくなる弊害の強いお薬です。腸内環境への影響で言えば、胃酸で殺菌し切れなかった細菌は本来侵入すべきでない腸に運ばれ、腸内細菌の陣地を犯します。

逆流性食道炎は食事内容や生活習慣、時にピロリ菌の影響を受ける可能性のある疾患ですが、根本解決されることなく漫然と長期にPPIが投与されていることが多いのが現状です。たかが胃薬と思って患者さんはもちろん残念ながら医師も、気軽に続けていることもよくあります。

②痛み止め

  腰痛や関節痛など、慢性の痛みに対し、長期にわたり投与されると、腸内細菌や腸粘膜の粘液にダメージを与えます。運動不足や姿勢が原因の痛みではないですか?痛みは、身体の悲鳴ですよ。根本解決しないで鎮痛剤に頼っていないでしょうか?

③抗生物質

細菌感染に対し、やむを得ず使用されるものですので、致し方ないのですが、抗生剤の腸内細菌に対するダメージは甚大です。日頃から免疫をあげて感染症に罹らないよう、また、適切な使用を心がけましょう。

その他、腸内環境に影響を与えうる薬剤には、ステロイド、抗うつ薬、糖尿病治療薬、降圧剤、コレステロール降下薬、経口避妊薬、ホルモン補充薬など数多くのものがあります。

すでに病気をお持ちで必要不可欠なものもあると思います。もちろん勝手に中止してはいけませんが、もしも運動や睡眠、食事などの生活習慣の改善によって減量または不要になる可能性のあるお薬があるならば、腸内細菌を乱す原因になり得るお薬を少しでも減らすことが、さらなる病気を引き起こさないために、非常に重要です!!

ご自分が投与されているお薬、目的や作用をご自分で把握しておきましょう!

ポリファーマシー②

ポリファーマシーに対して、患者さんができること、が今回のテーマです。

患者さんご本人ができること、それは・・・

①自分の内服薬を把握すること。

  何のために飲んでる?どんな作用?

主治医に「薬を少なくしたい」という意志を常に伝えること。

  忙しい医師のほとんどは、患者さんの訴えに対し、薬を処方してはくれても、薬を減らしてはくれまん。でも、患者さんが希望すれば考えてくれます。

③解毒を促す栄養を摂ること!

  解毒の回路を回す酵素の主成分タンパク質、ミネラル、ビタミン

  そして回路を回すエネルギーとなる炭水化物、脂質

  つまり、「5大栄養素」が、解毒のために不可欠です。

そして、下記の事を「知る」事です。

④「胃薬」は胃を丈夫にする薬ではない!

  昔の胃薬は胃の消化機能を補うもの、胃の粘膜を保護するもの、でした。

  現在よく使用されている胃薬の中には、胃酸をおさえて消化機能を落とすものが少なからずあります。

⑤医師も知らない思いもよらない副作用が実はある!

  長期使用することによって起こる栄養障害は、ほとんど副作用と認識されないと言っても過言ではありません。

ポリファーマシーは個人の不利益のみならず、不要な薬に大切な医療費(公費)を費やしてしまうことで、決して返すことのできない莫大な借金をして、将来の日本の国に大きな不利益を残しているのです。

ポリファーマシー① 

・ポリファーマシーとは

・ポリファーマシーはなぜ起こる

「ポリファーマシー」は「複数(poly)」と「調剤(pharmacy)」をドッキングした、「のある多剤服用」を意味する言葉です。

 単純に「薬の数が多い」ということではなく、不適切な薬の処方により、有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題に繋がる状態を指します。

日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、薬物有害事象は処方薬の数に比例するとされ、 6種類を超えると発生頻度が大きく増加すると言われています。   ですが、あくまでも重要なのは数ではなく、処方内容が適正かどうかという点です。

では、ポリファーマシーが起こるのはなぜでしょうか?原因を考えてみました。

①高齢社会:有害事象が出やすく、複数の医療機関にかかる人が多い。

 各診療科から複数の薬が処方され、合わせるとすごい数に・・・って珍しくありません。 安く薬が手に入ってしまう国民皆保険制度を基盤とする日本の医療の弊害ともいえます。

おまけに高齢者は胃腸機能が低下していて、タンパク質(アルブミン)が少ないために、様々な副作用が出やすく、肝腎機能が低下していて、薬(毒)を排泄する能力も低下しています。

