亜鉛② 金属としての亜鉛の位置

生体に有用な金属はミネラルといい、有害な金属は有害(重)金属といいます。下図は、みなさん化学で習ったことのある金属の周期表です。ここからは、科学が嫌いな方は太字だけ読んでくださいね。亜鉛=Zn(30)、カドミウム=Cd(48)、水銀=Hg(80)、銅=Cu(29)、鉄=Fe(26)はおさえてください。

全ての金属元素は、陽子を中心として周囲に電子が回っているのですが、電子は決まった軌道を回っていて金属ごとに電子の数、軌道の数が決まっています。記号の上の小さな数字が電子の数、最上段の元素は軌道が一つで、下の段に行くほど一つずつ軌道が増えます。化学的には最外殻(一番外側の軌道)の電子の数が他の元素とのくっつきやすさを決めます。

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亜鉛は周期表30番目の金属で、右図のごとく亜鉛の下段にはカドミウム(48)、水銀(80)があります。縦の列は同族元素といって、いちばん外側の軌道の電子の数が同じなので、化学的に同じ元素にくっつきやすい性質があります。つまり、亜鉛が組み込まれるべき酵素などの物質の亜鉛の席にカドミウムや水銀が座りやすいってこと。酵素は身体のすべての反応を決める重要なタンパク質です。カドミウムはイタイイタイ病、水銀は水俣病という有名な公害病の原因ですが、CdやHgが有害なのは、亜鉛が座るべき酵素のあちこちの場所に座って、出来損ないの酵素を作ってしまい、正しい働きができなくなることで、必要な体の機能を動かせなくなるからなんです。

さらに亜鉛は左隣の銅(29)と兄弟元素で、吸収経路を共有しているので、亜鉛欠乏だと銅過剰に、亜鉛過剰だと銅欠乏になりやすいという関係にあります。銅は赤血球を作ったり、脳内ホルモンをつくる際に必要ですが、亜鉛は高容量のサプリでも飲まない限り過剰にはなりにくく、銅はむしろ過剰になりやすい傾向があります。亜鉛欠乏かつ銅過剰になることにより炎症体質になったり興奮系の脳内ホルモンのバランスを崩してうつ病になりやすくなるんです。

そして4個左の鉄(26)とも腸における吸収経路を共有しているため、鉄と亜鉛が腸内で共存するとお互いの吸収を妨げる関係です。

亜鉛が多く必要な時や場所は?

□細胞分裂が盛んな時(成長期、妊娠、授乳)

□細胞分裂が盛んな場所(毛髪、味蕾、皮膚、消化管、

            けがの治療時、病気の回復時)

成長期=身長が伸びる=骨・筋肉が伸びる=細胞分裂が盛ん ➡栄養の要求度が上がる つまり亜鉛が欠乏しやすい

その他、亜鉛欠乏は・・・

不妊、薄毛、味覚障害、攻撃性増加、糖尿病、解毒能低下、認知症、うつ病、アレルギー、皮膚炎、床ずれなどのリスクも高めます。

つまりつまり、亜鉛が多く必要な時期、成長期に反抗的になったり、妊婦さんがうつになったりイライラしやすくなるのは、亜鉛欠乏、ひいては銅亜鉛バランスの影響もあるんですね。

診断は主に血液検査ですが、体内のたった2%が血清に存在する亜鉛。しかも日内変動があり、夕方の血清亜鉛値は朝の約8割。それを知った上で検査データを解釈する必要があります。通常血清亜鉛値が基準範囲内(80~120μg/dl)であっても、組織内亜鉛は欠乏していたり、酸化ストレスにより溶血(赤血球が壊れること)によって血清より亜鉛濃度の濃い赤血球から亜鉛が溶出していたりすることがありますが、組織内亜鉛が多いのに血清亜鉛値が少なく出ることはあまりないと考えられています。

化学の退屈な話で分かりにくかったかと思いますが、こんなに大事な亜鉛がなぜ欠乏しやすいのか、次回からは、そこを掘り起こします。

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