②新薬の多さと複雑さ、効果の強さ。

 最近の薬は効果が強く、言ってしまえば、根本原因である生活習慣を改善しないでも力技で症状を抑えこむことができるんです。根本原因である生活習慣を変えなければ、当然他の病気も起こりやすくなります。そうすればまた薬が増える・・・

③問診や薬剤歴のチェックには時間がかかり、保険点数がないので見過ごしがち。

 残念ながら、大勢の患者さんを短時間で診察することを求められる忙しい医師は、患者さんの内服中の薬剤すべてを把握することが困難です。自分が処方した薬ですら、いつ何の目的で投与し始めたかいちいち検討していない事もめずらしくありません。ましてや他の医療機関で内服している薬や薬同士の相互作用に気を配っていては経営が成り立ちませんし、待ち時間が長くなった次の患者さんに怒られてしまうことも・・・・。前回の処方をそのまま継続、または新しい訴えに対して薬を追加するのが関の山というのが現状でしょう。

医師が忙しすぎるのも、ちょっとしたことで医療機関に安くかかれる国民皆保険制度の弊害かもしれません。

④気づきにくい有害事象の症状も多い。

 例えば、当たり前のように長期処方されている一部の胃薬やコレステロールの薬には栄養障害の原因になるものがあります。また、多くの薬は、キレーションと言ってミネラルをくっつけて排出させてしまう作用を持っています。さらに、薬剤は最終的に肝臓でげぞくされ、排泄されますが、その「解毒」には多くの栄養素が必要です。つまり、思わぬ薬剤でタンパク質やミネラルの不足を招くのです。しかし、栄養障害による症状はすぐには現れず、年単位の時間で徐々に起こるうえ、あらゆる臓器で起こる症状は多岐にわたり、副作用と認識するにはかなりの栄養学の知識が必要です。そして、栄養学を知っている医師は稀です。

処方カスケード

⑤処方カスケード。

 ③の項で触れたように、医師の習性として、患者さんが何らかの症状を訴えると、その症状に対してまず薬を処方する、という発想になります。例えば、薬の副作用で頭痛が起こっていたとしても、副作用を考え原因薬がないか考える前にまずは鎮痛薬を処方するのが残念ながら一般的です。そしてまた、鎮痛薬で胃が痛くなったら胃薬を処方する、といった具合、これが処方カスケード。カスケードとは「小さな連続する滝」という意味。一つ薬を処方したことがきっかけで流れるようにどんどん薬が増えていくイメージです。

もちろん、医師や薬剤師が薬の適正な使い方をしてくれるべきなんですが、それは、今のシステムの中ではなかなかに困難な事です。

では、患者さんはどうしようもないの?いえいえ、そんなことはありません。患者さんができることがあります。それは次回に・・・

発達障害にクスリを使う前に・・・

上図のように、発達障害は症状によって分類されていますが、発達障害の名称、分類にはあやふやなところがあり、症状が混在することも多いことから、近年では自閉症スペクトラムという呼び方がなされています。「スペクトラム」とは、虹のように境界がくっきりではないものを並べたもの、というような意味です。

一方で、発達障害では、精神症状つまり脳の機能の問題以外の「身体症状」として

•疲れやすい、同じ姿勢を保つことが難しい、ごろごろする •偏食が多い、音に敏感 •おもらし •チック(意志とは無関係に体の一部の動きや発声を繰り返す) •頭痛、筋肉痛、腹痛 •吐き気、便秘、下痢、少食、過食などの消化器症状 •蕁麻疹、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎などアレルギー症状 •中耳炎、扁桃炎などの慢性感染症(免疫力の低下) •筋力不足、体力不足

などの症状がよく見られる事がよく知られています。これは、脳の機能障害だけでは説明のつかない事実です。栄養療法の世界では、発達障害の本質は、代謝障害と考えられています。

「代謝」は「栄養」の影響を大きく受けます。

約2年前、発達障害と言われている当時9歳の女の子の診察をしました。ちょうど私が分子栄養学を学び始めて栄養素のチカラを知って興味を持ち始めたころで、足の爪がもろくて白く濁っているという主訴でした。なんだか元気のない爪。「お肉とお魚が嫌いで、全く食べなかったらしく、たんぱく、ミネラルの不足が推察されました。診察中女の子はずっと下を向いて黙っていましたが、「血液検査」という言葉に敏感に反応して急におびえて泣き出してしまいました。もちろん採血はしませんでしたが、これが女の子との初めての出会いでした。

その後数回私の皮膚科を訪れてくれました。実は女の子はあるショックな出来事があって学校に行けなくなっていたことがわかりました。そんな中、「先生に会うのは楽しみ!!」と言ってきてくれていたようでした。食事の大切さをお話しているうちに少しずつお肉やお魚が食べられるようになり、来るたびごとに少しずつ明るくなって、ニコニコ大きな声で話すようになってくれたのです。「学校に行くのも給食を食べるのも楽しい!!」って言ってくれるようにもなりました。

さらに出来るだけ頑張ってグルテン・カゼイン・シュガー・添加物フリーの食事を心がけて頂くよう指示したところ、便秘が改善して、「体が軽くなった」とのこと。

薬はまったく使用していませんが、こんなに改善することが珍しくはないのです。もちろん、そう一筋縄ではいかず、その後、学校で何かある度に症状が一進一退したことも事実ではありますが・・・

現在の医療では、発達障害は根本的には治らず、有効な治療はないと考えられています。カウンセリングや心理療法などが試みられていますが、治療は難しく改善することは多くはありません。症状が軽ければ「個性」として認めてあげるという方針です。それで、本人が幸せならばそれも良しでしょう。しかし、症状が重ければ、家族は大変、本人もつらく、普通に仕事をして家庭をもつことも、生きて行くことも困難になります。そして周囲の人に迷惑のかかる言動を軽減するため、小さな子供に向精神薬が投与される例も少なくないのです。

一方、発達障害と言われるほぼすべての子供は腸が悪いです。明らかに便秘や下痢の症状のある子も多いですが、自覚症状がなくても腸内環境が悪いのです。腸は、迷走神経という神経で直接脳と繋がっていると考えられていますが、ビタミンの産生、有害物質の吸収、セロトニンなどの幸せホルモンと呼ばれる物質をも産生し、間接的にも脳の機能、エネルギー代謝に大きな影響を与えています。

腸の環境は食事に大きな影響を受けます。私の患者さんの例のように、そう単純な話ではないですが、食事が発達障害の症状に大きな影響を与えるのです。裏を返せば、食事改善に取り組めば、治療が困難とされている発達障害が改善する可能性があるのです。副作用もなく、むしろ他の体の機能もよくする食事で、です。実行しない手はないと思いませんか?

食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲むわ

とは、残念ながら日常診療でよく聞く言葉でした。今はそう思われる患者さんは私の栄養療法外来には来てくれないので、めっきり聞かなくなりましたが、決して世の中の患者さんの考えが大きく変わっているわけではないはずです。

ですが、薬は、その症状が何故おこっているのかとは無関係に、あくまでも困っている症状を消してくれるだけであって、決して根本的に治してくれるだけではないんですよ。それでも薬を選ぶ理由は・・・

①栄養がいかに大切かの知識がない

②薬で「おさえる」のと「根本的に治る」のは違うという事を十分に理解していない

③良い食材を購入するより薬の方が安価である

④料理には手間と時間がかかる

⑤安くて保存のきく加工食品が手に入りやすい

①②は医療の専門家が情報提供して、お導きする必要がありますが、残念ながら医療の世界でも、このような考えは浸透していません。

③は、そう、身体に良い食材は、たいてい通常の商品よりお高いのです。一方、日本は、国民皆保険制度が非常に充実しているため、投薬に対する患者さんのご負担が極端に少ない国です。これは皮肉なことに栄養療法をするにあたってネックになることなんですが、「食べたいものを我慢するくらいなら、薬を飲んだ方がまし」となるんですよね~でも、待ってください。その、よく効くお薬、ずーっと飲んでいて、ホントに害がないですか?それに関してはまた回を改めて詳しく述べたいと思います。

④毎日の食卓をあずかる主婦なら、一度は「人間毎日ご飯を食べなくて済んだらなあ」「料理をしてくれる奥さんが欲しい~」と思ったことがあると思います。(ないかな?私は何回もあります。)そこは栄養の専門家たちが、いかに栄養をバランスよく摂れる簡単な献立をたてるか、工夫を凝らしたレシピを公開していますね。

⑤現在の栄養の問題すなわち「新型栄養失調」を作り出している最大の原因は・・・手に取ったらほぼすぐに、あるいは超簡単な調理で食べることができる加工食品が、どこのスーパーでも所狭しと並んでいくらでも手に入りやすい環境にいることです。

数ある食品関係の大手企業は、いかにたくさん売って利益を上げるか、を最優先にしています(むしろそれしか考えてないと言いたい)し、日本では欧米やアジア各国がすでに規制・禁止している有害物質でも規制がゆるゆるで、国は国民の健康より企業の利益を優先する政策しか作ってくれないとしか思えません。

でも、です!企業は、みんなが買わなければ、作りませんし、みんなが選ぶものなら作ります。もう、これは、各自が自分で自分の身を守るべく知識を得て賢い消費者になるしかないんです。ホントに切実にそう思います。

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感想(28件)
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私はあきらめたくないので、こうして、いったい何人の方が読んでくれるかわからないブログを書き、数名にも満たない参加者でも、何時間もかけてスライドを作成して毎月セミナーを開催しています。

骨粗しょう症の薬に要注意

女性ホルモンのエストロゲンが骨の代謝に深く関わっているため、特に女性は更年期以後急激に骨粗しょう症のリスクが上がります。今回は骨粗しょう症とその治療薬、そして栄養との関係のお話です。

骨組織は硬くて不変なように思われますが、実は一定のサイクルで日々古いものが壊され、新しいものに生まれ変わっています。これを骨代謝(リモデリング)と言います。

骨代謝に関わる細胞には、新しい細胞を作り出す(骨形成)「骨芽細胞」、骨の約9割を占める「骨細胞」と、古い骨を溶かして壊す(骨吸収)「破骨細胞」があります。1年で約30%の骨が新しく生まれ変わるとされています。

骨の強度を考える際に「骨量」「骨密度」「骨質」という言葉があります。「骨量」は骨全体のミネラルの量、「骨密度」は骨量を骨の体積で割ったミネラルの密度。「骨質」は骨のミネラル以外の要素を含めた骨の強度です。

骨粗しょう症の検査に「骨密度」とはよく聞かれますが、実は「骨質」が良くないと骨密度が高くても骨折しやすいという事になりかねません。どういうことでしょうか?

それは、カルシウム以外のミネラルとコラーゲンにヒントがあります。

骨を形作っている主な成分は、カルシウムとコラーゲン。確かにミネラルの中ではカルシウムとリンが最も多いのですが、カルシウムを上手く取り込んで骨にするためにはマグネシウムが不可欠ですし、その反応を助ける酵素は蛋白質でできていて、微量ミネラルの亜鉛やマグネシウムが補因子(酵素の一部)となっています。また、コラーゲンもタンパク質ですから、それらの栄養素が十分摂取され、機能して初めて骨が形成されるのです。ちなみに、リンは皮肉にも食品添加物から結構たくさん取られている方が多いため、現在欠乏することはあまりありません。

また、常時骨に一定の圧がかかることも良好な骨のリモデリングを促進するうえで非常に重要です。若い自転車競技の選手が自転車に乗る練習ばかりしていて足の骨にほとんど荷重がかからない状況が続いたら、毎日運動しているはずなのに骨粗しょう症になって骨折したというエピソードもあります。「地に足を着けて」運動することが重要という興味深いお話です。

つまり、骨量のミネラルが多くてもバランスが悪かったり、たんぱく質が不足したり、適切な運動を怠ると強い骨にはならないのです。

ところで骨量を増やす画期的な薬、ビスホスホネート製剤(BP製剤)を骨粗しょう症の治療の為に内服または注射していらっしゃる方はとても多いのですが、その作用機序は、破骨細胞の働きを抑え骨量を増やすというものです。骨量を増やすという意味では画期的なお薬です。

しかし、前述した本来人体に備わっている骨代謝が抑制され、古い骨が排除されることなく残り、骨質としては悪化してしまう可能性があるという事をご存知でしょうか?いわば、ぼろ屋の廃材を残したまま新しい材料で修繕し、材料がたくさんあるから丈夫と言っているようなものと言えば、叱られるかもしれませんが、私はそう思っています。

現に非常にまれではありますが、BP製剤内服中に抜歯などの処置をして、顎骨壊死という悲惨な副作用が起こる例が報告されているのです。非常にまれだから骨折するよりましと思われるかもしれませんが、ひとたび顎骨壊死になると有効な治療法はなく、内服を中止しても進行する事すらあります。また、長期投与で骨折のリスクが増加するという報告もあるんですよ。

私の経験ですが、永年BP製剤を飲んでいて骨密度が横ばいだった元気な90歳の患者さんの血清亜鉛濃度が非常に低値だったため、タンパク質をしっかり摂る食事指導と共に亜鉛のサプリメントを投与したところ、劇的に骨密度が上昇したという例もあります。

もちろん、BP製剤を使用することが医療界のガイドラインでは推奨されていますから、100%否定するわけにいきませんが、せめて食事、運動で骨を強くする努力をしてから、服薬を検討してはいかがでしょうか?